短い全長に全幅2mの「ランドローバー ディフェンダー 90」ディーゼルモデル試乗

短い全長に全幅2mというアンバランスが魅力の「ランドローバー ディフェンダー 90」のディーゼルモデルに試乗

マイルドハイブリッドの3.0リッター直6ディーゼルターボを搭載する「ディフェンダー90 D300」。
マイルドハイブリッドの3.0リッター直6ディーゼルターボを搭載する「ディフェンダー90 D300」。
ディフェンダー人気はいまだ衰え知らずだが、それに応える形で輸入元がどんどんラインナップを拡大してくれるのはうれしい限り。2024年モデルでは、初めて5.0リッターV8スーパーチャージャー搭載モデルが導入されたほか、ファン待望といえる90の3.0リッター直6ディーゼルターボが上陸。今回は後者を試してみた。(GENROQ 2024年1月号より転載・再構成)

Land Rover Defender 90 D300

1500rpmから発生するピークトルクの力強さ

90 D300のグレードは下から「X-DYNAMIC SE」「X-DYNAMIC HSE(試乗車)」「X」の3種類。いずれも48Vのマイルドハイブリッドで、燃費は9.9km/Lとなる(WLTCモード)。

気づけばデビューから早4年。生まれながらのハードコア・オフローダーなのにラダーフレームを捨てて大丈夫なのか? という外野(かくいう僕もその口だっだ)の心配はよそに、日本のみならず世界中で文字通り爆売れしているランドローバー・ディフェンダー。当初日本に導入されたのは2.0リッター直4ガソリン「インジニウム」エンジンを積んだロングホイールベース5ドアの110のみだったが、少し遅れてショートホイールベース3ドアの90、さらに3.0リッター直6ディーゼルを積む110、8人乗り5ドアの130と、着実にそのバリエーションを増やし、ニーズに応えてきた。

そして2024年モデルとして5.0リッターV8スーパーチャージャー・ガソリンエンジンを積むP525とともにラインナップに加わったのが、マイルドハイブリッドの3.0リッター直6ディーゼルターボを搭載するディフェンダー90 D300である。

デビュー当初から「90にディーゼルがあれば!」と熱望するディフェンダー・ファンの声は多かったと聞くが、実際に乗ってみるとその気持ちがよくわかった。

ノーズに収まる48Vのベルト駆動型スタータージェネレーターを組み合わせた3.0リッター直6DOHCディーゼルターボの最高出力は300PSと既存の2.0リッターガソリン・ターボと変わらないものの、最大トルクは250Nmもアップした650Nmを発生。しかも1500rpmからピークトルクを発生するので力強さは段違い。スムーズな8速ATを介してガソリン仕様よりも240kgも重い2340kgのボディを、素早く、そして軽々と加速させていく。

エアサスペンションの効果は絶大

ここでもうひとつ驚くのは、車外でアイドリング音を聞いていても「これでディーゼル?」と思うほどエンジン音が静かなことだ。さらに車内の遮音が効いているうえ、高速巡航していても必要以上にエンジン回転を上げる必要がないので嫌な雑音や振動を感じない。逆に試乗車の場合はオプションで装着されていたエクスペディションルーフラックが発する風切り音が気になったほどだ。

また全長4510mm、ホイールベース2585mmと、小型車並みの長さながら、トレッドがフロント1700mm、リヤ1685mmもあるため、想像以上に安定感は高い。加えてオプションのエアサスペンションの効果は絶大で、110や130の大らかでゆったりとした乗り味にこそ及ばないものの、たっぷりとしたストロークがピッチングを上手に抑えてくれて、クルマの動きは見た目以上に滑らか。これなら長距離の高速移動も苦にならないはずだ。

一方、街中の取り回しや、コーナーでのハンドリングは110や130とは比較にならないほどキビキビとしていて扱いやすく、見切りもいいので1995mmの車幅もあまり気にならない。

敢えてネックがあるとすれば……

試乗車はエアサスや20インチホイール、アクティブデファレンシャルなどのほか、ルーフラックやボディ側面の物入れなど、総額約230万円のオプションを装着した個体だった。

それでも日常使いには5ドアの110の方が……と思うかもしれないが、リヤシートは大人が十分座れる広さを確保。加えて2024年モデルからリヤシートへのアクセス向上のため、助手席のフォールド、スライドが素早くできるように改良されたほか、リヤシート自体も座面跳ね上げ式の40対20対40分割可倒式となるなど、3ドアながら十分ファミリー・ユースに耐えられるスペースユーティリティと、扱いやすさ、動力性能をバランスさせた1台になっている。

敢えてネックがあるとすれば、デビュー当初の90 P300スタートアップエディションの価格が491万2000円だったのに対し、この90 D300が888万円〜という価格設定となっていることだが、2.0リッターガソリンのP300自体の価格が759万円に上がっていることを思えば、致し方ない……のかもしれない。

いずれにしろ、ライバルはもちろんのこと、既存のランドローバー各モデルのオーナーも決してスルーすることができない、強力なコンペティターが現れたことは確かなようだ。

REPORT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
PHOTO/神村 聖(Satoshi KAMIMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2024年 1月号

SPECIFICATIONS

ランドローバー・ディフェンダー 90 Xダイナミック HSE D300

ボディサイズ:全長4510 全幅1995 全高1975mm
ホイールベース:2585mm
車両重量:2330kg
エンジン:直列6気筒DOHCターボ
総排気量:2993cc
最高出力:221kW(300PS)/4000rpm
最大トルク:650Nm(66.3kgm)/1500-2500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):255/65R19(8J)
車両本体価格:955万円

【問い合わせ】
ランドローバーコール
TEL 0120-18-5568
https://www.landrover.co.jp/

今回燃費をテストしたランドローバー ディフェンダー110 X D300。3.0リッターディーゼルを搭載する110モデルの最高峰だ。

人気SUVディフェンダー110のディーゼルモデルは燃費がいい? 665kmを走って本当のところを確かめた

電動化の波に押されて逆境の続くディーゼルモデル。大型モデルなら大トルクを活かした燃費に優れつつもスムーズな走りは大きな魅力である。ランドローバーの人気SUV「ディフェンダー110」のディーゼルモデルを665km走らせて、あらためてその実力を数値で評価した。

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藤原よしお

クルマに関しては、ヒストリックカー、海外プレミアム・ブランド、そしてモータースポーツ(特に戦後から1…