「ブガッティ ボリード」が引き渡し前にシェイクダウンを実施

1600PSのハイパーカー「ブガッティ ボリード」が引き渡し前に行う“最終検証テスト”とは?「厳しい品質テストの様子」

ミレクールサーキットにおいて、シェイクダウン&品質テストを行う「ブガッティ ボリード」。
限定40台のみが製造されるサーキット専用モデル「ブガッティ ボリード」は、顧客引渡しを前に、ミレクールサーキットにおいて厳しい品質テストを実施される。
サーキット専用モデルとして開発された「ブガッティ ボリード」。限定40台はソールドアウトしており、そのデリバリー作業が着々と進められている。カスタマーへと引き渡される前に、ブガッティはフランス北東部のミレクールサーキットにおいて、ボリードの厳格な最終品質検証テストを行っている。

Bugatti Bolide

求められる公道仕様と変わらない品質レベル

ミレクールサーキットにおいて、シェイクダウン&品質テストを行う「ブガッティ ボリード」。
ボリードはサーキット専用モデルではあるものの、公道走行用モデルと変わらない厳しい品質テストをクリアすることが求められている。

ブガッティが積み上げてきたDNAを、極限まで表現したハイパースポーツとして開発された「ボリード」は、ブガッティを象徴する8.0リッターW型16気筒クワッドターボエンジンを搭載。最高出力1600PSを受け止めるシャシーは、軽量高剛性を極めたカーボンファイバー製となり、サーキット専用マシンとしてモータースポーツで実証された高度なテクノロジーが数多く盛り込まれている。

公道走行を行わないトラックカーと言えども、通常モデルと同等の品質を保証するため、ブガッティはラインオフ後に1台1台が入念なシェイクダウンテストを実施している。

ブガッティの品質管理プロセスの中心地となっているのが、フランス北東部のヴォージュ地方に位置する1周3750mのテストトラック「ミレクールサーキット(Circuit de Mirecourt)」。ミレクールサーキットとのパートナーシップにより、ブガッティの本拠地モルスハイムからほど近く、高度な施設が整ったトラックにおいて占有走行が行えるようになった。

ブガッティの品質担当ディレクターを務めるフィリップ・グランは、ミレクールサーキットでの検証作業について次のように説明を加えた。

「ミレクールサーキットは、全てのボリードが我々の厳しい基準を満たすことを保証する上で、非常に貴重な存在です。一貫したサーキットへのアクセスを提供してくれる彼らがいるからこそ、私たちは品質管理に対する厳格なアプローチを導入することができたのです」

品質検証テストを担当する8名のスペシャリスト

ミレクールサーキットにおいて、シェイクダウン&品質テストを行う「ブガッティ ボリード」。
ミレクールサーキットには、8名のスペシャリストによる専門チームが派遣され、1人で2台のマシンのシェイクダウン&品質検証を行う。

シェイクダウンプロセスには、8名のスペシャリストが参加。専門チームは2名のクオリティコントロールドライバー、タイヤマネージャー、クーリングマネージャー、2名のメカニック、そして2人の電気系統専門テクニシャンで構成される。彼らが専門性を発揮しつつ調和を保ちながら作業を進めることで、1日のサーキット走行で2台のマシンを検証。あらゆる動的特性を評価することが可能になった。

サーキット走行に特化したシェイクダウンプロセスは2つのフェーズに分かれており、それぞれがボリードのパフォーマンスに関する、異なる側面を検証するように組み立てられている。

第1段階は、より厳しい負荷に備えられる車両を確保することに重点が置かれ、慎重な慣熟走行と中低速でのステアリング検証からスタート。その後、50km/hから250km/hまで速度を上げ、ブレーキシステムを徐々に慣らしていく。このプロセスには、横方向の操作、ブレーキングにおける異音の検出、専門技術者によるピットでの頻繁な技術検査も含まれており、システムが最適に機能しているかを確認するため、すべてのダッシュボードパラメーターと運転機能もチェックされる。

負荷に対する検証からパフォーマンスチェックへ

ミレクールサーキットにおいて、シェイクダウン&品質テストを行う「ブガッティ ボリード」。
車両の基本機能のチェックが終了すると、スピード域を上げ、高負荷のサーキットにおいてパフォーマンスを発揮できるかチェックが実施される。

マシンの準備が整ったと判断されると、第2段階へと進む。厳格な安全規程を守りながら、そのパフォーマンスレベルを限界域へと近づけていく。チームはタイヤ、ブレーキ、ギヤボックスの温度を徐々に上昇させながら集中的に周回。クオリティコントロールドライバーは、ABSやトラクションコントロールの機能など、安定性と安全性のシステムを徹底的に評価する。

このプロセスには、極端なスタート条件におけるローンチコントロールの作動や、300km/hを超える速度で何周もラップを重ねるレーシングシナリオシミュレーションも組み込まれている。ブレーキ温度が1000℃に達するなど、極限状態に近い条件下でもパフォーマンスを検証し、厳しいテストをクリアすることで、各車両がオーナーの手に渡った時、その優れた性能を安全に一貫して発揮できることが保証されるという訳だ。

サーキットで得たデータは、リアルタイムでモルスハイムへと送られ、専用ソフトウェアを介してデータを分析し、わずかな異常も検出。また、専用トレーニングを受けたクオリティコントロールドライバーからの意見も欠かせないフィードバックとなる。ボリードの検証テストはコストを度外視しているが、「ブガッティに求められている性能を保証するためには欠かせない」と、グランは説明する。

「ブガッティの品質管理チームは、ボリードのエアロダイナミクス担当者がダウンフォースに磨きをかけるのに費やしたのと同じように、細心の注意を払ってこの検証プロセスを作り上げました。彼らの献身的な作業により、ボリードはW16エンジンによる並外れたパフォーマンスだけでなく、ブガッティに求められる信頼性と品質を提供することが可能になったのです」と、グランは付け加えた。

2025年2月にポール・リカール・サーキットにおいて行われたブガッティ主催のサーキットイベント「フィーリング・ザ・トラック」においても、カスタマーにボリードがデリバリーされた。今後も納車に向けた厳格な品質テストプロセスが継続され、5月にはサーキット・オブ・ジ・アメリカズで2回目の「フィーリング・ザ・トラック」が開催される予定となっている。

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ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…