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ランボルギーニ アヴェンタドール LP780-4 ウルティマエ
純V12マシンの歴史に終止符。その意味でもウルティマエの存在は特別だ
ランボルギーニは、2011年から約10年にわたって生産を続けてきたフラッグシップモデルのアヴェンタドールの歴史に幕を引くともに、そのファイナルモデルとなる「アヴェンタドールLP780-4 Ultimae」を発表した。Ultimae(ウルティマエ)は英語のUltimateであり、もちろん日本語では究極を意味する。
かつてランボルギーニのCEOであり、先日同職に復帰したステファン・ヴィンケルマン氏によって復活した車名表記の法則により、縦置きリヤミッドシップ=LPエンジンで最高出力780ps、ということが理解しやすくなった6.5リッターの自然吸気V型12気筒エンジンを搭載。アヴェンタドールが生産を中止することで、1960年代から脈々と受け継がれてきた純V12エンジンマシンの歴史にも終止符が打たれることになる。その意味でもウルティマエの存在は特別だ。
先日イギリスで開催された「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で初公開されたアヴェンタドール LP780-4 ウルティマエだが、やはりファンの興味はアヴェンタドールの市場を受け継ぐ次世代モデルに、どのようなパワーユニットが搭載されるかにあったようだ。思い返せばアヴェンタドールのデビュー時にヴィンケルマンCEOは、「2世代分を一気に飛び越えるフルモデルチェンジを果たした」とコメントしていた。カウンタック以来のメカニカル・アーキテクチャーを廃したアヴェンタドールは、ようやくここで世界の頂点に立ったともいえたのである。
熟成極まった自然吸気の6.5リッターV12
その最終モデルとなるウルティマエ。さっそくそのメカニズムの構成を検証していこう。まずはこれが最後とされるV型12気筒自然吸気エンジンは、車名からも簡単に理解できるように、これまでアヴェンタドールで最強モデルだった「SVJ」をさらに10ps上回る780ps。ここで発揮されたパワーは7速のセミオートマチックトランスミッション「7速ISR=インディペンデント・シフティング・ロッド」を介して、最善の効率で4輪へと伝達される。ちなみにこのトランスミッションには、「ストラーダ」、スポーツ」、「コルサ」のほかに、インディビジュアルのセッティングが可能な「エゴ」モードが用意される。
車名に添えられる「-4」は、このモデルが4輪駆動であることを示すもの。アヴェンタドールはそのデビュー時から4WDを基本的な駆動方式としてきたから、これもまた当然の選択といえるのだろう。4WDのシステムは、コンパクトで軽量なハルデックス・カップリング(電子制御多板クラッチ)で、その瞬時のトルク伝達はまさに圧巻といえる。
CFRP製モノコックにカーボンパーツを多用し軽量化を促進
基本構造体は、これまでのアヴェンタドールと同様にCFRP製のモノコック。さらにカーボンパーツが広範に使用されたことで、ボディサイズを考えれば驚異的な1550kgという乾燥重量を得ることが可能になった。この車重は「アヴェンタドールS」よりもさらにクーペ同士の比較では25kgほど軽く、それによって1.98kg/psのパワーウエイトレシオを実現。0-100km/h加速を2.8秒で、最高速は355km/hを記録する。
また100km/hから完全停止までのセラミックブレーキの能力はわずかに30m。さらにプッシュロッド形式のサスペンションには、この約10年間という時間の中で図られたさまざまな改良作業の効果が表れており、加えて後輪操舵の4WSや、前輪のランボルギーニ・ダイナミック・ステアリング(LDS)など、コーナリング特性を向上させるための、デビュー時には存在しなかったメカニズムの搭載、そしてその効果に感動させられるはずだ。
エアロダイナミクスを追求し走行時のバランスを最適に調整
クーペモデルで全長×全幅×全高が4868×2098×1136mmというサイズのボディは、フロントのダウンフォース量を高めるために、SVJにも似た専用のフロントバンパーコンセプトを採用しているのが大きな特徴。フロントのスプリッターと吸気口は、さらに効率的にエアを取り込むことで、エンジンとラジエーターの冷却を最適化する目的も持っている。
フロントバンパーのエアダクトとサイドインレットはフロントタイヤの空力的な干渉を抑え、リヤにあるラジエーターへのエアの流れを最適化する一方、また大型ディフューザーを採用した軽量リヤバンパーがダイナミックなエクステリアを演出。SVJからのサーキット志向を継承するとともに、ファイナルモデルとしての完成度を見る者に理解させてくれる。
リヤウイングはアクティブ・エアロ・システムを持つもので、モードは「クローズ」、「最大パフォーマンス」、「最大ハンドリング」の3つが設定されている。走行スピードやシチュエーションによって車両全体の走行バランスを最適化するのが、このメカニズムの目的。シャシーのフロントとリヤの間にはボルテックスジェネレーター(エアの流れを変化させるための突起物)が装備され、それによって気流の速度を最大化、ブレーキ冷却をも促進する。
ウルティマエはパフォーマンスとダイナミズム。洗練との完璧なバランスを具現化した
アヴェンタドール LP780-4 ウルティマエは、自然吸気V型12気筒モデル、アヴェンタドールの集大成だ。そのエクステリアデザインは複雑な面や線で構成されており、それはSVJのパフォーマンスとSモデルのエレガンスさに敬意を表しながら、両モデルの最高の要素を採り入れ、パフォーマンス、ダイナミズムと不朽の洗練との完璧なバランスを具現しているとランボルギーニは主張する。ボディカラーは、グレーを重ねたツートーンのローンチカラーを始め、選択肢は標準で18色。オプションも含めると300色以上から好みのカラー、配色を選ぶことができるという。またロードスターではカーボン製の軽量なルーフが装備される。
2世代を一度のフルモデルチェンジで飛び越えたアヴェンタドール。はたして次作には、どのような話題が秘められているのか。何らかのエレクトリック・システムを搭載することは、まず間違いのないところ。ランボルギーニも過去にはPHVのコンセプトカーを発表したことがあるし、スーパーキャパシタの研究開発においては、彼らはすでに世界のリーディングカンパニーだ。生産台数はクーペが350台、ロードスターが250台となる。
REPORT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAGINE/GENROQ 2021年 10月号
【SPECIFICATIONS】
ランボルギーニ アヴェンタドール LP780-4 ウルティマエ
ボディサイズ:全長4868 全幅2098 全高1136mm
ホイールベース:2700mm
乾燥重量:1550kg
エンジン:V型12気筒DOHC
排気量:6498cc
最高出力:574kW(780ps)/8500rpm
最大トルク:720Nm(73.4kgm)/6750rpm
トランスミッション:7速SCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前255/30ZR20(9J) 後355/25ZR21(13J)
最高速度:355km/h
0-100km/h加速:2.8秒
車両本体価格:5454万3088円
【問い合わせ】
ランボルギーニ カスタマーセンター
TEL 0120-988-889
【関連リンク】
・ランボルギーニ 公式サイト
http://www.lamborghini.com/jp