「911と718」2台のMTポルシェを比較試乗

「718ボクスターT」「911カレラGTS」絶滅危惧種のMTポルシェ2台に乗ってMTのありがたみを堪能

日本では718ボクスター&ケイマンでは「718ケイマンGT4 RS」を除いて、6速MTが設定されているが、911は「カレラT」、「カレラGTS」、「GT3」と同「ツーリングパッケージ」のみ7速MTの選択が可能だ。
日本では718ボクスター&ケイマンでは「718ケイマンGT4 RS」を除いて、6速MTが設定されているが、911は「カレラT」、「カレラGTS」、「GT3」と同「ツーリングパッケージ」のみ7速MTの選択が可能だ。
スーパースポーツカーでも2ペダルの自動変速システムがほとんどである今、なおMTの楽しさを残してくれているのがポルシェだ。911と718のMT仕様を
連れ出し、スポーツカーを操るというピュアな楽しさを改めて実感してみよう。

718Boxster T
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911GTS

ポルシェですら少数派のMT

自分自身も久々にドライブしたMTモデル。その走りはワインディングではもちろんのこと、一般道や高速道路でも確かに楽しかった。
久々にドライブしたMTモデル。その走りはワインディングではもちろんのこと、一般道や高速道路でも確かに楽しかった。

ポルシェのスポーツモデル。その基本的なスタイルともいえる後輪駆動のMT車に試乗してみることにした。ちなみに改めてポルシェ ジャパンのラインナップを確認すると、ミッドシップの718ボクスター&ケイマンには、「718ケイマンGT4 RS」を除いては、6速MTと7速PDKの両方が設定されているものの、ポルシェ伝統の作でもある911はどうかといえば、「カレラT」、「カレラGTS」、そして「GT3」と同「ツーリングパッケージ」で7速MTの選択が可能で、あとは8速PDKのみの設定となる。

実際にポルシェ ジャパンのデータでも、例えば911カレラGTSでは7速MTの選択率は20%。718ボクスター&ケイマン全体でもその数字は30%だというから、それは時代の変化と同時に最新のPDKが持つメカニズムの優秀さを物語っていると評してもよいだろう。

まずは911カレラGTSから試乗を始める。リヤに搭載されるエンジンはカレラSからさらに30‌PSのエクストラを得た、480PSの最高出力と570Nmの最大トルクを発揮する、3.0リッター水平対向6気筒ターボ。注目の7速MTのシフトストロークは短く、左上のRポジションを除いても1速から7速まで4列にも及ぶゲートで狙ったギヤが間違いなく選択できるのかどうかを不安にも感じたが、実際には100km/h時には1600rpmと燃費重視の7速ギヤには5速と6速のゲートを使用してからでないとシフトできない仕組みだし、節度良く決まるシフトフィール、しかもスポーツやスポーツ+といった走行モードを選択すれば、ブリッピング機能さえ介入するだけに(その制御を解除することも可能だ)コーナーへの侵入時には十分な余裕を持ってクラッチとステアリングの操作に専念できる。

MTに拘る理由は何か

エンジンのスムーズさも、この7速MTの魅力をより強調している。エンジンスピードが2000rpmを超えたあたりからのトルク感は、まったくストレスを感じさせるものではなく、実際にこの911カレラGTSの311km/hという最高速も6速で達成することになる。PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネジメント)を装備するサスペンションの動きも、実に軽快なものだった。乗り心地はストリートレベルではやや硬めに感じるが、7速MTをシフトし車速が高まるにつれ、落ち着きを見せてくる。

一方の718ボクスターTの6速MT仕様はどうか。このモデルをドライブすると、それまで乗っていた911カレラGTSでさえGTカーのような雰囲気を感じてしまう。モデル名に添えられる「T」の文字は、ツーリングを意味するものであり、それは走りを楽しむために走ることだとポルシェは説明する。たしかに718ボクスターTの走りはミッドシップスポーツとして刺激的なことこの上ない。搭載される300PS&380Nm仕様の2.0リッター水平対向4気筒ターボエンジンのパフォーマンスは1380kgというウエイトには必要にして十分なもので、当然のことながらこのパワーに対してのしっかりとした節度を感じさせる6速MTにも特別な不満は感じさせない。

