最後のW16を搭載するブガッティ W16 ミストラルは限定99台

ブガッティ最後の8.0リッターW型16気筒クワッドターボを搭載するロードスター「W16 ミストラル」の最高出力は1600ps

ブガッティ最後のW16気筒モデル「ブガッティ W16 ミストラル」の走行シーン。
ブガッティ最後のW16気筒モデルとして99台が製造される、ブガッティ W16 ミストラル。
ブガッティ・オートモビルは、8.0リッターW型16気筒クワッドターボエンジンを搭載する最新ロードスター「W16 ミストラル」を公開した。W16 ミストラルは、ヴェイロン以来ブガッティの代名詞となってきたW16エンジンのフィナーレを飾るモデルとなる。

Bugatti W16 Mistral

地中海に吹き付ける風からネーミング

ブガッティ最後のW16気筒モデル「ブガッティ W16 ミストラル」のエクステリア。
W16エンジンを搭載する最後のロードスターに、ブガッティは「ミストラル」という地中海に吹き付ける北風にちなんだ車名を与えた。

最後のW16気筒モデルという、ブガッティのマイルストーンとなる重要な車種に、どのような車名を与えるべきか・・・。単なるシロンの派生モデルではなく、この美しいロードスターには、自由、エレガンス、スピードを連想させる名称が必要だと、ブガッティは考えたという。

様々な検討の末、ローヌ川流域から南仏のコート・ダジュールの街々を通り、地中海へと吹きつける力強い風から「W16 ミストラル」と名付けられることになった。

W16 ミストラルは、シロン スーパースポーツ 300+で初めて採用された最高出力1600psを発揮する8.0リッターW16クワッドターボエンジンを搭載。これまでのオープントップモデルとは一線を画す、最高のパフォーマンスが提供される。

W16 ミストラルは99台のみが製造され、価格は500万ユーロ。全生産台数は発表時点ですでに完売しており、2024年からデリバリーが開始される予定となっている。ブガッティ・リマックを率いる、マテ・リマックCEOは、この美しいロードスターについて、次のようにコメントした。

「ブガッティの伝説的なW16エンジンを搭載する最後のロードゴーイングモデルとして、私たちはロードスターを開発する必要があると考えました。ブガッティは、これまで生産された車両の40%以上がオープントップです」

「しかし、シロンにはロードスターが存在していませんでした。W16 ミストラルの導入はこの遺産を継承し、ブガッティを象徴するエンジンの力強い性能を求めるお客様からの強い要望に応えたものです。W16 ミストラルは、1世紀以上にわたるブガッティ製ロードスターの歴史において、次章を開く存在となります」

タイプ57 グランドレイドをオマージュ

ブガッティ最後のW16気筒モデル「ブガッティ W16 ミストラル」のエクステリア。
W16 ミストラルは、エレガントなロードスター1934年式「ブガッティ タイプ57 ロードスター グランドレイド」からインスピレーションを得たデザインが採用されている。

デザインに関するインスピレーションの源となったのが、エレガントなデザインを持つスポーツロードスター、1934年製「ブガッティ タイプ57 ロードスター グランドレイド(Bugatti Type 57 Roadster Grand Raid)」だった。

オランダ・ハーグにあるルーマン博物館に展示されるグランドレイドは、後方に流れるように配置されたふたつのエアロダイナミクス・ヘッドレストと、V字型にカットされたフロントガラスという特徴的なデザインを持つ。ブラックとイエローのバイカラーで仕上げられたエレガントなロードスターは、最新のW16搭載ロードスターに強い影響を得えることになった。

ブガッティのデザインディレクターのアキム・アンシャイトは、W16 ミストラルのエクスクルーシブなデザインについて次のように説明を加えた。

「W16 ミストラルは、史上最高のパワートレインが搭載された最後のロードゴーイングモデルとして、重要な意味を持つことになります。デザインチームとしては、ブガッティ史上最も美しいロードスターからインスピレーションを得ながら、この歴史的な瞬間を直感的に伝えるスタイリングの実現に、大きなプレッシャーを感じることになりました」

ルーフ後方に分割式エアインテークを導入

ブガッティ最後のW16気筒モデル「ブガッティ W16 ミストラル」のコクピット。
W16エンジンに最適なエアフローを供給すべく、グランドレイドや、ヴェイロン 16.4 グランスポーツを思わせる、分割式エアインテークが導入された。

グランドレイドのV字型ウインドスクリーンをイメージしたデザインを採用。Aピラーを包み込むように湾曲したウインドスクリーンは、サイドウインドウへとシームレスに溶け込み、プロトタイプレーシングカーを思わせるバイザー効果が与えられた。このウインドスクリーンは、ドライバーの視界を妨げることなく、丸みを帯びたバイザーデザインを実現するため、まるで戦闘機のキャノピーのような強いカーブを描いている。

フロントウインドウとサイドウインドウの上端は、サイドエアインテーク周辺のエアフローを最適化。このキャラクターラインはドアの中央を流れ、フロントのホースシューグリルまで貫通。シロンから導入されたブガッティの特徴である「Cライン」を形作っている。

ボディサイドをスリムに保ちつつ、W16エンジンへの効率的なエアフローを確保するため、オイルクーラーインテークとエンジンエアインテークを意図的に分割。分割エアインテークはルーフ後方に設置された。この2基のエンジン用エアーインテークは、前述のグランドレイドやヴェイロン 16.4 グランスポーツに由来するものだ。

