2022年に注目したガジェットと2023年のトレンド予想

2022年注目のガジェット3選とそこから読み取れる2023年のトレンド【COOL GADGETS 番外編】

Oladanceウェアラブルステレオ。最大16時間の再生時間が魅力だ。
Oladanceウェアラブルステレオ。最大16時間の再生時間が魅力だ。
GENROQ本誌にて『COOL GADGETS 』を連載する本田雅一氏。クルマ以外を専門とするだけあって「2022年を振り返ってのコラム」は、クルマとは無縁の、しかしいずれはクルマ体験も変えていくだろうオーディオ領域の話だ。

基準を大きく引き上げて“しまった”アップル

アップルの第2世代AirPods Pro。

どんな時代、どんな領域でも、過去をふりかえって「あの頃に時代は変化した」と思うタイミングがある。2022年も、いくつもイノベーションの種を発見したが、今回はオーディオコンテンツとそれらを楽しむオーディオ系デジタルガジェット領域のお話をしよう。

ひとつはワイヤレスオーディオ。業界的にはCDと音楽ダウンロードの売り上げが壊滅的になるのと入れ替わる形で音楽ストリーミングが伸び、今や音楽の大多数はサブスクで楽しまれている。さらにアップルがiPhone 7以降でアナログイヤホン端子を廃止し、他メーカーも次々に追従した(本体を薄くするためもはやアナログ端子を備えられなくなった)という別の流れ、そしてAirPods以降にこちらも爆発的に増えた完全ワイヤレスステレオ(TWS)の普及というトレンドもある。

そしてコロナ禍以降の2020年世代で、それらはトレンドではなく日常として定着してしまった。爆発的に可能性が広がると、投資もたくさん集まって製品ジャンルも細かく細分化して評価軸も増えていく。アップルの第2世代AirPods Proは、実に僕らにとって困った製品だ。ノイズキャンセリング能力は業界随一の実力で、内蔵マイクは周囲の雑音を見事なまでに除去してくれるのでクリアな会話が可能。周囲の状況を適切に取り入れる透過モードの仕上がりも自然な上、健康を害するような騒音に突然であっても自動的に騒音を適切なレベルまで抑えてくれる。

その上、アップルはApple Musicで立体音響アレンジの空間オーディオを追加料金なしで配信し始め、過去の名曲を含め多数の立体アレンジ音楽を手軽に楽しめるようにした。そしてAirPods Proの第2世代は空間オーディオを最高の質感で楽しめるよう、立体音響を豊かに楽しむために大切な位相特性に配慮し、誰もが驚く効果を得られるようにしている。ちなみに音質もトップのオーディオ専業メーカーに負けないほどになったので、iPhoneユーザーならよほどのことがない限り他の製品を選ぶ理由がなくなった(Android端末とは繋がるが実力を引き出せないのでお勧めしない)。

ここまでAirPods Proが進化した背景には、独自に設計した半導体技術なども背景としてはある。そこにオーディオメーカーとしての経験値の積み重ねなどが結果としての進化を生み出したのだが、ライバルは大変だ。特に空間オーディオは対応するコンテンツ配信サービスとの融合も鍵となる。流れは変わった。しかしライバルと言えるような製品はでてくるだろうか?カウンターを合わせられる実力を持つメーカーはいくつかあるだけに、2023年に期待したい。

快適リスニングTWS、フルオープン型が大きく進化

一方で高音質、高機能とは無縁の、評価軸が全く異なる製品も登場し始めている。特に大きく認識を変えられたのがOladanceというブランドのイヤホンだ。耳穴をふさがないフルオープンのイヤホンは、これまでも骨伝導を用いたShokz、リング型ドライバのソニーなどがあった。

特にShokzは地道に骨伝導という技術を突き詰め、音質を高めていた。2022年の製品ではないが、最新のOpenRunは同種の製品の中では圧倒的な実力だ。しかしOladanceは特殊な信号処理を加えることで周囲への音漏れを抑えることで、強い指向性のある音を出すスピーカーを耳元で鳴らすという新しいアプローチで驚かせてくれた。誤解を恐れずにすごくシンプルに表現すると、超小型スピーカーを耳からぶら下げ、耳道に向けて音を出しているということ。すごく簡単な仕組みのように思えるが、これが驚くほど音漏れが少ない。

