2500万円超えの最新「レンジローバーSVセレニティP530」はSWBでも超のつく高級車

ボディはスタンダードホイールベース(SWB)、ロングホイールベース(LWB)の2種類。パワートレインは4.4リッターV8ガソリンターボのP530と3.0リッター直6ガソリン+モーターのPHVであるP510e。後者はSWBのみとなる。
ボディはスタンダードホイールベース(SWB)、ロングホイールベース(LWB)の2種類。パワートレインは4.4リッターV8ガソリンターボのP530と3.0リッター直6ガソリン+モーターのPHVであるP510e。後者はSWBのみとなる。
今年上陸した新型レンジローバーに最高級グレード「SV」が追加された。SVOが手掛けた優美な内外装が魅力のラグジュアリーSUVに仕上がった、英国が誇る最上級SUVをじっくりと堪能してきた。

Land Rover Range Rover SV P530

現代における高級車の定義とは

驚くほど静かで滑らかに走るレンジローバー。極上の乗り心地は電子制御エアサスや電動式ロール制御システムによってもたらされる。

分厚いクッションのシート、丁寧になめされたレザー、磨き込まれたウッドパネル、煌びやかなクロームメッキが施されたドアノブや、スイッチで満たされた大きく重い車体を、大排気量エンジンで走らせるという時代は、もはや過去のものだ。環境性能や、SDGsが叫ばれる昨今、かつての“高級車の定義”は大きな転換点に立たされている。

昨年発表され5代目へと進化を遂げた新型レンジローバーもその例には漏れない。むしろ、ウルトラファブリック、プレミアムウールブレンドテキスタイルといったサステナブルなノンレザー・トリム、13個のスピーカーから個別にノイズを打ち消す第3世代のアクティブノイズキャンセレーション、PM2.5フィルターとナノイーXを用いた空気清浄システムなど、様々な新規軸を搭載してきたのは、高級SUVというマーケットを創出したパイオニアとしての矜持といえるだろう。そんな新型レンジローバーの頂点に立つモデルが“SV”である。

SVとは、ジャガー・ランドローバーの特装部門であるSVO(スペシャル・ヴィークル・オペレーションズ)が設計、開発を手掛けるスペシャルモデルの総称で、ジャガーXE SVプロジェクト8のような少数限定の“コレクターズ・エディション”、世界に1台だけのカスタマイズを施した“ビスポーク”、そしてレンジローバーSVに代表されるカタログモデルの“トップグレード”の3つにカテゴライズされる。

さらに高い次元へと

ただでさえ、モデルバリエーションが多いレンジローバーだが、SVに関してはアトラスメッキシルバーが印象的なSVセレニティと、ダーククロームフィニッシュのSVイントレピッドという、デザインテーマの違う2モデルをラインナップ。ボディはスタンダードホイールベース(SWB)、ロングホイールベース(LWB)の2種類で、パワートレインには4.4リッターV8ガソリンターボのP530と、SWBにのみ3.0リッター直6ガソリン+モーターのPHVであるP510eを用意。さらにLWBにのみ、ビジネスクラスのような快適性が味わえる4シートSVシグネチャースイートも設定されている。

今回試乗したのは、レンジローバーSVセレニティP530のSWBモデルだ。新型に関しては、この夏に軽井沢でD300MHEVに散々試乗して、変わらぬ……いや、より高い次元へと進化を遂げた内容に大きな感動を覚えたばかりだったのだが、SVによってその印象は上書きされることになった。

まず驚いたのが、その乗り味だ。山坂道では5リンク・リヤアクスルやオールホイールステアリングを活かした切れ味の良いハンドリングに舌を巻いたものだが、都心で走るレンジローバーは、驚くほど静かで滑らか。40扁平の23インチタイヤを履いているにも関わらず、ツインバブルチューブダンパーを備えた電子制御エアサスペンション、ダイナミックレスポンスプロという名の電動式ロール制御システムによるしなやかな足捌きは絶品で、まさに“マジック・カーペット・ライド”と呼ぶに相応しい極上の乗り心地だった。

さらに5代目から導入されることになった530PSの4.4リッターV型8気筒ツインスクロールターボユニットも、流している限りには黒子に徹し実にジェントル。しかしながらひとたびアクセルペダルに力を込めると、重力を置き去りにしたかのようなロケットダッシュをみせる、縁の下の力持ち的な逞しさがある。

SVOの手になる素晴らしい仕事

しかしながらそれ以上にSVが素晴らしいのは、その手触りだ。SVの売りのひとつである、フロント・キャラウェイ・ニアアニリン レザー、リヤ・ペルリーノ セミアニリンレザーと前後で仕立ての違うシートはもちろんのこと、ステアリング、インパネなど各部にふんだんに配されたレザーは、なめしも裁縫もフィッティングも見事の一言。

一方で、寄木細工としたことでナチュラルな素材感と手触りを両立したウッドパネル、しっとりと手に馴染みながらその硬質感が嬉しいホワイトセラミック加工のシフトレバーなど、新しい試みが分厚いニス塗りのウォルナットや、クロームメッキのメタルパーツにも劣らない、確かな質感と触感をもたらしてくれる。

そういう視点でみると、ハンドリングだけでなく、その摺動マナーも素晴らしいステアリングから、コクピットの中でも触れる頻度が非常に多いウインカーレバーの程よく重くカチッとした作動感にいたるまで、人の心に“良いもの”だと響く“手触り”が徹底されていることに気づいたとき、レンジローバーがひと足早く、高級車の新たなフェーズに足を踏み入れているのを確信した。さすがは英国王室御用達(ロイヤルワラント)である。参りました。

REPORT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
PHOTO/田村 翔(Sho TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2023年2月号

SPECIFICATIONS

ランドローバー・レンジローバーSV P530

ボディサイズ:全長5065 全幅2005 全高1870mm
ホイールベース:2995mm
車両重量:2680kg
エンジン:V型8気筒DOHCターボ
総排気量:4394cc
最高出力:390kW(530PS)/5500-6000rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1850-4600rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後285/40R23
車両本体価格:2568万円

【問い合わせ】
ランドローバーコール
TEL 0120-18-5568
https://www.landrover.co.jp/

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著者プロフィール

藤原よしお 近影

藤原よしお

クルマに関しては、ヒストリックカー、海外プレミアム・ブランド、そしてモータースポーツ(特に戦後から1…