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TWS選びのポイントとは?
左右独立したワイヤレスイヤホンのことをTrue Wireless Stereo(TWS)という。世界で一番売れているのはAppleのAirPodsシリーズだが、音質で選ぶとなると実は決定版という製品は数少ない。小さな空間に無線レシーバ、プレーヤ、アンプ、ドライバー(スピーカー)を詰め込むため、ノイズからの影響を受けやすいためだ。それでもノーブルオーディオ「Falcon Pro」のようにグッとくる音質の製品もあったが、ノイズキャンセリング機能まで内包するとなると思い付かない。
そんな中、登場したソニー「WF-1000XM4」は、最高峰クラスのノイズキャンセリング機能を搭載しつつも音の品位を大きく向上させていた。ハイレゾ対応やAI技術で圧縮音源を復元する「DSEE Extreme」の搭載、大幅な小型化などの機能面も魅力だが、音楽を聴くための道具として一番大切なのは音質とその品位だ。次に大切なのはバッテリーの寿命。この2つに満足できるかどうかが、TWS選びのポイントだ。
最高音質とノイキャンを両立
その点でコイツは長足の進歩を遂げた。まずはノイズキャンセリング能力。出先で音楽を楽しむことが多いTWSの場合、騒がしい場所で音楽を聴く機会が多くなる。その意味でもノイズキャンセリング性能はとても重要だ。この点でオーバーイヤー型最高峰のWH-1000XM4と同等レベルを実現している。
気になる音質は、従来モデルが中低域から中域にかけてを演出的にエネルギッシュさを描くタイプだったのに対し、本機は素直に低域から高域までをサラリと聴かせる。“質感を整えてTWSでもいい感じで聴ける”のが従来モデルなら、新モデルは“品位を全体に引き上げて素材そのものの良さを引き出す”方向性だ。中低域の量感を演出しないため低域が伸びやか。音の立ち上がりのスピードも速い。
近年のポピュラー楽曲には、シンセベースの質感に拘った作品が多い。ビリー・アイリッシュの「bury a friend」の硬質ゴムのような、あるいはザ・ウィークエンドの「Blinding Light」の深みあるベースなど、ベースの質感を描き分ける実力がある。ジェニファー・ウォーンズの「Way Down Deep」冒頭の打楽器のようにアコースティックな低音のニュアンスも見事。システム全体のノイズ処理が優秀なため、音源本来がもつ情報量を素直に出してくれる。明るく抜けのいい音で、ボーカルの細かなニュアンスがストレートに出るのも好感だ。
ワイヤレスイヤホンの定番に
お化粧して良い音を演出しようと工夫を凝らさなくとも、素肌を健康にして薄化粧で整える。そんなイメージで音の品位を底上げしたことが、最終的な音の質を高めた。その上でハイレゾ楽曲を聴いてみると、音場に漂う細かな情報が見えてくる。テイラー・スウィフトの「willow」ではアコースティックな楽器が表情豊かに折り重なる深みある演出が表現され、大自然の中で心地よい音を浴びているかのようだ。
本格的な音を聴かせるノイズキャンセリング機能付きTWSを望んでいるなら、まずは試聴すべき。ケースでの再充電なしで8時間再生できるなど弱点も見当たらない。このジャンル定番アイテムになることは必至だろう。
REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2021年 9月号
PRICE
オープン価格
評価
2年間ベストセラーであり続けた先代モデルをあらゆる点で凌駕。携帯性も高くバッテリーの持ちも良い。本格的な音作りなど弱点の見当たらない完璧主義者だ。
コストパフォーマンス:4
音質:4.5
ノイズキャンセリング:5
機能・使いやすさ:4
装着感:4
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