マセラティ ギブリの最強バージョン「トロフェオ」を公道インプレッション

最後のフェラーリ製ユニット搭載モデルとなるか? マセラティ ギブリ トロフェオの「過激な保守性」を味わう

マセラティ ギブリ トロフェオの走行シーン
マセラティ ギブリのラインナップに加わった最強仕様「トロフェオ」をワインディングでテスト試乗。
マセラティの主力モデルとなるスポーツサルーン、ギブリ。遂に最強グレードとなるトロフェオが追加された。フェラーリ由来の3.8リッターV8ツインターボを積む、トライデントの実力をワインディングで確かめた。

Maserati Ghibli Trofeo

フェラーリ製3.8リッターV8ツインターボを搭載

マセラティ ギブリ トロフェオのエンジン
最高出力580ps、最大トルク730Nmを発揮する3.8リッターV8ツインターボエンジンはマラネッロ製。エンジンカバーがないので見て楽しめる。

最高出力580ps、最大トルク730Nmを発揮するフェラーリ製3.8リッターV8ツインターボを戴く最後のマセラティ、それがギブリ トロフェオである。

フェラーリはすでに2016年に、フィアットグループを離脱しており、ステランティス・マセラティに、よもやこの珠玉のエンジンが供給されるとは思っていなかった。だが、その供給は22年までと謳われているので、これがおそらく最後のフェラーリエンジン搭載マセラティとなるだろう。

マセラティのエントリーモデルとはいえ、ギブリは全長5mに届かんとするEセグメント・ラグジュアリーサルーンである。それを最高速度326km/h、0-100km/h加速4.3秒で走らせるのだからたまらない。スペックから0-100km/h加速に不満を持った貴方は鋭い。今やAMGもMもAWDを選択する中、このスポーツサルーンは超高出力エンジンに後輪駆動という過激な成り立ちなのである。ある意味では保守的ともいえるが・・・。

“トロフェオ”を車名に戴くギブリシリーズのトップモデル

マセラティ ギブリ トロフェオのフロントスタイル
マセラティ ギブリシリーズのハイパフォーマンス仕様、トロフェオ。最高速度326km/h、0-100km/h加速4.3秒のパフォーマンスをFRレイアウトで実現する、古典的かつ保守的なスポーツモデルだ。

しかし外観にその過激さをにじませる要素は少ない。他グレードとの識別点はボンネットフードに2つのエアスクープがあいている他、マセラティのデザインアイコンであるフロントフェンダー左右の3連サイドエアベントが赤になる程度である。

デビューは2013年だから随所に時代を感じさせる瞬間はあるが、むしろ未来に向けた試行錯誤を一巡して、それも心地よく思えるようになってきた。メーターはアナログだが視認性は良好だ。中央に10.1インチディスプレイは備わるが、エアコン操作などに物理スイッチが残っている点も今や好ましい。さらにトランクの床下をあらためるとスペアタイヤがあるではないか。最近は燃費向上のための軽量化で、パンク修理キットでお茶を濁すことが多い。筆者は先日出先でパンクし、装着可能タイヤが入手できず往生した経験があるので、こういった良心的な作りは非常に好感が持てる。

優美かつラグジュアリーな姿態に秘めた獰猛な本性

マセラティ ギブリ トロフェオのインテリア
新デザインで上質さに磨きをかけた室内。大柄だがスポーティな形状を持つシートのヘッドレストには、トロフェオエンブレムがデボス加工されている。

エンジン、排気音、シフトなどの制御が変更されるドライビングモードはノーマル、スポーツ、コルサ、ICEの4種類となる。コルサはサーキット向け、ICEは氷雪路向けだ。スポーツではエンジン制御と排気音がスポーティになるが、コーナーを楽しむならコルサで可変ダンパーをハードにした方が良い。

身構えてエンジンを始動するも、そのサウンドは想像よりも控えめ。ノーマルモードを選択する限り、アイドリングは穏やかで、まさにラグジュアリーサルーンに期待される優美さを備えている。だがスポーツモードやコルサモードを選択し、アクセルを踏み込めば、たちまち獰猛な野獣へと豹変する。

日常と非日常を行き来する二面性が魅力の1台

マセラティ ギブリ トロフェオのリヤスタイル
試乗車はピレリPゼロの専用タイヤに20インチテゼーオ・ホイールを組み合わせて装着していた。3連エアベントの赤がトロフェオの証だ。

低速域からダイレクト感を感じるほどの8速ATは、スポーツやコルサモードを選べばコラム固定式パドルでさらに素早い変速を愉しめる。クリック感がやや乏しいのが惜しい。ブレーキキャリパーは見るからに巨大で、車検証に記載される2080kgの車重をしっかり止めてくれる。

意外にADASが充実しており、ACCもレーンキープも備わっている。ナビゲーションシステムも備わるが、カープレイもあり心強い。市街地を流す時はラグジュアリーサルーンとして機能し、ひとたびワインディングに分け入ればスポーツサルーンに豹変する。車高がやや高く見えるのが気になったが、これも良心の一端かもしれない。名車の誉れ高いランチア テーマ8.32を思い出す。ギブリ・トロフェオもまた殿堂入りではなかろうか。

REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)
MAGAZINE/GENROQ 2022年 1月号

【SPECIFICATIONS】
マセラティ ギブリ トロフェオ
ボディサイズ:全長4971 全幅1945 全高1461mm
ホイールベース:2998mm
車両重量(Kerb):1969kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
ボア×ストローク:86.5×80.8mm
総排気量:3799cc
最高出力:427kW(580ps)/6750rpm
最大トルク:730Nm(74.4kgm)/2250-5250rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
最高速度:326km/h
0-100km/h加速:4.3秒
燃料消費率:12.3-12.6L/100km(WLTC)
車両本体価格(税込):1840万円

【問い合わせ】
マセラティコールセンター
TEL 0120-965-120

【関連リンク】
・マセラティ 公式サイト
http://www.maserati.co.jp/

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著者プロフィール

吉岡卓朗 近影

吉岡卓朗

Takuro Yoshioka。大学卒業後、損害保険会社に就職するも学生時代から好きだったクルマのメディアに関わり…