世界12台限定のロールス・ロイス レイス生産終了記念モデル

ロールス・ロイス・レイス最後の限定モデル「ブラック・バッジ レイス ブラックアロー」はわずか12台

12台が限定製造される、ロールス・ロイス「ブラック・バッジ レイス ブラックアロー」のエクステリア。
最後のV12搭載クーペとして、世界速度記録車両「サンダーボルト」をイメージした、12台限定モデル「ブラック・バッジ レイス ブラックアロー」が登場した。
ロールス・ロイス・モーター・カーズは、V12エンジン搭載クーペ「レイス」の生産終了を記念した、限定モデル「ブラック・バッジ レイス ブラックアロー」を発表した。世界限定12台のみで、電動化を推進するロールス・ロイスにとって最後のV12クーペとなる。

Rolls-Royce Black Badge Wraith Black Arrow

限定12台のみが製造される最後のV12クーペ

12台が限定製造される、ロールス・ロイス「ブラック・バッジ レイス ブラックアロー」のエクステリア。
電動化を進めるロールス・ロイスは、V12クーペの生産終了を決定。そのフィナーレに相応しい特別なレイスを、12台のみ製造する。

「ブラック・バッジ レイス ブラックアロー」は、ロールス・ロイス史上最もパワフルなモデルとして世界中で高い人気を集めた「レイス」最後のモデルとなり、わずか12台のみが世界中の選ばれたオーナーへと販売される。今回、1930年代に当時の世界最高速度記録を樹立した「サンダーボルト」からインスピレーションを得たデザインコンセプトを採用し、ロールス・ロイス史上屈指の複雑な表面仕上げとなる「グラディエント・ペイント」が導入された。

ロールス・ロイス・モーター・カーズの最高経営責任者、トルステン・ミュラー・エトヴェシュは、レイスのフィナーレについて次のようにコメントしている。

「レイスは、これまで英国・グッドウッドでつくられたクルマの中で、特に重要で影響力の大きなモデルです。その並外れたパワー、パフォーマンス、存在感により、ロールス・ロイスは全く新しい顧客層を獲得しました」

「オルタナティブな『ブラック・バッジ レイス』投入によって、さらに多くの新しいファンを生み出しました。この画期的なモデルの最後を飾る1台は、グッドウッドから旅立つ準備ができています。これが私たちの作る最後の記念碑的なV12クーペとなります」

「ブラック・バッジ レイス ブラックアローと、そのインスピレーションの源となった1930年代に最高速度を記録したV12エンジン搭載の『サンダーボルト』は、ともに長年の成果の集大成として、それぞれの時代の終わりを象徴しています。この壮麗な最後のV12クーペ・コレクションは、そのビスポーク仕様によって、レイスの意義と精神を表現しています。まさに革新的なモデルにふさわしいフィナーレです」

新たなカスタマーを獲得したレイス

12台が限定製造される、ロールス・ロイス「ブラック・バッジ レイス ブラックアロー」のエクステリア。
ファントムやゴーストよりも、若々しいイメージを持って登場したレイスは、これまでロールス・ロイスに関心のなかった若者層にも強くアピールすることになった。

2013年に発表されたレイスは、先代のファントムやゴーストよりもパフォーマンス重視のモデルとしてデビュー。ロールス・ロイスに対する認識を根本的から変え、新たな若い顧客層を初めてブランドに取り込んだという。若者文化への影響力は、音楽、映画、アート、ファッションの分野において、レイスが幾度となく取り上げられたことからも明らかだろう。

レイスのドラマチックな“ファストバック”シルエットは、このモデルのダイナミックなクリエイティビティを表現。2016年に導入された「ブラック・バッジ レイス」により、さらにそのキャラクターが強調されることになった。ブラック・バッジ レイスは、V12エンジン搭載のロールス・ロイスが生み出す最高レベルのパフォーマンスを世界中にアピールしている。

世界最速のV12「サンダーボルト」をイメージ

12台が限定製造される、ロールス・ロイス「ブラック・バッジ レイス ブラックアロー」のエクステリア。
ロールス・ロイスは、2基のロールス・ロイス製V12エンジンを搭載し、世界速度記録を樹立した巨大な8輪モデル「サンダーボルト」を、最後のV12クーペのインスピレーションとした。

レイス時代の終焉にふさわしい最後を構想するにあたり、ロールス・ロイスのデザイナーとエンジニアは、そのインスピレーションを、ロールス・ロイスの歴史において重要な1930年代から得ることになった。