仕組みだけを聞けば、ほとんどの人が大昔のオープン型イヤホンにあった”シャカシャカ音”が気になると思うだろう。ところが、よほど静かな環境で爆音で聴かない限り、シャカシャカ音を気にする必要はない。その上、音質も低域こそ強くはないものの、かなり自然でフラットで聞きやすいのだ。何より耳を塞ぐことによる閉塞感がないのがいい。これなら長時間使い続けていても疲れることはない。

実はコロナ禍以降、ヘッドフォンやイヤフォンを使って音楽を聴きながら仕事をする、あるいは一日中、ずっとオンライン会議をしている人が増加し、中耳炎や外耳炎にかかる人が急増したというニュースを見たが、実際に病気になってしまうリスクだけではなく、耳を長時間塞いだままで過ごすことに抵抗感を持つほとは少なからずいるはず。フルオープン型では今のところ音質や機能、バッテリ性能(無充電で最大16時間!)などOladanceはベストの選択だが、新しいジャンルだけに今後も新しい提案が出てくるに違いない。2023年も引き続き注目のトレンドと言えるだろう。

日本でも(やっと)Wi-FIスピーカー流行の兆し

JBLのWi-FIスピーカー「JBL 4305P」。

最後のテーマはWi-Fiスピーカー。この後の連載ネタなので、インプレッションに関しては軽く触れるだけにしておきたいが、JBLのWi-FIスピーカー「JBL 4305P」は名作と言える出来だ。Wi-Fiと表現しているが、無線LANだけではなく有線LANでもUSBでも、なんならアナログ入力でも利用できるアンプ内蔵スピーカーだ。

Bluetoothで接続することもできるし、Wi-Fiを繋いでAirPlayやGoogle Castで再生してもいい。主要な音楽配信サービスには対応しているから、リモコンソフトで音楽ストリーミングを鳴らすのっもいいだろう。

この種の製品はグローバルではSONOSという米国メーカーがリードしており、多くの人にとってSONOSのWi-Fiスピーカーはリファレンスと言える存在だが、オーディオ機器は嗜好品だ。世の中には音質で勝負するメーカーが多数ある。

そして日本ではあまり目立ってないものの、海外、とりわけ欧州ではWi-Fiや有線LANにつながるアンプ内蔵の高音質スピーカーが過去数年で激増している。

なにしろポンと置くだけで、本格的なオーディオメーカーの音が楽しめるのだ。こうした高級オーディオメーカーのWi-Fiスピーカーが日本で普及しなかった理由は、輸入代理店があまり積極的ではなかったからだが、着々と製品は成熟して完成度を高めていた。

例えば英国ブランドのKEFはWi-Fiスピーカーに積極的に投資をしてきたメーカーだが、一番小型システムのLSXシリーズ(現在は第2世代のLSX2)を日本で販売してきた。東京・大手町にはショールームもあるから、近くに行く機会があるなら試してみるといいだろう。

話をJBL 4305Pに戻そう。この製品の素晴らしさは、なんといっても置く場所に寛容ということ。高音質スピーカーは少なからず、背後のスペースを必要とするが、本機はかなり近づけても音質低下が少ない(ないわけじゃないが)。さらに今ではJBLしか作っていないコンプレッションドライバという、ちょっと特殊な構造のドライバユニットをツイーターとして用い、さらにホーン型デザインでその音に広がりを与えている。

このドライバとホーンの構造が、極めて明瞭で歪感の少ない音像と広がりある大きな音場表現をもたらしている。ヴォーカルの気持ち良さ、トランペットの突き抜けるような破裂音が歪なく感じられ、映像作品を観る時に使えばセリフがキレ良く耳元に届く。

22万円と高価だが、スピーカー、アンプ、プレーヤーのセットに30万円を投じても、これほどのサウンドを得ることはできないだろう。超がつくお勧め。日本ではあまり顧みられることがなかったWi-Fiスピーカーだが、こうした製品がもっと陽の目を見るようになれば、日本市場での選択肢が増えるだろう。

担当の仕事机には常にMagEZ Sliderが鎮座しております。もはやなくてはならない相棒なのです。

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著者プロフィール

本田 雅一 近影

本田 雅一

テクノロジージャーナリスト、オーディオ&ビジュアル評論家。ガジェットはもちろん、ITやクルマにも精通…