連載

GENROQ フェラーリ名鑑

Ferrari Purosangue

SUVとは異なるコンセプト

48Vシステムで制御されるアクティブサスペンションなど最新技術が多数盛り込まれた。

サラブレッド、あるいは純血を意味するプロサングエ(Purosangue)なる魅惑的な名を与えられた、新しいフェラーリが発表されたのは、2022年のことだった。それまでにもフェラーリのカスタマーやファンからは、フェラーリにSUVの必要性が強く訴え続けられていたが、長くフェラーリはそれを否定。その意識はプロサングエが誕生した今に至っても変わらない。つまりプロサングエは、市場に多数存在するSUVとは異なるコンセプトを持つモデルにほかならないと、フェラーリは定義づけているのだ。

そのコンセプトはボディデザインにも表れている。全長4973mm、全幅2028mm、全高1589mmというスリーサイズに3018mmのホイールベース。そのホイールベースを実現するためにはリアドアを観音開きスタイルのウェルカムドアとし、また48Vのエレクトリック・システムで制御されるアクティブサスペンションによって高速域では車高を低下させるほか、コーナリング時には最適なロール姿勢、そしてロールセンターを実現する。

それらの技術によってプロサングエは、一般的なSUVのように全高は高くとホイールベースは長くとも、正真正銘フェラーリのスポーツカーと呼ぶに相応しい運動性能を得ているのだ。言葉を変えるのならば、姿カタチのみが大きく変わった、やはりフェラーリの純血種であると表現してよいだろう。

純血種たる所以とは

そのもうひとつの証拠たるものは、搭載されるエンジンにもある。F140IA型と呼ばれるそれはフェラーリ伝統のV型12気筒自然吸気。その設計をさかのぼれば、エンツォ用のF140型に行きつくというのだから、これもまたプロサングエがフェラーリの純血種たる所以である。もちろんその構造部品はF140型のそれからは、ほぼすべてが一新されているに近く、6.5リッターの排気量から最高出力では725PS、最大トルクでは716Nmというパフォーマンスを発揮する。

このV型12気筒エンジンにやはり改良が施された8速DCTが組み合わされ、その逆方向にはプロサングエに4WDの駆動方式を与えるための4WDシステム、4RM-S EVOが組み合わされる。それでありながらプロサングエは49:51という前後重量配分を実現。繰り返すようだが、フロントミッドシップという基本設計を採用しているにもかかわらず、である。

ホールド性の高い後席

キャビンのデザインも、これまでのフェラーリと同様にじつにスポーティな雰囲気だ。前で触れたウェルカムドアは最大で79度開くことができ、後席へのアクセスもスムーズに行うことができる。2人分が用意される後席はフロント同様バケットタイプで、そのホールド性も抜群。バックレストを収納すればラゲッジルームを拡大することができるのは、実用性の向上に大きく貢献している。

カーボンファイバー製ルーフまでのクリアランスも十分に余裕のあるレベル。最大4人のドライバーとパッセンジャーはともに、フェラーリ伝統の魅力的な走りを圧倒的な快適性とともに味わうことが可能だ。

長年にわたり、将来的なSUVの生産を否定し続けてきたフェラーリ。プロサングエはたしかにこれまでのSUVとは狙うべきものが異なるモデルだった。フェラーリが新たに作り上げたのは、4ドアスポーツにほかならなかった。シンプルにそう考えるべき一台である。

雪道を試す機会も得たが、スリッピーな道での完璧なトルク配分、またマネッティーノのモードによって安定志向からオーバーステアまで自由自在の走りを披露してくれた。

725PSのV12自然吸気エンジンを積むSUV「フェラーリ プロサングエ」をスポーツカーのように振り回してみた

ベントレー・ベンテイガも発売間近、ランボルギーニ・ウルスの話も伝わってきていた頃、噂されていたフェラーリのSUV計画がついに現実の物となった。フェラーリ初のSUV「プロサングエ」初試乗の印象をお届けする。

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