初のV12ミッドシップPHVランボルギーニ「レヴエルト」に試乗

ミウラから数えて6代目となるV12ミッドシップ・ランボルギーニ「レヴエルト」の何がすごいかを試乗して解説する

ランボルギーニの新世代V12気筒ミッドシップ、レヴエルト。
ランボルギーニの新世代V12気筒ミッドシップ、レヴエルト。
ランボルギーニのV型12気筒ミッドシップマシンは、同社の魂といえる存在だ。ミウラの誕生から60年近く続くその歴史は、ついに6代目に受け継がれた。初めてのPHVであり、メカニズム的にも大転換を果たしたレヴエルトの実力を試す時が来た。(GENROQ 2023年12月号より転載・再構成)

Lamborghini Revuelto

すべてが新しいランボルギーニ

レヴエルトはV12気筒自然吸気エンジンと、リヤに1基、フロントに2基のモーターを搭載したPHVだ。
レヴエルトはV12気筒自然吸気エンジンと、リヤに1基、フロントに2基のモーターを搭載したPHVだ。

この体験は衝撃的だった。ランボルギーニの新世代V12気筒ミッドシップ、レヴエルトをローマ近郊のヴァレルンガ・サーキットでテスト走行する幸甚を得たのだが、乗車する直前までは注目のスーパースポーツの初ドライブに興奮しながらも、どこか懐疑的な思いが心の隅にあったことも事実だ。だが試乗を終えた今、僕は心の底から驚き、感動している。

懐疑的な思いを抱いた理由は、もちろんランボルギーニとしては初めてとなるそのメカニズムにある。V12気筒自然吸気エンジンを残し、リヤに1基、フロントに2基のモーターを搭載したPHV。しかもフロントのモーターはそれぞれが左右のタイヤを駆動するトルクベクタリングを行う。エンジンに加えて3基のモーター、合計4つの駆動力をうまく協調しないと速さはもちろんのこと、乗り手に違和感を抱かせない自然なフィールを実現できないのは当然だ。

しかもレヴエルトは従来のランボルギーニV12気筒ミッドシップマシンのパッケージをドラスティックに変えている。カウンタック以来、エンジンの前方にトランスミッションを置いて、動力を後ろに戻して後輪を駆動していた独自の方式を文字通り180度変え、エンジンの後方にトランスミッションを配置するというオーソドックスな手法へと改めた。これはもちろんハイブリッド用のリチウムイオンバッテリーを車体中央のセンタートンネル内に搭載する必要があったからなのだが、エンジンからフロントタイヤにトルクを配分する必要がなくなったという理由も大きいだろう。加えてトランスミッションはミウラ以来の横置き方式を採用し、パワートレインのコンパクト化を図っている。

ユーザーフレンドリーになった

このようにすべてが新しいレヴエルトだが、そのエクステリアデザインは従来からのランボルギーニ12気筒ミッドシップのイメージを継承している。楔のような強烈なウエッジシェイプ、前ヒンジで跳ね上がるシザースドア、随所に見られるY字型の意匠など、どこから見てもランボルギーニ12気筒だ。だが、それでいて確実に新しい。チーフデザイナーのミーティア・ボルケートは「モーターサイクルの要素を採り入れました」と語っているが、確かにヘッドライト部分の大胆な造形やフローティングしたCピラーからサイドエアインテークにつながる躍動的なラインなどは、高性能バイクの雰囲気も感じさせる。

インテリアは外観以上に大きく変わった。センターコンソールと分離したインパネに縦型のセンターモニター、4つのロータリースイッチが設けられたステアリング、パッセンジャーディスプレイなど、多くの新機構が採用されている一方、ヘキサゴンのモチーフや戦闘機のミサイルのようにカバーされたエンジンスタートボタン、レバー式のリバースギヤなど、アヴェンタドールから継承されたものも数多い。

だが一番印象的だったのはユーザーフレンドリーになったことだ。サイドシルが薄くなったので乗り込みやすいし、ヘッドスペースは明らかに広くなっている。ドライビングポジションもベストな位置が得られるし、視界も開けている。ふと振り返るとシート後方には手荷物を置けるだけのスペースが確保されているし、何とオプションでドリンクホルダーまで用意された! 今回は一般道での試乗はかなわなかったが、これならばその気になれば日常での使用も苦ではないだろう。斜め後方が目視できないのは相変わらずだが……。

モーターにありがちな不自然な加速はない

ピットをゆっくりと出て、コースイン。ドライブモードはインストラクターの指示通り、ANIMAがCORSA、ハイブリッドはパフォーマンスだ。以前にウルス・ペルフォルマンテでこのコースを走った時のことを思い出しながらスロットルを踏んでいくと、V12エンジンは即座の反応で回転を高めていく。速い! モーターが加勢しているのだろうが、モーターにありがちな不自然な加速ではなく、エンジン回転の高まりと共にパワーが盛り上がっていく感覚が実に嬉しい。

