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LAMBORGHINI REVUELTO
創立60周年に誕生したV12フラグシップ・スーパースポーツ
ランボルギーニにとって2023年は、後にその歴史を振り返る中できわめて重要な年として語られることになるだろう。なぜなら2023年は同社にとって創立60周年というアニバーサリー・イヤーであるとともに、新世代のV型12気筒ミッドシップを誕生させるに至ったからだ。
2026年から2030年までには第4のモデルとなるフル電動モデルを市場へと投入することを最終的な目標とした中期計画「コウ・タウリ」の第2段階、すなわち2024年末までに全車を電動化するというプランの第一歩を現実化してみせたのだ。
3月上旬、この時はまだ「LB744」なる社内コードで呼称しなければならなかった、その新型車の事前発表会に出席するために、筆者はイタリア、サンタアガタ・ボロネーゼのランボルギーニ本社を訪れた。会場となったのはそのスタイルが、チーフ・スタイリストのミティア・ボルケルトを中心とするチームによって描かれ、刺激的な造形を得た現場であるチェントロ・スティーレ。そこで我々を待っていたのは、「REVUELTO」(レヴエルト)のプレートを掲げた一台の新型12気筒ミッドシップにほかならなかった。
ついに改められたレイアウト
「レヴエルトでは、V型12気筒エンジンの搭載方向を180度回転させました」。それはパワーユニットの技術解説の中で語られたひと言だが、個人的にはそれもまたランボルギーニの12気筒ミッドシップの歴史を大きく転換する事実であることを改めて知り、身が震える思いがした。
1971年にプロトタイプのLP500で始まったカウンタックから、ディアブロ、ムルシエラゴ、そして最後にクーペのインベンシブルとロードスターのオーセンティカという、いずれもワンオフモデルを派生して生産が終了したアヴェンタドールまで継承され続けた、かのパオロ・スタンツァーニが考案したエンジンを後方に、トランスミッションを前部に搭載するという手法は、ついにこのレヴエルトで終わりを告げたのだ。組み合わされる8速DCTは横置き搭載される。
フロントアクスルの左右に各々1個、そして8速DCTに1個のエレクトリックモーターを組み合わせるレヴエルトは、いわゆる外部充電が可能なPHEVだが、ランボルギーニはそれをHPEV(ハイ・パフォーマンス・エレクトリファイド・ビークル)と称するが、それはもちろん驚愕のパワースペックと運動性能によって証明されている。
ちなみにエンジン単体でも825PS/9250rpmの最高出力と725Nm/6750rpmの最大トルクを発揮。レブリミットは9500rpmに設定される高回転型ユニットだ。これはエアの供給量を増やし、またシリンダー内での最適なエアフローを実現するために再設計された吸気システム、そしてこちらもさらなる高効率化を目的に上方排気のデザインを採用した排気システム、そして12.6にまで高められた圧縮比などによるチューニングが功を奏したものだという。
搭載される3個のモーターは、いずれも重量が18.5kgと小型軽量なもので、最高出力は約148PS(110kW)。前輪側の2個のモーターは、減速や増速の制御を受けることでトルクベクタリング(e-axle)の効果を生み出すほか、4WDや4WSとの総合制御によって安定したスタビリティとナチュラルなコーナリングをドライバーに提供する。ちなみにランボルギーニはこの総合制御システムを「ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ2.0」と称する。
新時代を告げるモノコック
どれだけ優秀な電子制御デバイスを採用しても、基本構造体やそれに組み合わせられるシャシーがプアな設計では、その良さは引き出せない。ランボルギーニはレヴエルトに、まさに時代の最先端をいくモノコック、そしてシャシーを与えてきた。レヴエルトのモノコックは「モノフューズレージ」と呼ばれるもので、これはもちろんカーボン製。
設計面で興味深いのは部品間の統合をより最適化するために、モノシリック・ロッカーリングと呼ばれる単体のリング状構造部品を製作し、それでタブやフロントのファイアーウォール、Aピラーなどのエレメントを囲み接続する製法が採用されていることだ。もちろんカーボンといっても、その種類は適材適所で異なり、モノシリック・ロッカーリングはCFRP製、タブなどにはフォージド・コンポジッドが使用されている。そしてさらに注目されるのは、フロントのサブフレームまでもがカーボンファイバー製とされていること。同素材はフロントのコーンにも使用され、軽量化とともにクラッシュボックスとしての機能を高めている。
