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Chrysler 300C
約70年前に生まれた伝説のレターシリーズ
1955年、クライスラーはレターシリーズ「300」を発表した。300馬力のV8 HEMIエンジンを搭載したハードトップは、“世界で最もパワフルなフルサイズカー”として喧伝された。300はそもそもNASCARレースのホモロゲーションモデルとして販売されたわけで、その謳い文句もむべなるかな。期待通り、300はNASCARの舞台を席巻した。
1957年には375馬力の6.4リッターV8 HEMIエンジンを搭載した300Cが誕生。翌年登場した300Dは、ボンネビルで156.387mph(251.68km/h)の速度記録を樹立している。以降、300E、300F、300G、300H、300J、300Kと進化を続けてきたレターシリーズは、1965年の300Lをもって終了した。
21世紀に帰ってきた300C
300の名前が再び帰ってきたのは1999年のこと。しかし、300Mと呼ばれたフルサイズセダンは、V6エンジン搭載の前輪駆動モデルであり、最高出力も250馬力ちょっとと、かつてのレターシリーズとは程遠い1台だった(とはいえ、同年の『Motor Trend』誌カーオブザイヤーを獲得している)。
その意味で、HEMIエンジン+後輪駆動を採用して2005年に登場した300Cこそがレターシリーズの正統な後継車といえる。5.7リッターのHEMIエンジンが放つパワーは345馬力に達し、その数値も排気量を増すにつれて425馬力、470馬力とどんどん向上していった。
そして、レターシリーズは再び終焉を迎える。最終型となる2023年モデルの300Cは、485馬力の6.4リッター V8 HEMIエンジンを全車に搭載。0-60mph(約97km/h)加速4.3秒、0-400m12.4秒を謳った。ブレンボ製ブレーキには象徴的なレッド塗装のキャリパーを装備。LSDやアクティブダンパー、アクティブエキゾーストシステムなどを盛り込み、持てるポテンシャルを最大限に引き上げている。
ハマー、シルバラード、F-150もEV化
最後の2023年モデル300Cの車両価格は5万5000ドル(約790万円)。アメリカ2000台、カナダ200台の限定生産であることが明言されており、日本上陸は望めそうにないのが残念である。
GMCハマー、シボレー シルバラード、フォード F-150といったアメリカ車の代表格がことごとくBEV化するこのご時世。大排気量V8を積んだマッスルカーも新たな活きる道を模索せざるを得なくなった。一抹の寂しさを感じるものの、パワフルな走りがアメリカ車にとって大きな魅力のひとつと考えれば、電気のチカラは大きなアドバンテージになるはずだ。