乗れば進化の度合いがわかる“コードネーム972型”「ポルシェ パナメーラ」

「911カレラTが頭をよぎった」高級スポーツサルーンの最右翼! 新型「ポルシェ パナメーラ」に試乗

パナメーラが8年ぶりにフルモデルチェンジ、第3世代に切り替わった。コードネームは972、もしくはG3と呼ばれる。ラインナップはV6、V8、さらにハイブリッドと百花繚乱だが、今回は最もベーシックなモデルを試した。
第3世代に切り替わった新型パナメーラ。
パナメーラが8年ぶりにフルモデルチェンジ、第3世代に切り替わった。コードネームは972、もしくはG3と呼ばれる。ラインナップはV6、V8、さらにハイブリッドと百花繚乱だが、今回は最もベーシックなモデルを試した。(GENROQ 2025年1月号より転載・再構成)

Porsche Panamera

ボディサイズは先代とほぼ同等

試乗車はオプションのスポーツデザインパッケージ(69.5万円)装着車。前後バンパーやサイドスカートのデザインがよりスタイリッシュになる。ホイールもオプションの21インチ「911ターボデザイン(65.3万円)」だった。
試乗車はオプションのスポーツデザインパッケージ(69.5万円)装着車。前後バンパーやサイドスカートのデザインがよりスタイリッシュになる。ホイールもオプションの21インチ「911ターボデザイン(65.3万円)」だった。
パナメーラおよびそのAWD版であるパナメーラ4に搭載される2.9リッターV6ツインターボ。ボア×ストロークは84.5×86.0mmのロングストローク型。レッドゾーンは6800rpmから。
パナメーラおよびそのAWD版であるパナメーラ4に搭載される2.9リッターV6ツインターボ。ボア×ストロークは84.5×86.0mmのロングストローク型。レッドゾーンは6800rpmから。

スタイリングは驚くほどキープコンセプト。一見したところ先代971型にとてもよく似ている。だが、各所のキャラクターラインや前後のコンビネーションランプ、サイドのウインドウグラフィックなど、ところどころのエッジを立たせてよりシャープな印象に仕立てており、見れば見るほどに新しさがこみ上げてくる。誰もが「これぞパナメーラ!」と認識できるとともに、先代オーナーにはちゃんとその違いがわかる。なかなかあざといスタイリングだ。

サイズ感もほぼ変わらないので調べてみたところ、全長がたった3mm延びただけだった。全幅、全高、ホイールベースは先代とまったくの同数値。むやみやたらなボディサイズの拡大にストップがかかったのはいい傾向だが、パナメーラの体躯はすでにフルサイズ級に達している。スポーツサルーンとしてはこのあたりが限度、というポルシェの見識が働いたのかもしれない。なお、プラットフォームは先代「MSB」の改良型となる「MSBw」である。

そんなこともあって運転感覚はあくまで先代の延長線上にある。試乗車はベースモデルのパナメーラで、エンジンは2.9リッターのV6ツインターボ。スペックは最高出力353PS/最大トルク500Nmというもので、これはブースト圧や燃料噴射量、点火時期等の最適化により先代に比べ23‌PS/50‌Nmのアップとなる。

ベースモデルならではの美点

パナメーラが8年ぶりにフルモデルチェンジ、第3世代に切り替わった。コードネームは972、もしくはG3と呼ばれる。ラインナップはV6、V8、さらにハイブリッドと百花繚乱だが、今回は最もベーシックなモデルを試した。
エアサスペンションはメカニズムを刷新。快適方向(柔らかめ)とスポーティ方向(硬め)の振れ幅が格段に大きくなった。

車重1885kgは先代比で25kg増加しているが、それはパワーアップが相殺して余りある。だからベーシックなパナメーラの美点である“シャシーがエンジンに勝る”キャラクターはしっかり受け継がれていて、ワインディングから高速道路まで、どう振り回しても破綻する兆候すら見せない。ブーストがかかるのが2000rpm前後からということもあり、「もう少しパワーがあれば……」と思わせるシーンもあるにはあるが、絶対的に速いクルマであることは間違いない。逆にいうならそんな安心感があるおかけで、このベーシックなパナメーラに最も上質感を覚える方もいらっしゃるだろう。

そしてそれに輪をかけるのが、新型の本領といえる足まわりだ。サスペンションは全車エアサスが標準で、これは先代も同様なのだが、新型はメカニズムを刷新。ダンパーが従来の1バルブ式から2バルブ式になり、伸び側と縮み側を個別に制御することが可能に。これにより快適方向(柔らかめ)とスポーティ方向(硬め)の振れ幅が格段に大きくなっているのだ。なお、これに伴いエアスプリングのチャンバーは3つから2つに変更され、軽量化が図られている。

走行モードはおなじみ「ノーマル」「スポーツ」「スポーツプラス」の3種類で、「ノーマル」で走ればおおよそポルシェのブランドイメージからは程遠い、高級サルーンそのものの乗り味を呈する。路面の荒れや高架道路の繋ぎ目を乗り越える際は「ドッ」と低く小さな音が発せられるだけで、体が感じる突き上げは路面の状態から想像する以上に小さい。

こんなスピードであんなカーブに?

そして面白いのが「スポーツ」や「スポーツプラス」を選択したときだ。スロットルレスポンスがモードに応じて鋭敏になるから、8速DCTを積極的にマニュアル操作して楽しんでいると、今度は新しいエアサスがしっかり車体姿勢を制御、コーナリングでロールを最小限に抑え込んでいることがわかる。「こんなスピードであんなカーブに突っ込んでるのに、それだけ!?」って具合なのだ。だから安心感をもってより高い速度でコーナーへ進入できる。

さらにオプション装着されていた後輪操舵の「リヤアクスルステアリング」が、これがまたいい仕事をする。タイトコーナーではスルリとコンパクトに旋回し、高速コーナーでは抜群の安定感を誇るのだ。だからワインディングを駆け回っているうちに、大きく重い4ドアサルーンを運転していることを忘れてしまう。私の場合、あの911カレラTが頭をよぎったのは本当の話だ。

モード選択とドライバーのマインド次第で、高級サルーンにもスポーツカーにも変貌しうるパナメーラ。新型はそのキャラクターをいっそう強めてきたといえるだろう。

SPECIFICATIONS

ポルシェ・パナメーラ

ボディサイズ:全長5052mm 全幅1937mm 全高1423mm
ホイールベース:2950mm
車両重量:1885kg
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2894cc
最高出力:260kW(353PS)/5400-6700rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1900-4800rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/45ZR19 後295/40ZR19
最高速度:272km/h
0-100km/h加速:5.1秒
車両本体価格:1466万円

REPORT/市原直英(Naohide ICHIHARA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2025年2月号

【問い合わせ】
ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911
https://www.porsche.com/japan/

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新型「ポルシェ パナメーラ4S Eハイブリッド」に試乗「電動化の恩恵はシャシーにも」

昨年11月に登場した3代目パナメーラ。当初プラグインハイブリッド仕様はターボだけだったが、追って「パナメーラ4 Eハイブリッド」「パナメーラ4S Eハイブリッド」が加わった。いずれも電動領域を拡大してさらなる効率化を図ってきたが、その恩恵はシャシーまわりにもあった!(GENROQ 2024年9月号より転載・再構成)

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