「ポルシェ 718 ボクスター&ケイマン」の影は薄くない?

イマイチ影の薄い「ポルシェ 718 ボクスター/ケイマン」が最近はそうでもない理由を検証する

新たに718 ボクスター/ケイマンのラインナップに加わったスタイルエディション。2.0リッター4気筒モデルをベースとしている。
新たに718 ボクスター/ケイマンのラインナップに加わったスタイルエディション。2.0リッター4気筒モデルをベースとしている。
ミッドシップ2シーターの718シリーズは幅広いバリエーションを持つ。その中で最もベーシックな2.0リッター4気筒仕様に、独自のカラーや装備を施し、ちょっとクラシックな雰囲気が楽しめるスタイルエディションが加わった。(GENROQ 2023年11月号より転載・再構成)

PORSCHE 718 Boxster & Cayman Style Edition

むしろファンの期待に応える718系ラインナップ

1.5tを切る軽量ボディと6000rpm以上まで良く回るエンジンとの組み合わせが生む走りは、ハイパワーなスーパースポーツマシンとはまた違った楽しさがある。
1.5tを切る軽量ボディと6000rpm以上まで良く回るエンジンとの組み合わせが生む走りは、ハイパワーなスーパースポーツマシンとはまた違った楽しさがある。

ポルシェの象徴である911の影に隠れて、今イチ印象が薄かったボクスター&ケイマンだが、最近はそうでもない。というのも水平対向6気筒を搭載する強力なスポーツモデルが続々と登場してきたからだ。1996年のデビュー当初は6気筒を搭載していたボクスターだが、718が車名に加わるようになった現行の982型からは、2.0リッター水平対向4気筒ターボのダウンサイズエンジンが搭載されるようになった。

しかし、やはり4気筒という“格落ち”感は大きかったようで、「走りは悪くないけど、やっぱり4発じゃあね〜」という声を当時はよく聞いた。そんな状況の打破を狙ったのか、はたまた当初から予定されていたプログラムだったのかはわからないが、6気筒を搭載した上級グレードが追加されたことで、今や718ボクスター&ケイマンは911派も認めるスーパースポーツとなっている。

いや、それどころかボクスターGTS4.0やケイマンGT4、最近はスパイダーRSなど、現在は合計6モデルが4.0リッターの自然吸気6気筒を載せるようになった。911の自然吸気6気筒は限定モデルを除けばGT3シリーズのみなので、むしろ718系の方がポルシェファンの期待に応えるエンジンラインナップを揃えている!? というような状況だ。

独自のカラーや装備が施されたドレスアップ

そんな中、新たにラインナップに加わったスタイルエディションは、基本となる2.0リッター4気筒モデルをベースとしている。スタイルエディションという名前からもわかるように、独自のカラーや装備が施された、いわゆるドレスアップ仕様なのだが、そこはポルシェのこと、ヘリテージを意識した仕立ては実にファンの心理をうまく捉えている。

まずボディカラー。今回の718ボクスターの色はタイプ964時代の911カレラRSに採用されていたルビースターを再現したもので、その名もルビースターネオ。そしてボンネット中央のストライプとボディサイドのポルシェのデコレーティブロゴはホワイトとブラックの2色が用意される。20インチの718スパイダーホイールもホワイトとブラックのハイグロス塗装から選択でき、センターキャップのポルシェクレストはカラー仕上げ。他にもブラックのマフラーエンドやレザーシートのポルシェクレストヘッドレスト、イルミネーション付きのステンレスサイドシルプレートなどが備わる。また718ボクスターにはソフトトップの両側前部にBoxsterロゴのエンボス加工が施されている。

ベーシックな2.0リッター水平対向4気筒ターボだが

この色やストライプを見ただけで、ポルシェ好きなら思わずニヤリとしてしまう絶妙なセレクト、このあたりはポルシェは実にうまい。自分達の財産やファンの心理を完璧に把握し、ベストのタイミングでそれらを繰り出してくる。この商品戦略を指揮しているのは一体誰なんだろう、といつも不思議に思ってしまうほどだ。