1938年、大胆で勇敢なドライビングにより「ブラック・バッジ」の精神を体現していたジョージ・エイストン大尉は、ロールス・ロイス製V型12気筒「Rシリーズ」航空用エンジンを2基搭載した、重量7t、8輪を持つ巨大な「サンダーボルト」により、357.497mph(575.335km/h)という当時の世界速度記録を樹立した。

1939年の第二次世界大戦の勃発により、エイストンのプロジェクトは終わりを告げられてしまうが、その後の記録更新は、すべて異なるタイプと構成のエンジンによって樹立されており、「サンダーボルト」は史上最速のV12エンジン搭載モデルとして、永遠に語り継がれている。

当時、「サンダーボルト」の記録挑戦は、ユタ州のボンネビル・ソルト・フラッツで実施。白い地面が眩しく輝き、砂漠の太陽が照りつける環境下では、ポリッシュ仕上げのアルミニウムボディが反射し、いつ計時装置を通過したのか、正確に判断するのはほとんど不可能だったという。

そこで、シンプルかつ独創的な解決策として、エイストンは車両の側面に大きな黒い矢印(ブラックアロー)を描き、その中央に黄色の円を描くことで、高速走行中でもはっきりと確認できるようにした。これが今回の「ブラック・バッジ レイス ブラックアロー」のネーミングの由来となっている。

繊細に変化するグラディエント・ペイント

12台が限定製造される、ロールス・ロイス「ブラック・バッジ レイス ブラックアロー」のエクステリア。
特別なレイスのボディは、セレブレーション・シルバーとブラック・ダイヤモンドがボディ上でグラデーションする「グラディエント・ペイント」がチョイスされた。

「ブラック・バッジ レイス ブラックアロー」専用のビスポーク仕上げは、セレブレーション・シルバーとブラック・ダイヤモンドというふたつのトーンを、フルカラーグラデーションで処理。2色の移ろいを引き立たせるため、ブラック・ダイヤモンド層の上にガラスを注入した「クリスタル」塗装も施しており、フロントからリヤまで印象的なモーションブラー効果を生み出している。

このビスポーク専用技法により、ボンネビル・ソルト・フラッツの地面から着想を得た、繊細な触感がコーチワークに備わり、ここにハイグロスラッカーを塗布。ガラスのような仕上がりを実現するため、12時間以上かけて研磨されている。

この美しい仕上げを実現するため、ロールス・ロイスのエンジニア、職人、デザイナーからなるビスポーク・コレクティブは、1年半に及ぶ表面テストと開発を実施。ロールス・ロイスの基準に相応しいクオリティを実現した。材料化学、塗布技法、表面仕上げの開発に多くの時間をかけた結果、グラディエント・ペイントはロールス・ロイスがこれまでにつくり出した塗料の中で、最も技術的に精巧なペイントとなったという。

このグラディエント・ペイントとコントラストをなすのが、バンパー・インサートとビスポーク・ホイール・ピンストライプに入れられた、ブライト・イエロー。これは「サンダーボルト」の黒い矢印の中の黄色い円をイメージしている。

また、ロールス・ロイス初の試みとして、ラジエーターグリルの背後、エンジンの前方のストラットもブライト・イエローで仕上げられた。ブライト・イエローはカーボンファイバー製スピリット・オブ・エクスタシーのベースにも採用。ここには同色のリングディテールが組み込まれており、コレクション名が彫刻されている。

V12エンジンを表現した専用フェイシア

12台が限定製造される、ロールス・ロイス「ブラック・バッジ レイス ブラックアロー」のインテリア。
インテリアのフェイシアには、V12エンジンをイメージした複雑なデザインが施されている。これは、ビスポーク・コレクティブが2ヵ月にわたる制作期間を経て完成させている。

ロールス・ロイス最後のV12クーペを記念し、ビスポーク・コレクティブは、インテリアのフェイシアのためにユニークな芸術作品を製作した。複雑なデザインは、レイスに搭載される現代的なV12エンジンを巧みに表現。ブラック・バッジ・ファミリーのノワール・アンビエンスにマッチした、きわめて複雑なデザインは2ヵ月にわたる開発期間を経て完成したという。

1枚のブラックコーティング・アルミニウム・シートに彫られ、下の輝く金属が見えるようになっており、「サンダーボルト」のポリッシュ仕上げアルミニウム製ボディとの視覚的つながりが表現された。

