ランドローバーのフラッグシップ「レンジローバーSV P615」をMY24とMY23比較

ラグジュアリーSUV「ランドローバー レンジローバーSV P615」に試乗してMY24とMY23(P530)を比較

ランドローバーの誇るラグジュアリーSUV「レンジローバーSV P615」に試乗した。4.4リッターV8ツインターボエンジンにモーターが組み合わされた48Vマイルドハイブリッドシステムとなったが、マイチェン前のP530と比較してその進化はどれほどか確かめた。

RANGE ROVER SV P615

スポーツカーを彷彿させる加速

ランドローバーのフラッグシップモデル「レンジローバーSV P615」に試乗した。MY24から4.4リッターV8ツインターボエンジンにモーターが組み合わされた48Vマイルドハイブリッドシステムとなり、グレード名がMY23の「P530」から最高出力615PSを意味するP615に改められた。今回は年初に試乗したP530との比較を交えてその印象をリポートしたい。

BMW製のV8ツインターボエンジンは最高出力615PS/5855〜7000rpm、最大トルク750Nm/1850〜5400rpmで、P530よりも85PSも向上している。最大トルクはP530と同値だが、発生回転数がやや高めまでカバーしている。そしてマイルドハイブリッドは、変速機内蔵型でいわゆるISGなので、これにモーターの出力14kW(19PS)とトルク200Nmが上乗せされる。単純計算で最大トルクは950Nmになるが、その表記は見当たらなかった。

そのスペックは伊達ではなく、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間から2770kg(車検証)の車重を感じさせないスポーツカーを彷彿させる加速を見せる。ちなみにほぼ同装備のP530のメモを繰ってみると2720kg(車検証)だったのでマイルドハイブリッドによって50kg増と言えるかもしれない。

スムーズで正確な変速でグランドツーリングも快適そのもの

今思うとMY23のP530は豊かなトルクで十分高級な乗り味が楽しめたが、P615に乗ってしまうと相対的に低速域のトルクが薄かったように感じる。直接乗り比べたわけではないので断言はできないが、エンジン回転数の高まりとスピードメーターの上昇は、馬力もさることながらP615の方が大トルクを感じられた。

高速巡航時の静粛性も際立っており、今や着実に減少しつつあるV8エンジンの長所は気の利いた8速ATで存分に生かされている。100km/hで1400rpmという低回転を維持することでエンジン音や風切り音も極めて穏やか。BEVにも通じるこの静けさは、グランドツーリングでも快適そのもの。スムーズで正確な変速で力強さを存分に発揮し、高速道路では大トルクの余裕で加速する。8速ATの変速も見事で、もちろん低速域の市街地でも扱いやすく滑らかに走行できる。あらゆる速度域で快適なドライブが楽しめる。

下り坂では適切にギアを固定し、安定した走行を維持してくれるため安心感がある。またオールシーズンタイヤのピレリ・スコーピオンゼロも、優れたグリップ力を発揮し、悪天候や多様な路面状況でも高い走行性能を提供してくれた。P530では雪道に行くためウインタータイヤが装着されていたが、そちらもあたりの柔らかさが快適だった。

高速道路や渋滞時でもストレスの少ない運転支援システム

乗り心地が極めて優秀なのは、エアサスペンションが路面の凹凸をしっかり吸収し、揺れを最小限に抑えてくれるためだ。目地段差を越える際にも不快感はない。だがダイナミックモードに切り替えると、サスペンションが引き締まり、加速と同じくスポーティな走行を可能としてくれる。路面状況をきめ細かく伝えてくれるステアリングは、路面からの適度な情報が伝わることで、車両と一体感が生まれる。直線での加速だけでなく、コーナリングでも高い安定感を保つその走行性能はレンジローバーの大きな魅力だ。

運転支援システムにも触れないわけにはいかない。ACC(アダプティブクルーズコントロール)は、高速道路や渋滞時においてストレスの少ない運転をサポートしてくれる。ステアリングスイッチで行う設定も簡単で、車速や車間距離の調整が直感的に行える点は、日常使いでの利便性を大いに向上させている。

それと毎回、インテリアで感心するのがマッサージ機能だ。レンジローバーはウェーブ、パルス、コンビネーション、ホットストーンなど5種類のモードを搭載しており、長時間の運転でも身体をリラックスさせられる。特に早朝の移動や長距離ドライブでは、この機能が大きな癒しを提供してくれる。運転することそのものが、まるで特別なリラクゼーション体験のように感じられる。

一方、操作性について改善の余地が感じられる部分もある。MY24のP615では、エアコンの操作やドライビングモード(テレインレスポンス)の切り替えをディスプレイ上で行う。これは直感的ではなく、やや煩雑だ。さらにMY24ではエアコンダイヤルの位置が殺風景なパネルとなっている。何か他の機能を持たせても良いのではないだろうか。優れたデザインと機能のアップデートが実現しやすいので、全てのオペレーションをディスプレイに収めることが最近の傾向だが、フェイルセーフの観点からも、やはり物理スイッチを残してくれた方が使いやすい。

すでにMY25が発表されているものの

ちなみに、すでに4月に2025年モデル(MY25)が発表されているが、MY24からMY25への主な変更点は、ロングホイールベース(LWB)モデルに、出力が50PS向上し350PSとなった3.0リッター直6ディーゼルターボが追加された点で、4.4リッターV8ツインターボを搭載するP615に関しては、大きな変更は見られない。装備面でクリアサイト・インテリアリヤビューミラー(SEグレード以上)や、イルミネーション機能付きトレッドプレート(SEおよびHSEグレード)が標準化されたことと、タイヤリペアキットが追加されたことくらいで、あくまでも小変更と言ったところだ。

もしもディーラーにMY24の在庫があっても、MY25を待つ必要はないかもしれない。とはいえ、こうした細かな装備の充実がレンジローバーの高級感を着実に高めていくのだが。

SPECIFICATIONS

ランドローバー レンジローバー SV P615(MY24)

ボディサイズ:全長5065 全幅2005 全高1870mm
ホイールベース:2995mm
車両重量:2770kg(リアパノラミックルーフ装着車)
エンジン:V型8気筒DOHCターボ
総排気量:4394cc
最高出力:452kW(615PS)/5855-7000rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1850-5400rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後285/40R23
車両本体価格:2944万円

ランドローバー レンジローバー SV P530(MY23)

ボディサイズ:全長5065 全幅2005 全高1870mm
ホイールベース:2995mm
車両重量:2680kg
エンジン:V型8気筒DOHCターボ
総排気量:4394cc
最高出力:390kW(530PS)/5500-6000rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1850-4600rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後285/40R23
車両本体価格:2568万円(2024年2月時点)

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著者プロフィール

吉岡卓朗 近影

吉岡卓朗

大学卒業後、損害保険会社に就職するも学生時代から好きだったクルマのメディアに関わりたいと、1999年に…