連載

GENROQ BMW Mの軌跡

M5(E34)

スタンダードモデルから半年遅れでデビューした2代目

初代M5(E28型)の発表からわずか3年後の1988年1月、BMWはE34型にフルモデルチェンジを遂げた5シリーズを発表する。全長4720mm、全幅1750mm、ホイールベース2760mmとひと回り拡大されたボディは高い居住性とともに、空力特性が見直された結果、0.30と良好なCd値をもたらしたが、一方で車重は100kg以上重くなってしまった。

それを受け、スタンダードモデルから半年遅れた1988年9月に発売された2代目「M5」は、M88/3をベースに排気量を3535ccに拡大し最高出力315PS、最大トルク360Nmを発生する直列6気筒DOHC24バルブのS38B38型ユニットを搭載。最高速度250km/h(メルセデス・ベンツとの紳士協定でリミッターにより制限されていた)、0-100km/h加速6.3秒と先代を上回るパフォーマンスを得た。

ボディはグループAのホモロゲモデルとして生まれた「M3」のような派手さはないが、専用のエアダム、サイドスカート、リヤスポイラーを装備。それによりCd値は0.30から0.32へと増えてしまったものの、5本スポークの鍛造アルミに同心フィン付きカバーを備えたM-Systemホイールを装着。これによりブレーキへのエアの流入が25%増加し、冷却効率がアップしたほか、ブレーキダストが付着しにくいというメリットもあった。

エレクトリックダンパーコントロールを装着

その後、1992年モデルでマイナーチェンジが行われ、S38B38型ユニットの排気量を3795ccへと拡大。最高出力が340PS、最大トルクが400Nmへとアップしたことで、0-100km/h加速は5.9秒へと向上した。

一方でシリンダー毎にコイルを配したディストリビューターレス・システム、デュアルマスフライホイール(スタンダードの「535i」はシングルマス)を採用することで、レスポンスの鋭さよりもスムーズなアイドリングと素直なスロットルコントロールを優先する仕立てに変更されているのも特徴であった。

またサスペンションは前期型からフロントストラット、リヤトレーリングアームとスタンダードと変わらないが、マイナーチェンジでコンフォートとスポーツに切り替え可能なエレクトリックダンパーコントロール(EDCⅢ+)が装着されていた。さらに特徴的だったフィン付きのホイールは、開口部を拡大した星型カバー付きのM-SystemⅡへと変更されている。

1994年にはタイヤ&ホイールの18インチ化とともに、フィンカバーを廃止したMパラレル・ホイールに改められたほか、ギヤボックスがそれまでの5速MTからゲトラク420G 6速MTに変更されるなどの改良が施された。

欧州仕様にはワゴンボディのツーリングも

E34型BMW M5にはサルーンとワゴンボディがラインナップされた。
E34型BMW M5にはサルーンとワゴンボディがラインナップされた。

そんな2代目M5のもうひとつの特徴は、1992年モデルからワゴンのツーリングにもM5が用意されたことだ。これは欧州仕様のみの設定であったが、セダンと同様に340PSの3.8リッターエンジンを搭載し、すべてハンドメイドで生産が行われた。

2代目M5の総生産台数は1万2254台。うち3.5リッターの前期型が8344台、3.8リッターの後期型が3910台(ツーリング891台を含む)となっており、北米市場には前期型のみが、日本市場には前期型の終盤となる1991年から正規輸入が行われている。

ちなみにM3と違い、BMWモータースポーツ社はM5でワークス活動を行うことはなかったが、BMWオーストラリアが1992年のバサースト12時間にレース仕様のM5を製作して参戦。元F1王者のアラン・ジョーンズ、ネヴィル・クライトン、トニー・ロングハーストのドライブにより総合2位、クラスC優勝という快挙を成し遂げている。

モータースポーツ用グループA(右)と市販モデル「BMW M3」。

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