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Mercedes-Simplex 28/32 hp 1904
ダイムラーも第1回イベントに参加
メルセデス・ベンツ・クラシックは、2023年11月5日に開催される「ロンドン・トゥ・ブライトン・ベテランカー・ラン(LBVCR)」に、5.3リッター直列4気筒エンジンを搭載する1904年型「メルセデス・シンプレックス 28/32 hp」で参加する。
メルセデス・ベンツ・クラシック・コレクションが所有するこの車両は、現在、英国・ブルックランズのメルセデス・ベンツ・ワールドで展示中。ロンドン・トゥ・ブライトン・ベテランカー・ランは1896年に初開催された、世界で最も古い自動車系イベントのひとつで、1905年までに製造された車両のみが参加することができる。自動車のパイオニアである、ゴットリープ・ダイムラーも127年前の第1回大会に参加していたという。
メルセデス・ベンツ・ヘリテージの責任者を務めるマーカス・ブライトシュベルツは、今回のイベント参加について次のようにコメントした。
「私たちが所有する1000台を超えるコレクション車両は、メルセデス・ベンツの歴史を物語る存在です。その多くは走行が可能であり、世界中で様々なイベントに参加しています。今回、メルセデス・ベンツ・クラシック・センターのスペシャリストたちは、ロンドン・トゥ・ブライトン・ベテランカー・ランに参加するため、メルセデス・シンプレックス 28/32 hpを、専門知識を駆使して徹底的に整備しました」
「あらためて120年近くも前のクルマで、この大会に参加するのはスリリングなことと言えるでしょう。ただ、世界最古の自動車メーカーであるメルセデス・ベンツが、LBVCRに参加しないわけにはいかないのです。ロイヤル・オートモービル・クラブ(RAC:王立自動車クラブ)が発足して以来、私たちは緊密な関係を築いており、1896年はロンドンからブライトンまでを走った、最初の『制限解放ラン』にも参加しているのですから」
制限速度アップを記念したドライブイベント
世界で最も長い歴史を誇るロンドン・トゥ・ブライトン・ベテランカー・ランの起源は、「レッドフラッグ法」とも呼ばれた、1865年に英国で制定された「ハイウェイ法」に遡る。 この法律により、英国では蒸気推進の自走車両の最高速度が6.4km/hに制限、さらに指定された市街地では3.2km/hに制限されている。1878年までは、赤い旗を持った人が車両の前方を歩き、他の道路利用者に警告することも義務付けられていた。
1896年、自動車の発展を受けて、制限速度が19.2km/hに引き上げられることになった。1896年11月14日、自動車運転者たちはこの自由化を祝して、ロンドンから96km離れた海辺のリゾート地ブライトンまでの「制限解放ラン(Emancipation Run)」を行っている。
この制限解放ランには、合計33台の自動車が登場。大半は内燃機関を動力源としていが、蒸気自動車5台、電気自動車5台も含まれている。ゴットリープ・ダイムラーは、ビジネスパートナーのフレデリック・R・シムズのゲストとして、「ダイムラー ヴィザヴィ 3hp(Vis-a-Vis 3hp)」に同乗して参加。1890年、シムズは英国におけるダイムラー製エンジン特許の使用権を獲得しており、1893年にダイムラー・モーター・シンジケート社を設立していた。
1905年以前に製造された車両のみが参加
1927年には、この歴史的な「制限開放ラン」が復活、開催日は当時に習って11月初旬とされた。この時期の英国は悪天候が多いことでも知られているが、11月の最初の日曜日はロイヤル・オートモービル・クラブ(RAC)が主催する「ロンドン・トゥ・ブライトン・ベテランカー・ラン」の日としてすぐに定着している。
早朝にロンドンのハイドパークにクラシックカーたちが集結し、蒸気機関から内燃機関まで、様々なパワートレインが準備される様子は圧巻。今年はRMサザビーズがメインスポンサーとなり、2023年11月5日の日の出、つまり午前7時1分にロンドンをスタートする。
参加条件は、1905年以前に製造された2輪、3輪、4輪の車両のみ。パワートレインは、蒸気、電動、ガソリン、または「人力」が認められている。2017年からは、歴史的な自転車での参加も可能になったのである。