2025年10月から「外免切替」制度が改正される見込み

クルマを運転する外国の女性
「外免切替」とは、海外で取得した運転免許証を、日本の免許証に切り替える制度のことだ。

2025年7月、警察庁は外国免許証からの切替、いわゆる「外免切替」について、新たな方針を示した。具体的には、「外免切替」の際は原則として、住民票の写しによる住所確認を必須とし、観光目的で日本に短期間滞在する外国人には、切替を認めない方向で制度の見直しを進めている。

さらに、筆記試験が10問と簡単なうえに、ホテルで短期滞在中の観光客でも取得できる点も問題視されていた。そして、警察庁は、この制度改正を2025年10月にも実施したいとしている。今後は、一層厳格な本人確認と滞在実態の把握が求められる見通しだ。

では、いったいなぜ「外免切替」の制度が改正される方向へと進んでいるのだろうか。それは、これまでの制度運用に対して、さまざまなデメリットや課題が指摘されてきたためである。そもそも「外免切替」とは、海外で取得した運転免許証を、日本の免許証に切り替える制度だ。

日本の免許がない方が日本で自動車等を運転するための方法(資料:警察庁)
日本の免許を所持していない外国人でも、クルマを運転できることができる(資料:警察庁)
クルマを運転する人
外免切替を利用した外国人が、日本国内の交通ルールに慣れていないのではと指摘されるケースも少なくないようだ。

しかし、この制度は観光などの短期滞在者でも条件を満たせば手続き可能である上に、抜け穴があるとされている。

実際、SNSなどでは「不正取得の温床になっている」「試験の形だけ受けて、交通ルールもわからないまま運転している人がいるのでは」「レンタカーで道をふさがれて怖かった」といった声もみられた。とくに、国内の道路環境や交通ルールに慣れていないまま運転することで、事故リスクが高まるおそれもあるという指摘は根強い。

さらに、一部の国では免許証の取得が簡易的で、実技や学科のレベルが日本と大きく異なるケースも存在するという。このような背景から、警察庁は制度の見直しに着手したというわけだ。

2025年10月からはジュネーブ条約に基づいた発行方法へ

運転免許証のイメージ
2025年10月の制度改正以降、ジュネーブ条約に加盟している国であれば、自国で取得した運転免許証と国際運転免許証を併せて提示すれば、現地で運転が可能になる予定だ。
クルマを運転する男性
今回の制度改正により、外国人による交通事故の抑制と、安全な交通環境の確保が進むことが期待される。

今回の見直しは、安全性と制度の信頼性の両立を図るためのものだ。観光立国を目指す日本において、適正な制度管理と交通安全の確保が一層重要視されていると言える。

そもそも、これまで外免切替が可能だった15か国・地域の免許(現在、制度が変更されている可能性がある)では、滞在期間が短い観光客でも手続き可能なケースがあったという。このため、上述のように「日本の交通ルールをよく理解しないまま運転している人がいるのでは」「無責任な運転が増加するかもしれない」といった指摘や懸念が相次いだ。

こうした状況を踏まえ、警察庁は、切替対象を「日本に住所があり、住民票を提出できる者」に限定する方針を打ち出したのだ。

そして、日本では短期滞在者へも外免切替を認めてきた。しかし、警察庁は15の国と地域を対象に、外免切替の制度について調査したという。これによれば、日本のように、短期滞在者にも外免切替を認めているところはなかったというのだ。

そのため、2025年10月の制度改正後は、観光客には「外免切替」ではなく、国際免許証を通じた運転を求める方針である。国際免許証とは、ジュネーブ条約締結国間で相互に有効となる免許である。

これにより、条約に加盟している国であれば、自国で取得した運転免許証と国際運転免許証を併せて提示することで、現地で運転が可能になるという仕組みだ。

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近年、日本を訪れる外国人観光客の数は増加している。これによりインバウンド効果があらわれている一方で、外国人ドライバーが関与する交通事故も目立つようになってきた。

今回発表された制度改正により、今後はジュネーブ条約に基づく国際運転免許証の活用が基本となる。この措置を機に、外国人による交通事故の抑制と、安全な交通環境の確保が進むことが期待されるだろう。