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Renault 5 Turbo 3E
“ミニスーパースポーツ”として開発

「ラリー、ドリフト、サーキット走行のために作られた野獣のようなマシンを公道用にアレンジ」。 この言葉に「ルノー 5 ターボ 3E」の開発とエンジニアリングの概要が集約されている。ルノー史上最もパワフルで最も先進的なロードカーとして開発されたフル電動スポーツは、ルノー・ブランドが持つモータースポーツへの情熱を体現した存在だ。
1980年に世界ラリー選手権(WRC)を戦うため開発された「5 ターボ」と「5 ターボ2」を、5 ターボ 3Eはオマージュ。この2台はFFコンパクトカーベースのミッドシップラリーカー、そしてラリーフィールドにおける強烈なパフォーマンスによって、その名を時代に刻みつけた。5 ターボはルノーがF1に導入した技術をベースに、ターボチャージャー付きガソリンエンジンを搭載したフランス初のモデルでもある。
5 ターボ 3Eは1980年代を象徴するフレンチスポーツを現代に甦らせた単なるレストモッドではない。現代的で革新的、最先端のフル電動パワートレインを搭載し、先代モデルを大きく超えるパフォーマンスを実現した。システム最高出力は547PS、0-100km/h加速3.5秒以下というスペックに加えて、カスタマーのあらゆる要望に応える高度なカスタマイズオプションも用意された。
ヨーロッパ、中東、日本、オーストラリアを含むいくつかの主要市場において、初代5 ターボが発売された年にちなんで1980台を限定販売。それぞれにシリアルナンバーが付き、カスタマーは注文時に番号を選ぶことが可能。予約は数週間以内に開始され、最初のデリバリーは2027年中に行われる予定となっている。ルノー・ブランドのファブリス・カンボリーブCEOは、5 ターボ 3Eの発表を受けてようにコメントした。
「ルノー 5 ターボ 3Eによって“ミニスーパーカー”という新しいカテゴリーを創造することになりました。ルノー・ブランドは、その情熱と、時代を牽引してきた大胆さと革新の精神を再び示したのです」
「この高揚感と興奮に満ちたモデルは、市場でも前例のないわずか4メートルの全長で、最高のパフォーマンスとフィーリングを約束します。このクルマによって、ルノーはEVをより魅力的な存在へと推し上げ、あらゆるニーズと欲求に応えていくことをお約束します」
1980年代のラリーカーを現代的にリブート

5 ターボ 3Eのエクステリアは、スーパースポーツを思わせるデザインが採用された。バンパーやリヤウイングにはエアロダイナミクスを向上させる専用のエクステンションを装着。フル電動モデルでは、スピードやコーナーリング性能に直結するだけでなく、効率性アップをもたらすエアロダイナミクスが、総重量と並んで重視されるファクターとなる。
テールライトやウイングミラーなど、ベースとなった「ルノー 5 E-Tech エレクトリック」からキャリーオーバーされた特徴はいくつかあるものの、インスピレーションのベースとなったのは、オリジナルの 5 ターボと5 ターボ2。1980年代を象徴するラリーカーのエッセンスを現代的に解釈し、5(サンク)や4(キャトル)でも用いられたレトロフューチャーデザインコンセプトが導入された。
ルノー&アンペールのデザイン担当副社長を務めるジル・ヴィダルは、5 ターボ 3Eのデザインについて次のように説明を加えた。
「伝説を残したルノー 5 ターボと5 ターボ2の再解釈は、私たちにとっても大胆な挑戦となりました。当時のラリーカーが持つ高揚感とレーシングスピリットはそのままに、現代的なテクノロジーとEV時代に最適化されたエアロダイナミクスを融合させました。すべてのラインやフォルムが、パフォーマンスと個性のバランスを表現しています。ルノー 5 ターボ 3Eは、単なる過去の名車へのオマージュではなく、誰もが無限にパーソナライズできる感覚と感情を持った“マシン”なのです」
ウインドスクリーンを後退させホイールベースを延長

初代5 ターボの遺伝子を復活させるため、専用開発された後輪駆動フル電動アーキテクチャーを開発。「5 E-Tech エレクトリック(全長3920mm、ホイールベース2540m)」と比較すると、ウインドスクリーンが後退し、ホイールベースは2570mmに延長。全長4080mm、全幅2030mm、全高1380mmという、コンパクトでありながらもワイドで伸びやかなフォルムが完成した。
この絶妙なサイズ感により、5 ターボ 3Eは、スーパーカーと変わらない全幅とシティカーの全長を両立することになった。これこそがルノーが命名した「ミニスーパーカー」というカテゴリーだという。フロントセクションは、先代5 ターボと同じレイアウトを採用。台形LEDヘッドライトは薄型グリルと共にボンネットへと溶け込み、センターには3つのスリムなエアインテークが配置された。
フロントバンパーを囲むように配置されたエアロダイナミクス・スプリッターと、ボンネットに設けられた大型エアアウトレットがダウンフォースレベルを最適化。エアフロー効率を最大化するため、バンパー側面のインテークはホイール前方に空気を流し、リヤフェンダーのアッパーサイドスクープはテールライトの下部へと空気を送り込む。ロワサイドスクープはブレーキ冷却用となる。また、左サイドスクープには充電用のチャージングハッチも隠されている。
左右ホイールに200kWのモーターを搭載

モーターを搭載した20インチリヤホイール間にすべてのパワーエレクトロニクスを配置。重量物のバッテリーがフロア下に収められたことで、重心を低く抑えながら十分な容量のトランクスペースが確保された。さらにボディの上部構造をカーボンファイバーとし、チューニングとサスペンションを担当したアルピーヌのエンジニアが、運動性に関するアイデアをフルに活かすことが可能になった。
5 ターボ 3Eの総重量は70kWhのバッテリーを含めても約1450kg。最高出力547PS(200kWのモーターを左右のリヤホイール内に搭載)のパワートレインを備え、スーパースポーツと変わらない2.7kg/PSというパワーウェイトレシオを実現。0-100km/h加速は3.5秒以下、さらにドリフトパフォーマンス機能(専用の「ドリフトアシスト」とラリースタイルの垂直型ハンドブレーキを装備)も導入された。
航続距離は400km超(WLTP複合、ホモロゲーション申請中)を計画。充電性能はオンボードの11kW充電器で約8時間。最高速度270km/hで数周のホットラップをこなした後、最大350kWのDC急速充電を使うことで、バッテリーを15%から80%までを約15分で充電可能となっている。また、回生ブレーキレベルは、走行環境に合わせて4段階の設定が用意された。
ラリーカーを彷彿させる垂直型ハンドブレーキ

インテリアには、6点式ハーネスを備えた専用バケットシートと軽量化を目的としてカーボンファイバー製コンポーネントが奢られ、シートやダッシュボードにはラグジュアリーなアルカンターラが採用された。垂直型ハンドブレーキが、ラリーカーのコクピットのような趣を演出する。
ドライバーに対面する10.1インチコクピットスクリーンと10.25インチ「OpenR」スクリーンは、初代5 ターボのダッシュボードにインスパイアされたインターフェースを導入。ドライビング、ナビゲーション、マルチメディア情報がインタラクティブに表示される。