ブラック・バッジ レイス ブラックアローのコーチドアに張られたオープンポア仕上げのブラックウッドは、ボンネビル・ソルト・フラッツのひび割れた不規則な地面を模したデザインを採用。レーザー加工による320ピース以上もの寄木細工からなる複雑なパターンが実現された。この特別な装備は、左右のリヤシートを仕切るリヤ・ウォーターフォール・パネルにも導入されている。

専用開発された「クラブレザー」を導入

12台が限定製造される、ロールス・ロイス「ブラック・バッジ レイス ブラックアロー」のインテリア。
ブラックとイエローのコントラストが華やかなインテリアには、専用開発された新素材「クラブレザー」が採用されている。

インテリアは、ブラック・バッジ レイス ブラックアローのため専用開発された新素材「クラブレザー」がチョイスされた。アームレスト、シートガセット、トランスミッショントンネル、 ドアディテール、ドアパニア、ロワダッシュボードパネルは、すべてクラブレザーで 仕上げでまとめられている。

強い光沢と深みを増したブラックカラーは、マットなロールス・ロイス・ナチュラル・グレイン・ブラックレザーと繊細なコントラストを形成。レザーのナチュラルな質感を強調することで、インテリアの“生命線”を可視化し、「ジョージ(エイストン) が、何よりも好むクラブアームチェア風ドライビングシート」と記された、当時の記者によるサンダーボルトに近い仕様が再現された。

ブラック・バッジ・シリーズの大胆な色使いにならい、シートレザーにはブライトイエローを採用。シート上部ヘッドレスト外側に矢印のモチーフの刺繍が施され、触感を楽しめるディテールが施された。これもサンダーボルトのアルミニウム製ボディに描かれた矢印のマークを表現している。

1938年9月16日の正座を描くヘッドライナー

12台が限定製造される、ロールス・ロイス「ブラック・バッジ レイス ブラックアロー」のインテリア。
ルーフの「ビスポーク・スターライト・ヘッドライナー」は、ロールス・ロイス史上最多の光ファイバーを使い、1938年9月16日のユタ州の星座を再現している。

夜空のようにドラマチックな雰囲気を車内で演出するため、ルーフの「ビスポーク・スターライト・ヘッドライナー」には、光ファイバー製の「星」が2117個も組み込まれた。これはロールス・ロイス史上、過去最多の光ファイバーとなる。「星」はすべて手作業で配置され、広大な土地から眺めた天の川と、エイストンの最後の記録が樹立された1938年9月16日、ユタ州の上空に現れた星座が正確に描かれている。

1930年代のアナログ計器類からインスピレーションを得たフェイシアクロックのベゼルは「サンダーボルト」のコクピットの未加工の美しさをイメージ。ここにもオリジナルの車両のサイドに配置されたの矢印を模したブラックの針の先端が導入されている。

周囲には伝説の「ボンネビル」の文字と「サンダーボルト」のV12エンジン車としての永遠不滅の記録速度である「357.497mph」の文字が刻まれた。さらに、トレッドプレートにも「矢印」のディテールがあしらわれている。

エンジンカバーに配置された専用プレート

クーペに搭載される最後のV12エンジンを証明する専用プレートが、エンジンカバーに配置された。
クーペに搭載される最後のV12エンジンを証明する専用プレートが、エンジンカバーに配置された。

6.6リッターV型12気筒ツインターボエンジンのエンジンカバーには、ロールス・ロイスのクーペに搭載される最後のV12エンジンであることを示す、専用プレートを装着。研磨したシングルピースの金属から削り出されたこのプレートには、ブライトイエローの専用「V12」モノグラムと、ブラックの「Final Coupe Collection(最後のクーペ・コレクション)」という文字が刻まれた。ブラック・バッジ レイス ブラックアローの限定12台は、発表の段階で、すべてが世界中の重要カスタマーに割り当てられたと言う。

ロールス・ロイス初のBEV「スペクター」の南アフリカテストに参加してプロトタイプを初試乗

250万kmに達するテスト走行を課され万全の上にも万全を期して開発が進むスペクター。ロールス・ロイスにとって初の市販BEVの試乗が、ごく僅かなメディアに対して解禁された。南アフリカを舞台にしたテストの模様をモータージャーナリストの大谷達也が報告する。

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ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…