それぞれのコンポーネントに与えられた機能

ブガッティ最後のW16気筒モデル「ブガッティ W16 ミストラル」のエクステリア。
エクステリアの形状は、単なるデザイン要素ではなく、それぞれのコンポーネントに空力やクーリングなどのパフォーマンス向上のための機能が与えられている。

W16 ミストラルは、ブガッティが掲げるデザイン哲学「Form Follows Performance」に則り、各コンポーネンツは、単に美しさだけでなく、まったく新しいレベルのパフォーマンスを達成するために設計されている。ブガッティのデザインディレクター代理、フランク・ヘイルは次のように説明を加えた。

「たとえば、4輪駆動と4基のターボチャージャー搭載をさりげなく連想させるべく、複雑な形状の4灯式ヘッドライトを採用しました。ただ、その立体的な形状は、空気抵抗を改善するために、ライトからホイールアーチを通してフレッシュエアを送り出す、空力的な役割も持たせてあります」

「よりワイドな形状となったホースシューグリルは、ラジエーターにフレッシュエアを供給。ルーフ後方に配置した分割式エアインテークは、インタークーラー専用となっています。また、テールライトはX形状を採用しました。X型テールの間にある三角形のネガティブスペースは、サイドラジエーターをつなぐダクトを通じて、オイルクーラーからの熱を排出する機能を持たせてあります」

ヘッドレスト後方のエアインテークは、厳しい横転安全試験を想定して開発されたため、特注のカーボンファイバー構造を採用。万一の横転時にも車両の全重量を支えることができるように設計された。これらの新たな吸気レイアウトは、スロットルを踏み込んだ時に8.0リッターW16クワッドターボエンジンの吸気音が強く鳴り響き、ここにスロットルオフ時は4基のターボチャージャーからブローオフバルブが重なるという、他の車種では味わえないオーケストラ体験も実現している。

使用素材に拘った贅沢なコクピット

ブガッティ最後のW16気筒モデル「ブガッティ W16 ミストラル」のコクピット。
囲まれ感のあるレーシーな雰囲気のコクピットには、チタン、アルミ、カーボンファイバー、そしてソフトレザーなど、使用素材への徹底的なこだわりが込められている。

コクピットは、シロンをベースにエレガントさとラグジュアリーさを追求。最高速420km/h走行時でも、すべてのインフォメーションを簡単に確認できるような機能性も確保されている。

極めて軽量なチタニウム、ブロックから削り出されたアルミニウム、一切傷のないソフトレザーなど、ブガッティが誇る素材へのこだわりが、インテリアの隅々にまで追求された。

新デザインのドアパネルに導入された複雑なウーブンレザーは、100年以上の使用を想定。ブガッティの厳しい品質基準で入念にテストされ、製造されている。アルミニウム製ギアシフターにはウッドタッチが施され、レンブラント・ブガッティが手がけた有名な「ダンシング・エレファント」の彫刻を入れた琥珀色のインサートがはめ込まれた。

1600psまで進化した8.0リッターW16クワッドターボ

ブガッティ最後のW16気筒モデル「ブガッティ W16 ミストラル」のエクステリア。
W16最後のモデルとして登場したW16 ミストラルには、シロン スーパースポーツ 300+と同じ、最高出力1600psを発揮する8.0リッターW型16気筒クワッドターボエンジンが搭載される。

搭載される8.0リッターW型16気筒クワッドターボエンジンは、先進的な複合素材に、3Dプリンタで成形されたチタニウムやアルミニウム製パーツを組み合わせることで、究極のパフォーマンスと信頼性を確保。また、過酷な条件下でも最適なハンドリングとパフォーマンスを確保するため、徹底的な軽量化も追求されている。

ヴェイロン 16.4 グランドスポーツ ヴィテッセが2013年に、254.04 mph(408.84km/h)の世界速度記録(当時)を達成したとき、搭載されていた8.0リッターW型16気筒クワッドターボの最高出力は1200psを発揮していた。W16 ミストラルは、2019年に304.773mph(490.484km/h)の世界速度記録を刻んだシロン スーパースポーツ 300+と同じ、最高出力1600psにまで進化を遂げたW16エンジンを搭載する。

「ロードスターというボディ形状とW16パワートレインの融合は、まさに完璧と呼ぶに相応しいものです。ルーフが取り外され、頭上の真後ろに配置された2基の大型エアインテークからは、毎分約7万リットルものフレッシュエアがエンジンへと送り込まれます」と、マテ・リマックは付け加えた。

「W16 ミストラルをドライブすれば、これまでのブガッティとは異なり、この革命的なパワートレインの複雑な動きをダイレクトに感じることができるでしょう」

オーナーが所有するブガッティ EB110と並べられ、デリバリーが行われたブガッティ チェントディエチ1号車。

非公開: 一度見たら忘れないインパクト強めの「ブガッティ チェントディエチ」生産1号車、EB110を所有するオーナーの元へデリバリー 【動画】

ブガッティは、5万kmに及ぶ徹底的な走行テスト、風洞実験によるエアロダイナミクスの微調整、マイナス20度の極寒地から45度に達する灼熱のアリゾナテストなどを経て、スペシャルモデル「チェントディエチ」を完成させた。このたび限定10台のうち、最初の1台をデリバリーした。

キーワードで検索する

著者プロフィール

ゲンロクWeb編集部 近影

ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…