歴史から紐解くブランドの本質【メルセデス・ベンツ編】

メルセデス・ベンツはなぜ高級なのか?【歴史に見るブランドの本質 Vol.1】

1886年製の「ベンツ・パテント・モーターワーゲン」。世界初の3輪ガソリン自動車と言われる。
1886年製の「ベンツ・パテント・モーターワーゲン」。世界初の3輪ガソリン自動車と言われる。
自動車メーカーは単に商品を売るだけではなく、その歴史やブランドを売ることでビジネスが成立する。しかし、イメージを確固たるものにする道のりは決して容易ではない。本連載では各メーカー歴史から、そのブランドの背景を考察する。

Mercedes-Benz

自動車を発明した会社

ドイツ・バート カンシュタットにあるゴットリープ・ダイムラー記念館。その前に置かれたのは世界初のモーターサイクル「ライディング・カー」。

1926年、カール・ベンツが作ったベンツ社と、世界初のモーターサイクルを発明したゴットリープ・ダイムラーとヴィルヘルム・マイバッハが作ったダイムラー社が合併し、ダイムラー・ベンツ社となった。ダイムラーは市販車に「メルセデス」という名を使っていたため、合併後の製品には「メルセデス・ベンツ」という名を使うこととなった。その後一貫してメルセデス・ベンツというブランド名を使い続けている。2021年には社名もダイムラーからメルセデス・ベンツ・グループとなった。

世界初の自動車に関しては諸説あるが、メルセデス・ベンツは1886年にカール・ベンツが作成した3輪の自動車が世界初としており、「自動車を発明した会社」であると一貫して主張している。

商用車を作りつつも成立する高級ブランド

ダイムラー・ベンツは設立当初からありとあらゆる自動車を作る大企業であり、乗用車に限らずトラック、バスも同じメルセデス・ベンツの名を使用している。安価な小型バンもあり、ドイツでは乗用車も昔からタクシーとして使われている。それは今でもまったく変わらないにもかかわらず世界を代表する高級車としてのブランドイメージはどこの国でも盤石である。

商用車も作っていながらステータス性のある高級ブランドとして成立している例は他に存在しない(ボルボは別会社でトラックも製造しているが、ステータス性の高い高級ブランドとは言えないだろう)。メルセデス・ベンツはどのようにして、このブランドイメージを獲得できたのだろうか。

歴史的な要因としてまず上げられるのがモータースポーツでの圧倒的な強さと、それを支える高性能技術である。ポルシェ博士が開発したSSKにはじまり、戦前のグランプリや戦後のF1黎明期やル・マン24時間レースなど、メルセデス・ベンツはモータースポーツの世界で圧倒的な強さを見せ続けてきた。現在参戦中のF1でも2014年から2021年まで8年連続コンストラクターズチャンピオンを獲得している。ロードカーでも戦前の540Kや戦後の300SLなど、時代を象徴するような高性能車を数多く送り出した。

安全性と堅牢性のイメージ作りに成功

一方、メルセデス・ベンツは1950年代から安全性の向上に取り組み、衝突実験の実施や事故調査などでその安全性を高めていった。1960~70年代にかけてメルセデス・ベンツ車は、その見た目からも堅牢で安全性が高いことが感じられるようになった。

運転感覚も安定感・安心感を重視するもので、そのイメージをサポートした。さらにはエアバッグやABS、ESPといった先進安全装備でも大きく先行し、その安全性、堅牢性のイメージは他社を圧倒するようになったのである。

半面、表面的豪華さはほとんど追求していなかったが、真に価値のある高級品として不動の位置を得ることになる。世界中の富豪や要人も愛用するようになったことから、その高級イメージとステータス性はさらに盤石なものとなった。このあたりのブランド成立プロセスは時計のロレックスとも非常に近い成り立ちであると言えるだろう。

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著者プロフィール

山崎 明 近影

山崎 明

1960年、東京・新橋生まれ。1984年慶應義塾大学経済学部卒業、同年電通入社。1989年スイスIMD MBA修了。…