アウディが進めるリサイクルプロジェクト「マテリアルループ」

「廃車素材を新車に再利用する」アウディが欧州で進めるリサイクル実験「マテリアルループ」とは?【動画】

マテリアルループでは、100台のアウディを解体し、様々な素材がどのように活用できるか、徹底的に検討されている。
アウディは、廃棄される自動車から取られる素材を、質を落とす事なく自動車生産に再利用しようと、研究・検討を進めている。
アウディは、スチール、アルミニウム、プラスチック、ガラスなど、自動車を構成する素材の再利用を積極的に進めている。アウディを含めた15社が共同で進める試験プロジェクト「マテリアルループ(MaterialLoop)」では、再生スチールを利用し、1万5000個以上のアウディ A4用インナードアパーツを生産するという。

15の関連企業・団体との共同プロジェクト

アウディと様々な企業や団体と共同で進めるパイロットプロジェクト「マテリアルループ」を通して、ポスト・コンシューマー素材を、自動車生産に再利用しようとしている。
アウディと様々な企業や団体と共同で進めるパイロットプロジェクト「マテリアルループ」を通して、ポスト・コンシューマー素材を、自動車生産に再利用しようとしている。

アウディは、共同実験プロジェクト「マテリアルループ(MaterialLoop)」を進めており、自動車産業における、より多くの素材再利用に向けて大きな一歩を踏み出した。このプロジェクトは、アウディが目指す循環型経済の実践に向けて、貴重な知見をもたらしているという。

アウディは、研究/リサイクル/サプライヤー分野における15のパートナー企業、関連研究団体とともに、ライフサイクルの終えた車両から引き取られる、いわゆる「ポスト・コンシューマー素材(消費者使用済み素材)」を新車生産に再利用することを検討している。

素材の劣化を避け高品質パーツに

マテリアルループでは、100台のアウディを解体し、様々な素材がどのように活用できるか、徹底的に検討されている。
これまで、廃棄自動車から再利用されるスチールなどは、構造用鋼として用いられてきた。アウディは、これを自動車に再活用しようとしている。

これまで、新車の製造に使われる素材のうち、使用を終えた車両から再利用される素材はごくごくわずかだった。例えばスチールはリサイクル後、構造用鋼として使われるのが一般的だが、アウディは使用を終えた車両から取り出したリサイクル素材を、新車生産に再利用することで、この状況を変えたいと考えている。ただ、リサイクルの過程で材料の品質が低下する「ダウンサイクリング」は避けなければならない。

アウディAGのマルクス・ドゥスマンCEOは、マテリアルループについて次のように説明する。

「マテリアルループ・プロジェクトは、使用済み車両に関して、高効率循環経済コンセプトを運用するという、アウディの野心的な計画の一部となります。高い品質の状態で、できるだけ多くの素材を回収し、生産に再利用することが私たちの目標です」

「この結果、貴重な一次素材を節約し、製品のエコロジカル・フットプリント(地球の環境容量を表す指標)を低減することができます。同時に二次素材への直接的なアクセスは、供給の安全性を高めることにも貢献します。原材料は、もはや採取する必要はなくなるのです」

試験的に100台のアウディを解体・分類

マテリアルループでは、100台のアウディを解体し、様々な素材がどのように活用できるか、徹底的に検討されている。
今回、マテリアルループの一環として、開発車両を含む100台のアウディ製車両が解体。徹底的に粉砕、分類されている。

2022年10月、共同プロジェクト「マテリアルループ」の一環として、開発車両を含む100台のアウディ車が解体された。部品単位まで徹底的に解体することで、より大きなプラスチック片など、高品質な副資材を回収し、リサイクルに回すことができたという。

解体後の車体は、パートナー企業の協力のもと、破砕され、スチール、アルミニウム、プラスチック、ガラスの素材群に分類。回収した素材を新車生産に再利用する目的で、アウディは、リサイクル業界、アウディのサプライチェーン、学界のプロジェクトパートナーとともに、さらなるリサイクルプロセスを検討し、試験的に実施している。

アウディAGのサプライチェーン&持続可能性担当責任者のヨハンナ・クレビッツは、「業界内のサイクルを再検討することで、製品やその素材をできるだけ長く使うことができます。将来的には、他産業からの資材供給を減らし、自動車業界内で素材を循環させていくことが、私たちのビジョンとなります」と説明する。

アウディA4用インナードア・パーツに活用

マテリアルループでは、100台のアウディを解体し、様々な素材がどのように活用できるか、徹底的に検討されている。
マテリアルループの一環として取得したリサイクル素材を活用し、アウディ A4用インナードア・パーツが1万5000個以上製造される。

「マテリアルループ」のパイロット・プロジェクトは2023年4月末まで実施される予定。すでに、一部の材料は自動車の生産へと還元されている。そのひとつが、このプロジェクトでリサイクルされたスチール・スクラップの多くが、新型車の製造に利用されるようになったことにある。

最初のトライアルでは、マテリアルループの二次材料を約12%使用し、アウディの高い品質基準に適合した、構造部品に使用可能な6種類のスチールコイルが製造された。アウディはこのコイルを使用して、インゴルシュタットのプレス工場において、アウディ A4のインナードア・パーツを、最大1万5000個生産する予定となっている。プロジェクトの一環として行われた調査では、コイルに含まれる自動車からのリサイクル鋼材の割合は、計画よりも増やすことができることも分かっている。

さらに、「マテリアルループ」の成果として、アウディはフォルクスワーゲン・グループと共同で、自動車生産におけるリサイクル率をさらに高めるために、どのような前提でプラスチック製パーツを設計すべきか、詳しい説明を加えたサプライヤー向けガイドも作成した。

アウディが進める「マテリアルループ」を動画でチェック!

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ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…