そんなスタイルエディションだが、中身はベーシックな2.0リッター水平対向4気筒ターボ。先にも書いたように最近は6気筒モデルに隠れてしまっている印象だが、乗ってみるとこれが実に魅力的なスポーツカーであることを再認識する。

1.5tを切る軽量ボディと6000rpm以上まで良く回るエンジンとの組み合わせが生む走りは、ハイパワーなスーパースポーツマシンとはまた違った楽しさがある。コーナー手前でブレーキングして荷重を前に移動させながらシフトダウン(MTも選べる!)、ステアリングを切り込んでいくと実に素直にクルマは向きを変えてくれる。この“自分の手の平の中で操っている”感覚は6気筒モデルより濃い。ただ2.0リッターという排気量で300PSを絞り出している弊害か、低中速のトルクはやや細い。排気量がもう500ccあれば、さらにオールマイティな1台となりそうだ。

水平対向4気筒こそピュアスポーツ

最近はスパイダーRSなど、現在は合計6モデルが4.0リッターの自然吸気6気筒を載せるようになった718。むしろ911よりも守旧派の心を掴んでいる。
最近はスパイダーRSなど、現在は合計6モデルが4.0リッターの自然吸気6気筒を載せるようになった718。むしろ911よりも守旧派の心を掴んでいる。

ボクスターとケイマンの次期モデルはEV化されると言われている。そうすると純エンジンのボクスターとケイマンはこの982型が最後となるのかもしれない。そんな今こそ、ポルシェの原点と言える水平対向4気筒のピュアスポーツを楽しむ価値は大いにあるだろう。そんなことまで考えてスタイルエディションを出したわけではないだろうが……いや、ポルシェならそれも計算づくかもしれないな。

REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)
MAGAZINE/GENROQ 2023年11月号

SPECIFICATIONS

ポルシェ718ボクスター・スタイルエディション

ボディサイズ:全長4379 全幅1801 全高1281mm
ホイールベース:2475mm
乾燥重量:1440kg
エンジンタイプ 水平対向4気筒ターボ
排気量:1988cc
最高出力:220kW(300ps)/6500rpm
最大トルク:380Nm(38.7kgm)/2150-4500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後マクファーソンストラット
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前235/35ZR20 後265/35ZR20
0-100km/h加速:5.1秒
最高速度:275km/h
車両本体価格:1033万4000円

ポルシェ718ケイマン・スタイルエディション

ボディサイズ:全長4379 全幅1801 全高1295mm
ホイールベース:2475mm
乾燥重量:1335kg
エンジンタイプ 水平対向4気筒ターボ
排気量:1988cc
最高出力:220kW(300ps)/6500rpm
最大トルク:380Nm(38.7kgm)/2150-4500rpm
トランスミッション:6速MT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後マクファーソンストラット
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前235/35ZR20 後265/35ZR20
0-100km/h加速:5.1秒
最高速度:275km/h
車両本体価格:952万円

【問い合わせ】
ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911
https://www.porsche.com/japan/

毎日乗ってもストレスが溜まらないスポーツカーの筆頭とも言える「BMW M2」と「ポルシェ718ケイマンのGTS4.0」。2台を比較試乗した。

今注目の手頃なスポーツモデル「BMW M2」と「ポルシェ 718 ケイマンGTS4.0」を比較試乗

コンパクトなボディに460PSの強心臓を積むFRスポーツが新型「BMW M2」だ。小気味良い走りが売りのM2に挑むのは自然吸気6気筒を搭載する「ポルシェ 718 ケイマンGTS4.0」。素晴らしき官能的なエンジンを積むコンパクトスポーツ2台のポテンシャルを味わった。(GENROQ 2023年9月号より転載・再構成)

キーワードで検索する

著者プロフィール

永田元輔 近影

永田元輔

『GENROQ』編集長。古典的ジャイアンツファン。卵焼きが好き。愛車は993型ポルシェ911。カメラはキヤノン。