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997 Carrera / Carrera S / Carrera GTS / Carrera 4 / Carrera 4S / Turbo / Turbo S / GT2 / GT3 / GT3 RS / Speedster
ルーフを除くボディの80%を刷新
「996型911」は約8年間に17万5262台を製造するという、これまでの911では想像しえなかった大ヒットを記録し、ポルシェの経営状況を一気に好転させた。しかしながら、その一方でボクスターとの共有部分の多さ、911らしくないフロント周りのデザイン処理が、セールスの向かい風になっているという側面も否定できなかった。
2004年に第6世代の911として登場した「997型911」は、996のビッグマイナーチェンジという位置付けではあったものの、ルーフを除くボディの80%を刷新。911らしい丸目に戻ったボディは前後トレッドを広げたうえで、ドア部分を薄くするコークボトル・ラインを採用。またホイールハウス内のスポイラーや、サスペンションアームのリフレクター、アンダーボディ内のスポイラーなどインナーボディの空力を見直した結果、前面投影面積こそ僅かに増加したものの、Cd値は0.30から0,28ヘと低減した。またフロントを中心にボディ構造を大きく見直し、主要部分の亜鉛処理鋼板をスポット溶接と接着剤で組み立てることで、996に比べて捻れ剛性を7%、曲げ剛性を44%アップ。あわせて側面衝突安全性の向上、フットスペースの拡大なども図られている。
電子デバイスをオプションで用意
一方のインテリアも前面刷新され、質感が大きく向上。ステアリングに911史上初めてチルト機構が装備されたほか、ダッシュボード上のストップウォッチに加えて、スロットルやティプトロニックのレスポンスを変更するスポーツモードが備わるスポーツクロノパッケージのほか、PSAM(電子制御式可変ダンパー)、PSM(スタビリティコントロール)といった電子デバイスがオプションで用意されたのも特徴であった。
パワートレインは基本的に996からのキャリーオーバーで、従来の3.6リッターフラット6に加えて新たに設定されたハイパワー版の「カレラS」には、385PSを発生する新設計の3.8リッター・フラット6 M97/01型ユニットを搭載。ボディはクーペ、タルガ、カブリオレの3種類で、2005年にはワイドボディにAWDシステムを搭載した3.6リッターの「カレラ4」、3.8リッターの「カレラ4S」を追加している。
2006年には可変タービン・ジオメトリー機構を備え、低回転域のレスポンスの向上とさらなるパワーアップを果たした480PSの3.6リッターツインターボと新開発の電磁多板クラッチをもつ電子制御アクティブ4WDを搭載した「911ターボ」が登場。また996に続き、GT1クランクケースを持つ3.6リッター自然吸気フラット6を搭載した「GT3」、リヤトレッドを拡大した「GT3 RS」が相次いで発表されたほか、2007年には530PSの3.6リッターツインターボを搭載した「GT2」も発表されている。
2008年のマイナーチェンジDCTを採用
また2008年に行われたマイナーチェンジでは、パワートレインを大幅に刷新。フラット6は全面的に新設計され、部品点数の減少、剛性強化、軽量化、低重心化といった改良が加えられたうえで、ダイレクト・フューエル・インジェクション・システムを採用。排気システムも変更された結果、3.6リッターが345PS、3.8リッターが385PSへと大幅にパワーアップしたほか、燃費性能、CO2排出量も大きく改善されている。
さらにギヤボックスではトルコンATのティプトロニックに代わって、1980年代にグループCの「962C」に搭載されて以来、地道に開発が重ねられてきたデュアルクラッチ2ペダルMTの7速PDKが搭載されたのもトピックとなった。
2009年に後期型へと進化したカレラ4では、4WDのセンターデフをビスカスカップリング式から電磁多板クラッチ式に変更。一方、GT3はGT1ブロックの水冷フラット6はそのままに排気量を3.8リッターへと拡大。最高出力も435PSへとパワーアップした。
続く2010年には最高出力を500PSの大台に載せた3.8リッターフラット6ツインターボを積むターボが登場。そのパワーを受け止めるべく、ポルシェトルクベクタリング(PTV)がオプション設定されたのも話題を呼んだ。
4.0リッターに拡大した「GT3 RS 4.0」
その後も450PSにチューンされた3.8リッター・フラット6、ダイナミックエンジンマウントなどの新機軸を採用したGT3RS、1370kgのボディに620PSを発生する3.6リッターフラット6ツインターボを搭載した500台限定の「GT2 RS」、408PSの3.8リッターフラット6を積むワイドボディをベースに低いウインドスクリーンを備えた「スピードスター」、さらに排気量を4.0リッターにまで拡大し、最高出力を500PSにまで引き上げた600台限定の「GT3 RS 4.0」といったスペシャルモデルを矢継ぎ早に発売。
そして2011年モデルとしてワイドボディに408PSへファイン・チューンした3.8リッターフラット6を搭載し、サスペンションに専用セッティングを施した、カレラシリーズの上位モデルである「GTS」をカレラ、カレラ4に追加したのを最後に、997シリーズとしての生産を終了。各モデル合計で21万3004台が製造されるヒット作となった。