レヴエルトのモノコックは、結果的にアヴェンタドールのそれよりも10%も軽く、そしてフロントフレームのみを比較すれば20%もの軽量化に成功している。ねじり剛性は実に40000Nm/度と、こちらも同様の比較で25%の向上。クラス最高のダイナミック性能を保証している。一方リアのサブフレームはアルミニウム合金製で、こちらも大幅な軽量化と剛性の向上、そして溶接線の削減などが図られた。
ランボルギーニは、レヴエルトは自動車の生産におけるカーボンファイバーの使用に対して、「AIM」という頭文字で示される新しい「ゼロ年」を象徴するモデルであるともコメントしている。AIMとはそれぞれ自動化、統合、モジュール化の意。より自動化、デジタル化されたプロセスを導入し、複数の機能をひとつの部品に統合、そして応用技術をモジュール化することであらゆる製品の要求や特性に対応できるよう、より柔軟で効率的なものにすることを目標として掲げたものであり、レヴエルトはそのゼロ地点、すなわちスタートに立つモデルであることを意味する。
多彩なドライビングモード
それでは実際に、レヴエルトではどのような走りが楽しめるというのだろうか。レヴエルトには「チッタ」「ストラーダ」「スポーツ」「コルサ」の各ドライビングモードに加えて、新たにエレクトリックモーターとバッテリーのチャージを制御する3種類のコンバインモード「リチャージ」「ハイブリッド」「パフォーマンス」が用意された。
すなわちドライビングモードとコンバインモードの組み合わせ等によって、トータルで13種類の走行モードが実現されることになるわけだが、そのモード設定はステアリングホイール上の左右に備わるロータリースイッチで行う。実際に触れてみた操作性やメーターパネルの視認性は、いずれも良好なものだったことを付け加えておく。
チッタは深夜の住宅街などを走行する時にも便利な、V12エンジンが停止し、3基のエレクトリックモーターのみで駆動力を得るゼロエミッション走行のモードだ。キャビンのセンタートンネル内に収められるリチウムイオンバッテリーの容量は3.8kWhだから、走行可能距離はさほど長くはないと推察できるが、このような時にはコンバインモードをリチャージとすることでV12エンジンから再充電を短時間で行える。ちなみにこのモードでの最高出力は180PSに抑えられる。
ストラーダではV12エンジンは常にアクティブな状態にある。システム全体の最高出力は886PSに高められ、e-axleやアクティブ・エアロダイナミクスも最高レベルの安定性を確保するために確実に機能する。さらにエキサイティングな走りを求めたければ、最高出力が907PSにまで高められるスポーツモードをロータリースイッチで選択すれば、8速DCTは最高水準の応答性でドライバーの意思に応え、サスペンションやエアロダイナミクスもコーナリング時のファンをより高めてくれることだろう。
そしてレヴエルトの究極的なパフォーマンスを味わいたいのならば、選ぶモードはコルサ以外にはない。加えてコンバインモードでパフォーマンスを選択すると、最高出力は1015PSに達し、ドライビングスキルに自信のあるドライバーならば、ESC(エレクトリック・スタビリティ・コントロール)のカットやローンチコントロール機能の効果も楽しめる。
タイヤはブリヂストンの専用開発
レヴエルトの前後重量配分は44:56。バッテリーの搭載位置の関係から重心は低く、またシャープなライン構成が印象的なボディは、アクティブ・エアロダイナミクスの採用で最高レベルの空力特性を実現した。アヴェンタドール・ウルティマエと比較して、空力効率は61%、ダウンフォース量は66%増を実現することに成功した。これにはエアの流れを高効率のリアウイングへと導くフロントスプリッターとルーフの設計が大きな効果を生み出しているのだという。
ブレーキはフロントに440㎜径ディスクと10ピストン・キャリパー、リアに390㎜径ディスクと4キャリパーを組み合わせる。ディスクは最新世代のCCBプラス(カーボン・セラミック・ブレーキ・プラス)となり、摩擦層で被われたこのディスクはブレーキング時の性能のみならず、熱管理や音響の快適性をも向上させているとのことだ。なお、タイヤはブリヂストンの専用開発による、ポテンザ・スポーツ。サイズはフロントが265/35ZRF20、リアに345/30ZFR21というセットのほか、ランフラット技術を採用した265/30ZRF21、335/25ZRF22サイズなども用意される。
今年誕生するスーパースポーツの中でも、このランボルギーニ・レヴエルトの存在感はかぎりなく大きなものとなるに違いない。2023年、それはやはりランボルギーニにとって、歴史にその節目を残す特別な年なのだ。