目次
Renault Clio Rally3
クリオで4WDまでステップアップが可能に
2019年、FIA(国際自動車連盟)は、ラリー用マシン規定を変更。それまでのR規程から、ラリー1を頂点とする新レギュレーションを導入した。ルノーはエントリーラリーカーとして2輪駆動の「クリオ ラリー5」を2020 年に投入。2021年には、従来のR3規程に準じたよりハイレベルな2輪駆動ラリーカー「クリオ ラリー4」を開発している。
どちらのモデルも、ヨーロッパを中心に多くのプライベーターに販売され、WRC(世界ラリー選手権)やERC(ヨーロッパ・ラリー選手権)だけでなく、世界中の国内選手権でも使用されている。今回、WRC2などで使用されている高度なラリー2と、2輪駆動のラリー4の間を埋めるべく、2021年から導入された「ラリー3」規程に向けて、ルノーはクリオとしては初となる4輪駆動ラリーカー「クリオ ラリー3」を開発した。
開発を担当したアルピーヌ・レーシングの技術陣は実績のあるクリオ ラリー4をベースに、4輪駆動化。これにより、エントリーレベルのラリー5で競技を始めたクルーが、同じメーカーの車両を使ってステップアップできるようになった。
F1やWECでの知見を活かした空力パーツ
パワーユニットは実績のある1.3リッター直列4気筒TCe16バルブ直噴ターボを搭載。エンジンマッピングの最適化により、最高出力263PS、最大トルク415Nmにまでチューンされた。ギヤボックスはサデフ製5速シーケンシャルが組み合わせられ、リミテッド・スリップ・ディファレンシャル(LSD)、調整式BOS製ダンパーも標準装備される。
プライベーター向けラリーカーとなるため、パフォーマンスだけでなく、各コンポーネントの信頼性にも特別な注意が払われた。特にエンジンと駆動系に関してはオイルパートナーのカストロールと協力したことでライフサイクルを大幅に延長、これによりランニングコストの低減が可能になったという。
エアロダイナミクスに関してはアルピーヌF1チームの専門知識と施設を活用。ルーフに装着されるリヤウイングのデザインは、あらゆる路面やコンディションに対応できるよう、F1やWECにおけるノウハウが活かされている。
4500kmを超えるテストプログラムを敢行
クリオ ラリー3の開発プログラムは2022年5月24日にスタート。半年後の11月にはマシンが完成し、スペインにおいて幅広い経験を持つ8名のドライバーと11名のコ・ドライバーによる、22日間におよぶ長期テストが行われた。このテストではターマックとグラベル合わせて、4500kmを超えるマイレージを稼いでいる。
このテストでは異なるクルーからの様々なフィードバックを得つつ、当初からのターゲットをすべてクリア。続いて11月下旬に行われたテストでは、WRCで活躍するドライバーもステアリングを握り、クリオ ラリー3のパフォーマンス、汎用性、信頼性に太鼓判を押している。
今回の発表は、フランスとスペインの国境にあるアルプスの小国アンドラで実施。価格は12万2000ユーロからで、すでにオーダー受付もスタートしている。同時にFIAのホモロゲーション取得に向けた作業も進められており、スケジュールどおりに進めば、2023年4月1日から実戦デビューが可能になる。直後のフランス国内選手権、ERCなどでデビューする可能性が高く、WRCには早ければ第4戦クロアチアから登場することになりそうだ。