修復歴と事故歴の“落とし穴”

修復歴とは、車のフレーム部分や構造部品に交換・修理が施された履歴を指す。たとえば、フレームのゆがみやドア骨格の交換があった場合には、修復歴ありとされる。
一方で、フェンダーやドアの擦り傷、ガラスの交換といった外装の損傷は、たとえ修理されていても修復歴には含まれない。そのため、外観はきれいで「修復歴なし」と表示されている車でも、実際にはボディやガラスまわりに深刻な修理が施されている可能性がある。
中古車販売業者には、修復歴がある車両に対して表示義務が課されているが、事故歴全般についての開示義務は法律上定められていない。当て逃げや単独事故、あるいはエアバッグが展開されたような事例であっても、それがフレーム修理を伴わない限り、「修復歴なし」として販売されることがある。
つまり、見た目が整っていても、過去に重大な事故を経験した車両が“無事故車”として市場に出回っている可能性は否定できない。
賢い買い手のチェックポイント
中古車選びで最初に意識すべきは、「車両履歴の確認」を怠らないことだ。事故歴の有無を把握するには、オークション記録や整備履歴など、車の過去を示すデータが重要な手がかりになる。これらの情報は、修復歴の有無だけでなく、具体的にどのような損傷があったのかを知るうえでも有効だ。

加えて、JAAA(NPO法人日本自動車鑑定協会)や中古車検査専門のAISといった第三者検査機関による車体チェックは、購入時の信頼性を高める強力な材料になる。フレームや骨格へのダメージは外観では判断がつきにくく、こうした専門機関の評価を利用することで、より正確な車両状態の把握が可能となる。
さらに、販売店への積極的な質問も欠かせない。「修復歴はありません」と言われた場合でも、「事故歴はありますか?」と重ねて尋ねることで、販売側の姿勢や誠実さが垣間見えることがある。言葉を濁すような返答があれば、その車について慎重に検討し直すきっかけとすべきだ。
今後は、中古車市場の透明性向上に向けて、「事故歴」の開示を義務づける制度が検討される可能性もある。あわせて、車両履歴の電子管理が広がれば、購入者がより詳細な情報へアクセスできる時代が到来するだろう。
現時点では、事故歴の告知は法的に義務化されていない。だからこそ、消費者自身が履歴を見極める目と、確認の手段を持っておくことが、納得のいく中古車選びには欠かせない。
「修復歴なし=安心安全」という等式は、もはや通用しない。告知制度の整備が進む兆しがある今、自ら履歴を確認し、検査機関を活用する姿勢こそが、これからの中古車選びにおける“新しい常識”になるはずだ。
