「トヨタ クラウン」新ラインナップのセダンとスポーツに試乗

セダンとスポーツが新たにラインナップに加わった「トヨタ クラウン」に試乗して決めた選ぶべきパワートレイン

4つのバリエーションを展開すると発表されているクラウン。既に発売されているクロスオーバーに加え、セダンとスポーツが新たにラインナップに加わった。個性的なデザインが話題だが、その中身や走りも各車種の個性が強烈に表れている。(GENROQ 2024年2月号より転載・再構成)

Toyota Crown Sedan/Sport

最も保守的な立ち位置のセダン

全長5m超えのボディ。ノッチバック風のデザインだが、ハッチではなく通常トランクを持つ。

ドラスティックなデザイン変更だけでなく、バリエーションを4車種に広げた新型クラウン。すでに発売されて街中でもかなり見かけるようになったクロスオーバーに続き、セダンとスポーツがラインナップに加わった。

まずはセダンだが、これが4車種の中でも最も保守的な立ち位置で、言うなれば従来のクラウンの正当な後継車となる。とはいえそのデザインはかなり先鋭的で、かつてのクラウンとは大きく決別している。ノッチを持たずに傾斜しているリヤ周りのデザインなどは開発段階でも様々な議論があったというが、「新しくなったクラウン」を感じさせる見事なデザインだと個人的には思う。全長5030mm、全幅1890mmという堂々たるサイズもあって日本車離れした雰囲気が漂うが、ここまで大きいと従来のクラウンユーザーから敬遠されてしまうのでは? と余計な心配をしてしまう。

さて、4車種のバリエーションを持つ新型クラウンだが、実は単なるデザイン違いではなく、このセダンだけが唯一FRのプラットフォームを持つのだ。パワートレインは185PSを発揮する2.5リッターの直4を搭載し、さらに180PSのモーターを加えたハイブリッドと、燃料電池による182PSモーターの2種類。燃料電池のシステムは基本的にMIRAIと共通で、高圧水素タンク3本を搭載して満充填で最大820kmの走行距離を実現している。

攻めた外観とフォーマルな雰囲気の室内

縦桟のグリルや20インチのフィンタイプホイールなど、セダンとはいえかなり攻めた印象だが、室内は落ち着いたフォーマルな雰囲気が漂う。ホイールベースは先代より80mmも長い3000mmで、そのためリヤシートも余裕の空間を持つ。ただ、燃料電池仕様とフロアを共有しているためハイブリッド仕様でもセンタートンネルがやたらと大きい。定員は5名だが、実質4名と割り切った方が良さそうだ。

しかし、ひとたび走り出すとそのフロア周りの剛性感の高さに、燃料電池仕様とプラットフォームを共有したメリットを感じる。大柄なボディなのにフロア周りを中心にがっしりとした一体感があり、振動や騒音も極めて少ない。ハイブリッドシステムはエンジンとモーターの出力軸に4段の変速機能を加えてあり、それがまたメリハリのある加速感を生み出している。ハイブリッドでありながら純エンジン車のような走行感覚なので、今までクラウンのV6エンジンを愛用していた人にも素直に受け入れられるに違いない。

燃料電池車(FCV)の方は、当然なのだがとにかく静かでスムーズな走りが際立つ。もっと重々しい走りを想像していたのだが、意外にも軽快なのは驚いた。スペックを見ると重量はハイブリッドが2020kgなのに対してFCVは2000kgと、実はFCVの方が軽かった! しかも重量物がフロアに集中しているためにステアリングの操作に対する上屋の動きもやたらと素直だ。100万円高い価格と水素充填インフラの問題さえなければ、FCVを積極的に選びたくなる。

クラウンの新しい世界を感じさせてくれる

スポーツの方は、セダン以上にアグレッシブなデザインが強烈な印象を与える。スポーツがSUVボディというのは時代の流れだが、その筋肉質なラインは確かに躍動感に溢れている。特にリヤフェンダーの盛り上がりなどはトヨタ車らしからぬと言っては失礼かもしれないが、この姿カタチでノーズにクラウンの王冠エンブレムが装着されているのは違和感というか、面白いことは間違いない。

こちらはクロスオーバーと同じFFプラットフォームだが、ホイールベースが80mm、全長は210mmも短くなっているのでとにかく軽快な身のこなしが印象的。クロスオーバーやセダンに対して確かに最もスポーティであり、あらゆる意味でクラウンの新しい世界を感じさせてくれる存在だ。

それぞれが個性的なクラウンだが、そこにはしっかりとクラウンの世界が感じられる。クラウンはもはやトヨタの車種ではなくひとつのブランドとして捉え、そこに4台のクルマがラインナップされている、と考えると腑に落ちる。

REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
MAGAZINE/GENROQ 2024年 2月号

SPECIFICATIONS

クラウン・セダンZ(ハイブリッド車)

ボディサイズ:全長5030 全幅1890 全高1475mm
ホイールベース:3000mm
車両重量:2020kg
エンジン:直列4気筒DOHC
総排気量:2487cc
最高出力:137kW(185PS)/6000rpm
最大トルク:225Nm(22.9kgm)/4200-5000rpm
モーター最高出力:132kW(180PS)
モーター最大トルク:300Nm(30.6kgm)
トランスミッション:4速AT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前後235/55R19(8J)
車両本体価格:730万円

クラウン・スポーツ

ボディサイズ:全長4720 全幅1880 全高1565mm
ホイールベース:2770mm
車両重量:1810kg
エンジン:直列4気筒DOHC
総排気量:2487cc
最高出力:137kW(186PS)/6000rpm
最大トルク:221Nm(22.5kgm)/3600-5200rpm
フロントモーター最高出力:88kW(119.6PS)
フロントモーター最大トルク:202Nm(20.6kgm)
リヤモーター最高出力:40kW(54.4PS)
リヤモーター最大トルク:121Nm(12.3kgm)
トランスミッション:電気式無段
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前後235/45R21(8.5J)
車両本体価格:590万円

【問い合わせ】
トヨタ自動車お客様相談センター
TEL 0800-700-7700
https://toyota.jp

トヨペット・クラウンRS型。

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自動車メーカーは単に商品を売るだけではなく、その歴史やブランドをクルマに載せて売っている。しかし、イメージを確固たるものにする道のりは決して容易ではない。本連載では各メーカーの歴史から、そのブランドを考察する。

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著者プロフィール

永田元輔 近影

永田元輔

『GENROQ』編集長。古典的ジャイアンツファン。卵焼きが好き。愛車は993型ポルシェ911。カメラはキヤノン。