【フェラーリ名鑑:33】フェラーリのスタイリッシュなGTクーペ「ローマ」と「ローマスパイダー」

フェラーリの優美なGTクーペ「ローマ」と「ローマスパイダー」がもたらす甘い生活【フェラーリ名鑑:33】

2019年11月、フェラーリのシリーズモデル・ラインナップに新設定された優美なクーペモデル「ローマ」。
2019年11月、フェラーリのシリーズモデル・ラインナップに新設定された優美なクーペモデル「ローマ」。
フェラーリのオープンモデル「ポルトフィーノM」に続いて、シリーズモデル・ラインナップに追加されたGTスポーツカー「ローマ」。優美な2+2クーペだが、フロントに最高出力620PSを発揮する3.9リッターV型8気筒ツインターボエンジンを搭載する高性能スポーツカーである。のちに追加された「ローマ スパイダー」と合わせて解説する。

Ferrari Roma

「甘い生活」をもたらす2+2GTクーペ

美しいスタイリングと日常的に使える2+2のクーペボディを両立した。

フェラーリのシリーズモデル・ラインナップに、「ローマ」とネーミングされた優美なクーペモデルが新設定されたのは、2019年11月のことだった。3.9リッターV型8気筒ツインターボエンジンを、フロントに620PSの最高出力で搭載するという点では、一瞬オープンモデルとして先に誕生していた「ポルトフィーノM」のクーペ版という位置づけとも考えられたが、実際にはエンジン以外の関連性は低く、シャシーももちろんローマのために新設計された独立したモデルとなっている。

ローマのコンセプトは、1950年代から1960年代にローマの街で流行した「ラ・ドルチェ・ヴィータ」。すなわち「自由で甘い生活」を現代風にアレンジすることにあった。そのスタイリングはあくまでも美しく、それを日常的に使うことを目的に、2+2のクーペボディが(実際にフェラーリは、それを「2+クーペ」と表現するが)描かれた。実際に見るそのボディは、やはりエレガントであり、甘い生活を強く想像させるフィニッシュかつての250GTルッソや、250GT2+2グランドツーリング系のモデルから影響を受けていることが分かる。

スタイリッシュなソフトトップも

インテリアの仕上げもハイクラスのGTそのものの仕上げといえる。センターコンソールによって完全に二分されたキャビンは、ほかのフェラーリと同様にドライバーの機能性を重視したデザインだが、パッセンジャーサイドにもタッチスクリーンが与えられ、ここで走行状況やナビゲーションシステムの操作などが行える。リヤシートは非常にコンパクトなもので、フェラーリがこのローマを2+と表現したのも理解できる。ただし、そのおかげでスタイリッシュなクーペボディを生み出すことができたのだから、フェラーリの狙いは誤りではなかった。

2023年には、このローマのラインナップに、ソフトトップを採用したスパイダーが追加設定された。それはソフトトップを使用したFRのスパイダーとしては、「365GTB/4」(デイトナ・スパイダー)以来のもの。ソフトトップは13.5秒でオープン&クローズが可能で、さらにシャシーの強化などによって、クーペ比では84kgの重量増となってしまったが、例の620PSを発揮する3.9リッターV型8気筒エンジンは、そのハンデをまったく感じさせないほどのパフォーマンスを有していた。

GT系で初の5ポジション・マネッティーノ

フェラーリ・ローマはもちろん、高級ラグジュアリースポーツカーであると同時に、時代の先端にあるスーパースポーツカーでもある。クーペモデルの最高速は320km/h、0-100km/h加速は3.4秒という数字で、同時に最大トルクの760Nmの80%をわずか1900rpmで発揮する。組み合わせられるトランスミッションは8速DCTで、これをリヤアクスル付近に搭載することでトランスアクスル方式を完成。マネッティーノに「ウエット」「コンフォート」「スポーツ」「レース」「ESCオフ」の5つのポジションが備えられたのもGT系のモデルでは、このローマが初のことだった。自由で甘い生活の中には、たまには刺激的な瞬間というものも必要なようである

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ここまで、1947年のフェラーリ社の創業から代表的なモデルとともにその歴史を振り返ってきた。ここで2シーターV8ミッドシップとV12のFRモデル、そして「ICONA」と呼ばれる、少数が生産されることを基本的なスタンスとした、フェラーリの新しいビジネスから誕生したモデルを解説しよう。

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…