ETCのセキュリティ規格の見直しに伴い、古い機種が使用できなくなる

ETCは、全国各地の高速道路、自動車専用道路などに設置されている。
ETC車載器にカードを挿し込んでいる写真
ETCは、通勤や旅行等で高速道路を利用するドライバーにとっては欠かせない。

日本におけるETCの本格導入は2001年から始まり、以降、対応車載器と専用レーンの普及が急速に進んだ。当初は一部の高速道路に限られていたが、2025年現在では、全国の高速道路や有料道路の大部分で利用可能となっている。

このシステムは、料金所での現金支払いを不要とし、交通流のスムーズ化に大きく寄与してきた。ETCは、今や多くのクルマに欠かせない装備だ。しかし、2007年以前に発売された一部のETC車載器は、今後使用できなくなるおそれがある。

2030年のイメージ画像
「ETCの2030年問題」とは、2007年以前に発売された一部のETC車載器が、今後使用できなくなるおそれがあるというものだ。

これは、「ETCの2030年問題」と呼ばれるもので、国土交通省および関係機関が進めているセキュリティ規格の見直しに伴うものである。そして、これにより一定年数が経過した旧式モデルが、新たなセキュリティ要件に適合しないと判断され、使用できなくなるというわけだ。

主な対象は、2007年以前に製造・販売された旧セキュリティ規格のETC車載器であり、順次ETCサービスから除外されると見込まれている。では、いったいなぜセキュリティ規格が見直されているのだろうか。

その背景には、セキュリティ強化の必要性がある。そもそも、ETCは料金収受だけでなく、個人情報や走行データといった機密性の高い通信をおこなう。そのため、旧規格のままでは不正アクセスや情報漏洩といったリスクが高まるという判断が下されたというわけだ。

なお、類似する課題として「ETCの2022年問題」も挙げられる。これは2022年以降、ETCの運用に必要なセンター設備の一部更新により、さらに古い規格のETC車載器が使えなくなったケースである。

ただし、2022年問題は影響範囲が比較的限定的であったのに対し、2030年問題はより広範囲のユーザーに影響が及ぶとされている。これらの問題は、ETCを日常的に利用しているドライバーにとって、決して他人事ではない。

ETC2.0への早期交換が推奨される

ETC2.0の写真
「ETCの2030年問題」対策として、ETC2.0への交換、アップデートが推奨されている。

では、「ETCの2030年問題」には、どのような対策を講じればよいのだろうか。もっとも現実的かつ有効な対策とされているのが、新セキュリティ規格に対応したETC車載器への交換である。

すでに主要メーカーからは、現行のセキュリティ基準に適合したETC車載器が多数ラインナップされている。特に、ETC2.0対応機種は高度な通信機能を備えており、渋滞情報や安全運転支援情報の提供といった付加価値も享受できる。また、交換費用については、機種や設置工賃によって異なるものの、おおよそ1万〜3万円台が目安とされている。

ETC車載器の写真
今後もETCを使い続けたいのであれば、「ETC2.0」へのバージョンアップが必要になるだろう。

車載器の交換にあたっては、新しい車載器に対する再セットアップが必要となるため、所定の登録事業者に依頼することが必須。2030年以降の新しいセキュリティに対応しているかどうかは、「車載器管理番号」を見れば確認可能だ。

国土交通省が公開している資料によれば、車載器管理番号は取扱説明書や保証書で確認できるという。
そして、車載器管理番号は19桁の数字で構成されているが、新旧セキュリティかどうかの確認には、1桁目のみを見ればいい。

車載器管理番号の1桁目が「1」の場合、新セキュリティに対応していることを示している。一方、1桁目が「0」のものは旧セキュリティ規格であり、2030年以降は使用することができないというわけだ。

自分の車載器が対象となるかを調べ、必要に応じて計画的に交換を進めておくことで、将来の利用制限やトラブルを未然に防ぐことができるのだ。

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料金所での停車を避けられるだけでなく、割引制度の適用もあるETCは、高速道路をスムーズに利用するために欠かせない。しかし、今後もETCを使い続けたいのであれば、「ETC2.0」へのバージョンアップが必要になる。

ETC2.0は、現行のETCよりも高度な通信機能を備えており、渋滞回避支援や安全運転支援など、ドライバーにとって有益な情報を提供してくれる。バージョンアップには多少の手間がかかるとはいえ、今後もETCを利用するのであれば、しておいて損はないはずだ。