1コーナーを3速で立ち上がってメインスタンド反対側の緩い左曲がりのストレートでフル加速。ヘルメット越しでもうっとりするほどの甲高い雄叫び、12個のピストンが完璧な調律で往復運動をしていることが背中から伝わってくる。これぞ12気筒エンジンの醍醐味! と悦にいっていると急にパワーが頭打ちになったので慌ててメーターを見たら、いつの間にか9000rpmのレブリミットに到達していた。レブに当たっても音にまるで変化がないのは、サーキットではちょっと分かりづらいかもしれない。

急いでシフトアップしてなお加速。ルームミラーを見ると大きく立ち上がったリヤスポイラーが視界を遮っている。「やっぱりデジタルミラーがあった方がいいんじゃないかな」などと思いながらコーナー手前でフルブレーキングして左パドルを引く。加速の時にも感じたが、新トランスミッションの変速は電光石火だ。アヴェンタドールのシングルクラッチとは比較にならない速度でシフトダウンし、エイペックスへと向かう。ステアリングを切り、少しずつスロットルを開けていくとレヴエルトは狙った通りのラインを素直にトレースしてコーナー出口へと爆走する。あまりにスムーズなので拍子抜けするほどだが、全長4.9m以上、全幅2m以上、重量1.7t超えのスーパースポーツカーが、まるでライトウエイトスポーツのような身軽さで向きを変える。今まで、これほど扱いやすいV12気筒マシンがあっただろうか。アヴェンタドールも4WSを備えたS以降は驚くほど扱いやすいクルマになったが、レヴエルトはその比ではない。それでいてタイヤのグリップ感や路面の状況などがしっかりと伝わってくる。

相当な策士である

リヤウイングは状況に応じて上昇する。角度は3段階で、任意で上げることも可能だ。
リヤウイングは状況に応じて上昇する。角度は3段階で、任意で上げることも可能だ。

CORSAモードでの異次元のスタビリティを実感した後、SPORTモードに切り替えてみた。ウラカンではSPORTモードでオーバーステアを強める設定だったので、果たしてレヴエルトはどうか、とCORSAの時と同じような感じでコーナーでスロットルを開けていったら驚くほどテールが外に流れて大いに焦ることになってしまった。CORSAとSPORTのスタビリティ設定の差はウラカンよりもかなり大きい。というよりも、CORSAでの巌のような安定感はフロントモーターのトルクベクタリングが相当に効果を発揮しているからに違いない。今まで、あまりの速さに運転が上手くなったかのような気がしていたくらいだが、結局レヴエルトの掌の上でうまく転がされていただけのようだ。だがそれをまるで意識させずに、ひたすらV12気筒自然吸気の鼓動を感じながら楽しませてくれるのだから、このレヴエルト、相当の策士である。

試乗を終え、クルマを降りた時の心情は冒頭に書いた通り。僅かな懐疑心は見事に打ち砕かれることになった。スポーツカーの電動化を素直に受け入れられない気持ちもある昭和のクルマ好きの僕だが、逆に電動化によってここまでのことが可能なる、ということをレヴエルトは教えてくれたのだ。

REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/LAMBORGHINI S.p.A.
MAGAZINE/GENROQ 2023年12月号

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ・レヴエルト

ボディサイズ:全長4947 全幅2033 全高1160mm
ホイールベース:2779mm
車両重量:1772kg
エンジン:V型12気筒DOHC
総排気量:6498cc
最高出力:364kW(825PS)/9250rpm
最大トルク:725Nm(74.4kgm)/6750rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前265/35ZR20(9.5J) 後345/30ZR21(12J)
0-100km/h加速:2.5秒
巡航最高速度:350km/h
車両本体価格:6000万円〜

【問い合わせ】
ランボルギーニ カスタマーセンター
TEL 0120-988-889
https://www.lamborghini.com/jp-en

屈強な闘牛の名にその由来を持つ「レヴエルト」。スペイン語では「かき回す」といった意味も持つという。

V12エンジンにモーターを組み合わせた新時代フラッグシップ「レヴエルト」【ランボルギーニ ヒストリー】

ランボルギーニが満を持して発表した「レヴエルト」。ランボルギーニの伝統をV12エンジンを継承するフラッグシップモデルである。先代アヴェンタドールから、ほぼすべてのパートを一新した新時代ランボルギーニの象徴を解説する。

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著者プロフィール

永田元輔 近影

永田元輔

『GENROQ』編集長。古典的ジャイアンツファン。卵焼きが好き。愛車は993型ポルシェ911。カメラはキヤノン。