ただし911カレラGTSの3.0リッターユニットのように、アイドリングレベルでのトルクはさほど大きなものではないのか、アクセルペダルをある程度踏み込まないとエンジンがストールしてしまう場面にも何回か遭遇した。もちろんこれは6速MTの問題というわけではないのだが。

性能面では当然PDKが上

コーナリングでの718ボクスターTの動きは、確かに素晴らしい。スポーツモード以上を選択すればブリッピング機能がオートで介入するのは911カレラGTSと同様。エンジンの搭載位置は重心よりさらに低く、車高を標準の718ボクスターより20mm低く設定するスポーツシャシーとの相乗効果で、ワインディングでの動きはまさにレーシングカートを操っているかのようにさえ感じる。911カレラGTSと同様に右/左の両ハンドルが選べる718ボクスターTだが、今回の試乗はいずれも右ハンドル仕様。それでもペダル配置などに不自然な印象を抱かなかったことを付け加えておく。

自動車の世界は、もはやHVからPHVを経て、トランスミッションさえ必要としない、よりクリーンなBEVへと移り変わりつつある。高性能なガソリンエンジンを搭載したMT車、すなわち自動車の原型であり、また長らくカーマニアの憧れでもあった存在のモデルには、はたしてこの先どれだけの進化を果たす可能性が残されているのだろうか。自分自身も久々にドライブしたMTモデル。その走りはワインディングではもちろんのこと、一般道や高速道路でも確かに楽しかった。

性能面ではポルシェのPDKはすでにMTのそれを超えて久しい。例えば今回の911カレラGTSならば、0-100km/h加速は7速MT仕様が4.1秒であるのに対して8速PDK仕様は3.4秒。それでもなおMTに拘る理由はどこにあるのか。それはクルマを意のままに操れた時の達成感の強さにほかならないと思う。その達成感は何物にも代えがたい大きな魅力なのだ。

REPORT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
MAGAZINE/GENROQ 2023年4月号

SPECIFICATIONS

ポルシェ718ボクスターT

ボディサイズ:全長4379 全幅1801 全高1264mm
ホイールベース:2475mm
乾燥重量:1350kg
エンジンタイプ:水平対向4気筒DOHCツインターボ
排気量:1988cc
最高出力:220kW(300PS)/6500rpm
最大トルク:380Nm(38.7kgm)/2150-4500rpm
トランスミッション:6速MT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後マクファーソンストラット
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前235/35ZR20 後265/35ZR20
0-100km/h加速:5.1秒
最高速度:275km/h
車両本体価格:921万円

ポルシェ911GT3

ボディサイズ:全長4573 全幅1852 全高1279mm
ホイールベース:2450mm
乾燥重量:1530kg
エンジンタイプ:水平対向6気筒DOHCツインターボ
排気量:2981cc
最高出力:353kW(480PS)/6500rpm
最大トルク:570Nm(58.1kgm)/2300-5000rpm
トランスミッション:7速MT
駆動方式:RWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35ZR20 後305/30ZR21
0-100km/h加速:3.4秒
最高速度:311km/h
車両本体価格:1942万円

【問い合わせ】
ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911
https://www.porsche.com/japan/

多くのカスタマーからの要望を受けて、911 Fシリーズ/911 Gシリーズに対応したマグネシウム製クランクケースがリリースされた。

非公開: 「911 Fシリーズ/911 Gシリーズ用クランクケースが新品で手に入る!」ポルシェ・クラシックが新たにリリース

ポルシェ・クラシックは、1968年から1976年にかけて製造された「911 Fシリーズ/911 Gシリーズ」用のマグネシウム製クランクケースを新たに発売する。

ポルシェ 718 ケイマン GT4 RSを徹底解剖【ウナ丼×GENROQコラボ動画:Vol.8】

YouTuberウナ丼&GENROQコラボ第8弾! 911 GT3と同じエンジンを積んだ「ポルシェ 718 ケイマン GT4 RS」に迫る【動画】

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…