メルセデス・ベンツのコンパクト「Aクラス」「Bクラス」に試乗

「メルセデス・ベンツ Aクラス/Bクラス」はうるさ方も黙らせるスポーティで小さな高級車

コーナーを駆けるメルセデス・ベンツA180。走った印象は素朴だが、内装の質感も上がっており、たしかにこれなら“うるさ型”も納得かもしれない。
コーナーを駆けるメルセデス・ベンツA180。走った印象は素朴だが、内装の質感も上がっており、たしかにこれなら“うるさ型”も納得かもしれない。
メルセデス・ベンツの人気コンパクトモデル、AクラスとBクラスがともにマイナーチェンジを受けた。内外装をブラッシュアップした最新モデルに試乗してプレミアムコンパクトの最先端を堪能した。

Mercedes-Benz A-Class & B-Class

ハイライトは外観と内装のデザイン変更と装備の充実

大学の先輩が「最近Aクラスがいいんだよね」と言った。加齢と共に所有車を小型化していくのはよく聞く話だが、50代半ばの先輩はV12フェラーリやメルセデス・ベンツSクラスを所有し、シルビアのドリ車でエビスに行くような人だったから、その変貌ぶりに愕然とした。しかし、そういう人すらも納得させるメルセデス・ベンツAクラスとは如何なるものか、興味が湧いた。

今年2月、現行型となる4代目Aクラスがハッチバック、セダンともにマイナーチェンジして、ワイドアンドローのプロポーションは大筋で変わらず細部をブラッシュアップした。グレードは最上位のプラグインハイブリッドのA250eが消滅し、1.3リッター直4ターボガソリンに7速DCTを組み合わせるA180と、1.9リッター直4ターボディーゼルに8速DCTを組み合わせるA200dの、内燃機関2機種の選択肢となる。なお、この選択肢はAクラスとMFA2プラットフォームを共用し、今回同時にマイチェンしたマルチパーパスコンパクトのBクラスも同様だ。

まずはローズゴールドメタリックのボディがゴージャスなA180に試乗する。今回のマイナーチェンジはパワートレインに変更がなく、主に外観と内装のデザイン変更と装備の充実がハイライトだ。マイチェン前と同様の1.3リッター直4ターボの印象は排気量なりだが、これがBSGなら走りの洗練度も上がっただろう。なお、まもなく導入されるAMGモデルはBSGとなるという。

“うるさ型”も納得の高品質

エクステリアではボンネットに刻まれた2本のパワードームが最大の特徴だ。さらにフロントバンパー&グリル、テールランプが新デザインとなりシャープとなった。座面高が低く、スポーティな雰囲気のインテリアは、ナッパレザーを採用した新世代ステアリングが目新しい。センターコンソールはタッチパッドが廃止され、すっきりとしたデザインとなった。他にもアダプティブハイビームアシストやリヤビューカメラ、ワイヤレスチャージングなど標準装備が充実し、MBUXも最新世代を採用した。

ADASも充実しており、ディスタンスアシスト・ディストロニック、いわゆる追従クルーズコントロールを使用中、ドライバーがステアリングを握っているかどうかの判定が、従来のトルク検出式から静電容量式に改められた。この日は試乗会場近くの高速道路が車線規制で渋滞しており、あまり試せなかったが、ステアリングに触れているにもかかわらず、高い直進安定性が徒となって警告が出ることもなくなるだろう。

約15mm車高が低くなり、タイヤが18インチ(標準は17インチ)となる、オプションのAMGラインパッケージが装着されているからか、乗り心地はやや硬めだ。標準のコンフォートサスは試していないが、安楽に走るならそちらの方がベターだろう。走った感じは素朴だが、内装の質感も上がっており、たしかにこれなら“うるさ型”も納得かもしれない。

俊敏な走りを見せるファミリーカー

直後にB200dにも試乗すると、Aクラスと較べて座面が高く、明確にファミリーカーの風情だ。しかし、こちらもAMGラインパッケージが装備されており、曲がる感じはスッと向きが変わる印象で、ファミリーカーという見た目とギャップがあった。それとクラッチのつながりが急なのかアクセルが早開きなのか、停車時からのスムーズな加速や微速前進が難しい印象だった。その後に乗ったA200dセダンの発進に違和感がなかったので、これはBクラス固有の現象かもしれない。

試乗の最後にA180の資料を見ると車両本体価格498万円と書いてあり思わずのけぞった。昔のメモを見返すと初期型のA180スタイルが約360万円だったから、130万円以上も高い。装備が充実したとはいえ、異次元円安を恨めしく思わずにはいられない。金に糸目をつけずに、スポーティなデザインの小さな高級車(実際高いけど)が欲しい人なら納得できるかもしれない。

REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)
MAGAZINE/GENROQ 2023年6月号

SPECIFICATIONS

メルセデス・ベンツ A 180〈A180セダン〉

ボディサイズ:全長4430〈4560〉 全幅1800 全高1440〈1445〉mm
ホイールベース:2730mm
車両重量:1360〈1370〉kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1332cc
最高出力:100kW(136PS)/5500rpm
最大トルク:200Nm(20.4kgm)/1460-4000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後トーションビーム
ブレーキ:前後ディスク
タイヤサイズ:前後205/55R17
車両本体価格:498〈505〉万円

メルセデス・ベンツ B 200 d

ボディサイズ:全長4425 全幅1795 全高1565mm
ホイールベース:2730mm
車両重量:1550kg
エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:1949cc
最高出力:110kW(150PS)/3400-4400rpm
最大トルク:320Nm(32.6kgm)/1400-3200rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後トーションビーム
ブレーキ:前後ディスク
タイヤサイズ:前後205/55R17
車両本体価格:573万円

【問い合わせ】
メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

メルセデス・ベンツAクラスのラインナップに、トップパフォーマンスモデルの「メルセデス AMG」モデルが追加された。

「Aクラス待望のAMGモデル」日本導入「メルセデスAMG A 45 S 4MATIC+」は最高出力421PS

メルセデス・ベンツは、Aクラスにスポーツモデル「メルセデスAMG A 35 4MATIC」と「メルセデスAMG A 45 S 4MATIC+」、Aクラスセダンに「メルセデス AMG A 35 4MATIC セダン」を追加。全国のメルセデス・ベンツ正規販売店ネットワークを通じて、発売をスタートした。

シャープな印象を与える水平基調のヘッドライトや、ボンネットにパワードームと呼ばれる膨らみを備えるAクラス。サメの尖った鼻先を想わせる前傾したフロントエンドでシャープさを強調したという。

メルセデス・ベンツのエントリーモデル「Aクラス」「Aクラスセダン」がマイナーチェンジを受けてMBUXがSクラス級に進化

メルセデス・ベンツ「Aクラス」「Aクラスセダン」がマイナーチェンジを受け、エクステリアとインテリアに最新のメルセデスデザインを採用した。他にもMBUXをSクラスと同等とするなどして、さらに商品性を高めた。

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著者プロフィール

吉岡卓朗 近影

吉岡卓朗

Takuro Yoshioka。大学卒業後、損害保険会社に就職するも学生時代から好きだったクルマのメディアに関わり…