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FORMULA E
ジャガー製パワートレインの速さ
1月13日(土)に行われた第1戦は、メキシコの首都メキシコシティが舞台となった。フォーミュラ1(F1)グランプリも開催される「エルマノス ロドリゲス サーキット」と、その内側にある野球場の一部を繋いだ1周2kmのコースで「シーズン10」が開幕した。
FEでは通常、予選から決勝までを1日で行う。現地時間9時40分(日本時間1月14日0時40分)から始まった予選では、「Jaguar I-Type 6」パワーユニットを搭載するマシンが昨シーズンからの好調をキープし、「ジャガーTCSレーシング」のミッチ・エバンスとニック・キャシディ、サテライトチームである「エンビジョンレーシング」のセバスチャン・ブエミ、ロビン・フラインスの4名が揃って予選の第1セッションを通過した。
一方、苦戦が目立ったのはポルシェ勢だ。昨年ドライバー王座に輝いたジェイク・デニス(アンドレッティ フォーミュラE)をはじめ、同チームのノーマン・ナトや「タグ・ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム」のアントニオ・フェリックス・ダ・コスタは後方に沈んだ。そんな中で気を吐いたのは、このコースを得意とするウェーラインだ。前日に行われたフリープラクティスから速さを見せ、予選でもジャガー勢を抑えてポールポジションを獲得した。
孤軍奮闘のウェーラインがポール・トゥ・ウィン
現地時間13時にスタートした決勝レースでは、ウェーラインが順調なスタートを切ってレースをリード。後続を寄せ付けない走りでトップチェッカーを受けた。ブエミとキャシディが続き、ジャガー製のパワートレインは2人のドライバーを表彰台に押し上げた。
ブエミのチームメイトであるフラインスは9周目のアクシデントで戦列を去ったが、ジャガーワークスのもうひとりであるエバンスは5位入賞を果たした。昨シーズンから続くジャガー勢の好調さと、それに挑むウェーラインの速さと強さが印象に残る開幕戦となった。
世界10ヵ国を転戦し日本にも初上陸
今年で10シーズン目を迎えたFEだが、最大のニュースは日本での初開催だろう。東京の「東京ビッグサイト」を中心としたお台場周辺のベイエリアで3月30日に予選と決勝レースが行われる。ワークス参戦している「ニッサン フォーミュラEチーム」にとっては、初のホームレースになる。
ドライバーのサッシャ・フェネストラズは、2019年に全日本F3選手権でチャンピオンを獲得。スーパーGTやスーパーフォーミュラでも活躍し、日本に縁のある選手のひとりだ。また、ニッサンのパワートレインは「マクラーレン フォーミュラEチーム」にも供給されているなど見どころは多い。
1月26〜27日に行われる第2/3戦サウジアラビアの後、3月16日のブラジル戦を経て今シーズンの第5戦として東京にFEがやってくる。その後、海を渡るとイタリアのミサノで2レース、モナコで1戦、ドイツのベルリンでダブルヘッダーを行う欧州ラウンドに突入。さらに中国(上海)とアメリカで2戦ずつを終えた後、最終戦は7月21日にロンドン市内で行われる。
合計10ヵ国でダブルヘッダーを含めた全16戦が行われるFEは、ワールドチャンピオンシップ、つまり世界選手権の名にふさわしいシリーズと言えるだろう。世界王座を目指すドライバーとチームの争いは、今年もジャガーとポルシェのバトルになるのか? ニッサン勢が母国のレースをきっかけにトップ争いにくい込んでいけるのか? 注目したい。
次世代のクルマ開発に向けた「実験室」
FEでは、モーター、インバーター、減速機から構成されるパワートレインの独自開発が認められている。ジャガーやポルシェ、ニッサンだけでなく、DSオートモビルやマヒンドラなど各自動車メーカーがしのぎを削っている。他のコンポーネンツはワンメイクだが、回生用のフロントモーターやバッテリー、充電システムなど、クルマの電動化に欠かせない技術の開発はサプライヤーによって進められている。 今シーズンは、決勝レース途中のバッテリー(再)充電も予定されており、電気自動車(EV)の効率向上に向けて、「走る実験室」としても貢献しているであろうFEには、次世代のモータースポーツとして注目したい。