新世代クーペ「メルセデス・ベンツ CLE」にスペインで試乗

CクラスとEクラスのクーペを統合した新世代クーペ「メルセデス・ベンツ CLE」はCクラス寄り?

2021年2月に登場したCクラス(W206)と23年4月に登場したEクラス(W214)。それぞれのクーペとカブリオレが統合されてCLEクーペとなってデビューした。
2021年2月に登場したCクラス(W206)と23年4月に登場したEクラス(W214)。それぞれのクーペとカブリオレが統合されてCLEクーペとなってデビューした。
メルセデスが満を持して送り出してきた新世代クーペ「CLE」。従来のCクラスクーペとEクラスクーペを統合するかたちで登場したニューモデルは、いったいどのような走りの性能を備えていたのか。(GENROQ 2023年11月号より転載・再構成)

Mercedes-Benz CLE Coupe

グローバルで見ればニッチなクーペとカブリオレ

Bピラーから後方を絞り込むことで、リヤフェンダーの力強さが際立ち、末広がりで安定感のあるリヤビュー。
Bピラーから後方を絞り込むことで、リヤフェンダーの力強さが際立ち、末広がりで安定感のあるリヤビュー。

現行Cクラス(W206)のワールドプレミアは2021年2月、新型Eクラス(W214)が発表されたのは23年4月。それぞれセダンとステーションワゴンが用意されているが、クーペとカブリオレについてはまったくアナウンスがなかった。実はメルセデスは、早い段階で「C/Eのクーペとカブリオレは統合する」と決めていたのだ。それが今回スペイン北部の街、サン・セバスチャンで試乗したブランニューモデル「CLE」である。

CLEには今回試乗したクーペのほかに、カブリオレも予定される。欧州では今秋からデリバリーがスタートする予定だが、日本には24年以降に順次導入される見通しだ。セダン派生タイプのクーペ/カブリオレという類のモデルは、欧米ではそれなりに人気があるものの、今ではそこまで売れる商品ではない。近年のSUV人気とは比較にならず、グローバルで見ればニッチ商品である。

そこでメルセデスは、「Cクラスクーペの顧客からは、より広いスペースを、Eクラスクーペの顧客からは、一層のスポーティネスを求める声が大きかった」という理由をつけて、両モデルを統合した、というわけだが、サイズがそれほど変わらない2車種を、わざわざ造り分けるための開発・生産コストが割に合わないというのが本音だろう。

力強いリヤエンドのプロポーション

かくして登場したCLEクーペは、C/E/Sクラスにも用いられているFR用プラットフォーム「MRAII」を採用したC/DセグメントのFRクーペである。実際にはCクラスとEクラスの技術をミックスしたのだそうだ。特にリヤアクスルは、ほぼEクラスと共通だという。

全長4850mm×全幅1860mm×全高1428mmのボディは、適度なボリューム感がある。ボンネットフードのパワードームや前後フェンダー上のプレスラインを除き、無駄なラインを極力廃したエクステリアは、クリーンかつ伸びやかで、グラマラスな印象も感じさせる、非常に完成度の高いデザインである。特にリヤビューは、Bピラーから後方を絞り込むことで、リヤフェンダーの力強さが際立ち、末広がりで安定感のあるリヤエンドのプロポーションを実現している。

インテリアは、基本的にCクラスに準じたデザインだが、パネルの素材やテクスチャーに変化をつけ、シートやドアトリムのカラーも個性的なものとすることで、特別感を演出している。ちなみに2人がけの後席は、ヘッドルームに余裕はないが、身長175cmの筆者でも問題なく着座できた。大開口のガラスルーフもあり、閉塞感も特にないので、十分に実用的だ。

今回試乗したのは、最高出力200PS、最大トルク440Nmの2.0リッター直4ディーゼルターボを搭載したFRのCLE220dと、258PS、400Nmの2.0リッター直4ガソリンターボを積むCLE300 4マティック、そして381PS、500Nmを発揮する3.0リッター直6ガソリンターボを搭載したCLE450 4マティックの3台。すべて23‌PS、205Nmを発揮するISG付きのマイルドハイブリッドである。

Cクラスに近いスポーティさ

結論から言えば、乗り味はCクラスにかなり近い。2865mmのホイールベースは、現行Cクラスセダンと同寸で、ISGのスペックは若干異なるものの、4気筒エンジンはガソリン、ディーゼルともスペックはCクラスと変わらない。唯一6気筒はCクラスにはないので、ワンランク上質なドライビングフィールと、しっとり落ち着きのある乗り心地が感じられたが、ダイナミック・ボディ・コントロールを備えた足まわりは、路面や速度域を問わずフラットで快適な乗り心地を実現していた。

ハンドリングもCクラスに近いスポーティさを感じた。クーペだからといってことさらスポーティ方向に振ってはいない。リヤアクスルステアも装着されていたが、最大舵角2.5度なので、高速域でスタビリティに寄与している感覚はあれど、コーナリングで違和感はなかった。

軽快感の点では、FRのCLE220dが最も感じられた。CLE300 4マティックは、4WDなので直進性は高いが、重量と220dより細いトルクが気になったのが正直なところ。CLE450 4マティックは、6気筒ならではの滑らかさと溢れるトルクが、「これぞ大人のクーペ!」と思わせる説得力に満ちていた。

REPORT/竹花寿実(Toshimi TAKEHANA)
PHOTO/Mercedes AG
MAGAZINE/GENROQ 2023年11月号

SPECIFICATIONS

メルセデス・ベンツ CLE450 4マティック

ボディサイズ:全長4850 全幅1860 全高1428mm
ホイールベース:2865mm
エンジン:直列6気筒DOHCターボ
総排気量:2999cc
最高出力:280kW(381PS)/5800-6100rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1800-5000rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
0-100km/h加速:4.4秒
最高速度:250km/h(リミッター作動)

【問い合わせ】
メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

Eクラス クーペとCクラス クーペを統合した、新型クーペ「メルセデス・ベンツ CLE」がデビューした。クーペは2023年11月、カブリオレは2024年から販売を開始する。

「メルセデス・ベンツ CLE クーペ/CLE カブリオレ」デビュー「Eクラス クーペとCクラス クーペを統合」【動画】

メルセデス・ベンツは、Eクラス クーペとCクラス クーペの後継モデルとなる「CLE クーペ/CLE カブリオレ」をワールドプレミアした。CLE クーペは2023年11月から欧州での販売をスタート、CLE カブリオレは2024年から投入される予定だ。

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著者プロフィール

竹花 寿実 近影

竹花 寿実

1997年に美術大学卒業後、自動車雑誌『driver』スタッフとして業界入り。自動車情報サイト『Hobidas Auto…