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Bentley Blower Continuation
12台ずつのコンティニュエーションを製造
かつて、ベントレーの「ブロワー」と「スピード シックス」は友好的なライバルとしてレースに参戦。 スーパーチャージャー付き4.5リッター搭載のブロワーは、ティム・バーキン卿のプライベートチームによって準備され、一方のスピード シックスは、1929年と1930年のル・マン24時間レースでベントレーのワークスカーとして優勝を飾っている。
この2台のコンティニュエーション・シリーズの生産と準備は、ベントレーのオーダーメイドとコーチビルド部門であるマリナーのワークショップで実施。今回、すべてのカスタマー向けブロワー コンティニュエーションが完成し、納車されたことを受けて、マリナーは2番目のコンティニュエーション・プロジェクトへと移行することになった。
最初に製造されたれた2台(エンジニアリング車両0号車とファクトリーワークス)のスピード シックスは、今後数ヵ月におよぶテストプログラムに入った。マリナーは、4.5リッター直列4気筒スーパーチャージャーを搭載するブロワー コンティニュエーションと6.5リッター直列6気筒を搭載するスピード シックス コンティニュエーションをそれぞれ12台ずつ生産する。
2020年から、マリナーのエンジニア、職人、技術者からなるプロジェクトチームは、英国のスペシャリストやサプライヤーと緊密に協力。世界初の戦前車のコンティニュエーション・シリーズのプログラムを立ち上げた。その反響は凄まじく、何万時間にもおよぶ開発プロセスを経て、現代の法規に準じるための小変更を除き、1930年当時のオリジナルとまったく同じ姿で販売される。
オーナーそれぞれの希望に沿った仕様に
2023年末、最後の「ブロワー コンティニュエーション」のカスタマー仕様が納車された。多くが伝統的なベントレーレーシングカラーのネイピアグリーンを選択するなか、1920年代後半のベントレーオーナーが選択可能だったオリジナルカラーを選択したカスタマーもいたという。オーナーは現行ベントレーと同様にパーソナルフィッティングサービスの一環として、自分の好みの仕様を細かく設定することができる。
ブロワー コンティニュエーションは、厳しいテストと検査プログラムに合格し、ヒストリック・テクニカル パスポートを取得。FIA公認のヒストリックカーイベントにも出場することも可能だ。実際、2023年7月にはベントレーワークスが所有する0号車が、ル・マン・クラシックに参戦するため、フランスのサルト・サーキットに登場している。
あえて当時の性能を再現した「スピード シックス」
コンティニュエーション・シリーズ第2弾「スピード シックス」の製造に向けた取り組みも本格化。今回、ベントレーが所有しているスピード シックス 「GU409」と、1930年のル・マン24時間レースでサミー・デイヴィスとクライヴ・ダンフィーがドライブしたワークスカーのスピード シックス「オールド ナンバー3」がマスターモデルとして採用された。
「オールド ナンバー3」は、マリナー・クラシック・チームに寸法/素材/部品/ネジ/ナット/ボルトに至るまで貴重なデータを提供するため、オーナーがベントレーに貸与。また、W.O.ベントレーメモリアル財団(W.O. Bentley Memorial Foundation)からは、当時のチームが使用したオリジナル図面やメモの80%が提供されている。また、今回のコンティニュエーション・シリーズには1929年と1930 年のル・マンに向けて、信頼性とパフォーマンスを向上させるためにベントレーワークスが施した改造も含まれているという。
マリナー・クラシック・チームは、英国・ハンプシャーのビューリーにある国立自動車博物館を訪れ、購入者に提供される5種類のオリジナルペイントを確認。エンジンブロックの鋳造を含め、600個以上の新しいパーツが、6.5リッター直列6気筒レース用エンジンのために製造された。
最初のダイナモテストにおいて、コンティニュエーション・シリーズ用エンジンが、205PS以上を発揮することが確認された。最新のエンジニアリング素材を使うことで、より高い出力を達成することも可能だが、今回のコンティニュエーション・シリーズの開発チームは、1930年の内外装と性能を持ったベントレーを製造することにあっという。
3万5000kmにもおよぶ実走テストを実施
マリナーはすでに、開発用の0号車とファクトリーワークスの2台のスピード シックス コンティニュエーションを、現代的な技術と伝統的なコーチビルドの技術を織り交ぜながら製造した。
コンティニュエーション・シリーズ・プログラムの目的のひとつに、貴重な製造技術を次世代へと継承することにあった。マリナーの工場では数十年の経験を持つ熟練職人が若い見習い職人と働いており、今回の機会が熟練職人の育成に活用されている。スピード シックスのカスタマー仕様は、1台あたり10ヵ月かけて製造され、2025年後半からデリバリーが開始される予定だ。
2023年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでの公開後、スピード シックスの0号車は、8000kmのサーキット走行を含む、3万5000kmの実走行テストに入った。テストでは、時間とスピードを少しずつ上げてゆくインターバル方式により、最も厳しい条件下において機能性や耐久性がチェックされる。
テスト期間中、購入者はスピード シックスの「ファクトリー・ワークス」を使って、パーソナル・フィッティング・サービスを行う。シート位置を含めて、自身のモデルのステアリングを握って快適にコントロールできるよう、調整される。