ハイレゾ音楽配信サービスにフィットするウォークマン

ハイレゾ音楽配信サービスを堪能する「SONY WALKMAN NW-ZX500シリーズ(NW-ZX507)」【COOL GADGETS Vol.4】

スマホ全盛の現在、あえて音楽を聴くためだけにプレーヤーを持つ必要があるのか? 現代の電子機器には多数の機能が盛り込まれているが、音楽プレーヤーの本質は不変だ。魂を込めた演奏、あるいはスタジオで作り込んだ楽曲。アーティストたちがこだわって作り上げた作品を、可能な限り高い音質で楽しみたい。(GENROQ 2020年1月号より転載)

高音質とは何か?

基本操作(再生/停止、曲送り/曲戻し、音量調整など)が可能なスイッチを本体側面に配置する。押しやすさを重視した大きいサイズなのでバックの中でも操作しやすい。
基本操作(再生/停止、曲送り/曲戻し、音量調整など)が可能なスイッチを本体側面に配置する。押しやすさを重視した大きいサイズなのでバックの中でも操作しやすい。

高音質とは“感情に訴えかける表現をつぶさに伝える能力”と置き換えるとわかりやすい。単にノイズが少ない、周波数特性が整っているといった性能ではなく、まさに心を揺さぶる音楽をいかにダイレクトにリスナーに届けるか?という、感性におもねる性能こそがあえてスマホにプラスして持ち歩く音楽プレーヤーに求められる。

iPodに覇権を奪われていたウォークマンが復活したのは「高音質とは何か」というテーマに正面から向き合ったからに他ならない。その完成度が極まったと感じたのは、今回紹介するZX500の先代にあたるZX300だ。

ソニーは発売当時で約30万円という超高額ポータブルプレーヤーのNW-WM1Zで本物の高音質をウォークマンブランドにもたらしたが、“物量での圧倒”に頼る面が否めなかった。ところが、ZX300は匠の技とノウハウで、手の届く価格帯と使いやすいサイズ・重量ながらも、WM1Zのもつ柔らかな空気感を引き出した。

音を出すのはOSの仕事

接続安定性の高いΦ4.4mmバランス接続に対応したヘッドホンジャック(右)を採用。左はΦ3.5mmのイヤホンジャック。
接続安定性の高いΦ4.4mmバランス接続に対応したヘッドホンジャック(右)を採用。左はΦ3.5mmのイヤホンジャック。

“空気感”とは音が広がる空間に漂う気配のようなものだ。例えばギターを鳴らしたとき、胴鳴りがさらに空間を広がっていく様子。ピアノからはじき出されるように飛び出たいくつもの音がホールの中で響き合う雰囲気。音場に漂う気配こそが、音楽に魂を与えている。

音質について一晩かけて語り明かしたいほど、ZX300は価格(発売時6万5000円前後)を超えた素晴らしさに満ちていた。音楽をかっこよく聴かせるテクニックはあえて使わず、ひたすらアーティストの意図をストレートに伝える音。それを手の届く価格で実現したのだから。

いつまでたってもZX500の話にならないって? 実はZX500を勧めるのは、この製品が「Androidの上に再構築したZX300」だからだ。なぁ〜んだ。そんなことかと思うなかれ。実はこれがものすごく難しい。

高音質と再生ソフトの関係は深く、音楽を清く正しくアナログ信号に変換して耳に届けるには専用ソフトで製品を作るのが手っ取り早い。というのも、音を最終的にミキシングして出すのはOSの仕事だからだ。

ハイレゾ音楽配信サービスに対応

しかし、音楽業界は今や音楽配信サービスなしでは語れない。音楽は「購入する」ものから「サービスに加入して楽しむ」ものだ。海外ではハイレゾ音楽の配信サービスも増えていたが、日本でもとうとうAmazonがハイレゾ対応の音楽配信を始めた。音質に拘るエンスージアストも含め、音楽配信はもはや無視できないのが現状だ。

ZX500はそんな移ろいやすい音楽業界事業にも対応できるZX300だ。Androidならば、どんな音楽配信サービスも真っ先に対応アプリを提供する。すなわち、ZX300がもたらした手の届くハイエンド音質と、あらゆる音楽配信サービスを楽しみたいという願望の両方を満たす存在、それがZX500なのである。

REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2020年 1月号

評価

コストパフォーマンス:5
革新性:3
使い勝手:3
デザイン:4
音質:4

PRICE

オープン価格

【問い合わせ】
ソニー買い物相談窓口
TEL 0120-777-886

【関連ウェブサイト】
https://www.sony.jp/

外形寸法は109.4(幅)×61.9(高)×33.2(厚)mmと手のひらにすっぽり収まるほどのコンパクトなサイズ。この絶妙なサイズ感がGR IIIの白眉だ。

その時に感じた空気を気軽に切り取る「RICOH GR III」【COOL GADGETS Vol.3】

ひたすらに“基本”を磨き込んだ速写性が極めて高いコンパクトカメラ。スマホ+1台ならこれ以外にない。絶対的な価格は高いと感じるだろうが、オンリーワンの魅力は価格を超えている。(GENROQ 2019年12月号より転載)

キーワードで検索する

著者プロフィール

本田 雅一 近影

本田 雅一

テクノロジージャーナリスト、オーディオ&ビジュアル評論家。ガジェットはもちろん、ITやクルマにも精通…