新たなる選択肢「フィアット ドブロ」で考えた「欧州MPVがなぜ人気なのか?」

最新欧州MPV「フィアット ドブロ」に兄弟車「シトロエン ベルランゴ」オーナーが試乗

「ルドスパス(遊びの空間)」を謳う欧州製MPV「フィアット・ドブロ」。
「ルドスパス(遊びの空間)」を謳う欧州製MPV「フィアット・ドブロ」。
フィアットから使い勝手に優れたポップなMPV「ドブロ」が登場した。ステランティスMPV3兄弟の末っ子はベルランゴ譲りのしなやかな乗り味が魅力。欧州ミニバンの新たな選択肢として日本マーケットでも存在感を放つか? シトロエン ベルランゴのオーナーが試乗した。(GENROQ 2023年7月号より転載・再構成)

Fiat Doblo

生活を楽しめる欧州MPV

写真の5人乗り仕様(399万円)と7人乗り仕様(429万円)の2タイプのボディを設定する。

今や日本でも大人気となっている欧州が誇るMPV。その火付け役となったのは、言うまでもなく2002年から日本導入されているルノー・カングーだろう。欧州では商用モデルとして販売されているカングーだが、ここ日本ではエキゾチックで愛らしいデザインや、高い実用性が評価され、累計3万台以上の販売実績を持つ大ヒットモデルとなった。

カングーの独擅場となった欧州製MPVマーケットを他メーカーがただ指を咥えて見ているはずがない。PSAグループ(現ステランティス・ジャパン)は2019年、シトロエン・ベルランゴ/プジョー・リフターをオンライン販売し、即完売。翌2020年、カタログモデルとして正式販売に踏み切った。その結果、両モデルは順調に人気を集め、ステランティス・ジャパン躍進の原動力となっている。

それではなぜ、カングーやベルランゴ、リフターは一定層に支持されるのだろうか。日本メーカーはスモールサイズからビッグサイズまで豊富にミニバンを用意し、パワートレインもハイブリッドからガソリンまで取り揃えている。秀逸なシートアレンジやパワースライドドアは欧州MPVは苦手としている部分でもあり、その点日本製ミニバンはおもてなしの面ではいたれりつくせりである。

だが、そんな日本製ミニバンにも物足りない部分がある。それは“自由なライフスタイルの提案”ではないだろうか。カングーやベルランゴは、ツールとしてその空間を使い倒し、遊び倒すという“自由なライフスタイル”の演出がうまい。日本製ミニバンにはない内外装のポップなデザインであったり、極めて乗り心地の良い足まわりだったり、無骨だが広大な荷室などの要素から醸成される統合的なイメージといったらいいだろうか。いわば記号性でもある。カングーやベルランゴはその意味で日本のミニバンのカウンター的存在として、一定のファンから強烈な支持を集めているのだろう。

5人乗りと7人乗りが設定

そして今回、日本導入されたフィアット・ドブロもそんな「ルドスパス(遊びの空間)」を有した欧州製MPVである。簡単にいえばドブロは先述したシトロエン・ベルランゴ/プジョー・リフターのバッジエンジニアリング版だ。フロント周りはヘッドライトから伸びる1本のラインがフィアットの意匠を色濃く反映しているが、リヤ周りや樹脂製のエアバンプが施されたボディサイドのデザインはベルランゴとほぼ同一に見える。

ラインナップや搭載エンジンも当然同様だ。5人乗りの標準車と7人乗りの「ドブロ・マキシ」が設定され、燃費効率の良い1.5リッターディーゼルターボ+ZF製8速ATのパワートレインが搭載される。ゆったりとした座面幅の3座独立シートは7人乗りに限り、130mmスライドさせることが可能だ。

ベルランゴと大きく異なるのは収納の豊富さだろう。ベルランゴには「モジュトップ」と呼ばれるルーフ中央を横断する容量14リットルのフローティングアーチとテールゲート上部の60リットルの収納ボックスが設定されるが、ドブロにはこれらが省かれている。とはいえ、センターコンソール下部の広大な物入れなどドブロも必要十分な収納スペースはあるが……。

1.5リッターディーゼルターボ+ZF製8速AT

都内の街中と首都高を軽く流してみたが、走りの印象はベルランゴと変わらなかった。1.5リッターディーゼルターボはややノイズが気になるが、低回転から力強いトルクを発揮し、極めてドライバビリティに優れている。賢い8速ATの制御のおかげて、アクセルを踏めばいつでもドライバーが欲するだけの加速をもたらせてくれるのだ。

そして乗り心地は相も変わらず素敵である。凹凸を乗り越えたときの初期のコツコツ感はやや気になるが、ゆったりとしたストロークで揺れを収束させる独特のふんわりとした乗り味は、まさに欧州MPVの白眉である。

ドブロが加わることになり、3兄弟となったステランティスMPV。SUVテイストのリフター、遊び心のベルランゴ、ツールとしての魅力溢れるドブロ。ライフスタイルに合った選択肢がまたひとつ増えたのは、実に喜ばしいことだろう。

REPORT/石川亮平(Ryohei ISHIKAWA)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
MAGAZINE/GENROQ 2023年7月号

SPECIFICATIONS

フィアット・ドブロ

ボディサイズ:全長4405 全幅1850 全高1800mm
ホイールベース:2785mm
車両重量:1560kg
エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:1498cc
最高出力:96kW(130PS)/3750rpm
最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1750rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後トーションビーム
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後205/60R16
燃料消費率(WLTC):18.1km/L
車両本体価格:399万円

【問い合わせ】
チャオ・フィアット
TEL 0120-404-053
https://www.fiat-auto.co.jp/

日本導入が開始された、フィアット製ミニバン「ドブロ」。

フィアットのミニバン「ドブロ」が日本導入開始「5人乗りと7人乗りをラインナップ」「ステランティス・グループで3台目」

ステランティス・ジャパンは、フィアット・ブランドに新たに加わったミニバン「ドブロ」を5月11日から、全国のフィアット正規ディーラーにおいて発売を開始した。日本市場では5人乗りの「ドブロ」と、7人乗りのロングホイールベース仕様「ドブロ マキシ」をラインナップする。

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著者プロフィール

石川亮平 近影

石川亮平

スーパーカー&プレミアムカー雑誌「GENROQ」に在籍しながらも、カジュアルなフレンチカーも大好物な編集…