クロストレック「プレミアムS:HEV EX」

テスト車両はクロストレック。ストロングハイブリッド搭載車としては、フルモデルチェンジしたばかりのフォレスターが人気を集めているが、ストロングハイブリッドモデルではクロストレックが先行した。
「プレミアムS:HEV EX」はS:HEV搭載車の上位モデルであり、全クロストレックでもトップグレードになる。燃費については後述するが、基本スペックは以下の表のとおり。
| グレード | Premium S:HEV EX |
| 全長 | 4480mm |
| 全幅 | 1800mm |
| 全高 | 1575mm |
| 室内長 | 1930mm |
| 室内幅 | 1505mm |
| 室内高 | 1200mm |
| 乗員人数(名) | 5 |
| ホイールベース | 2670mm |
| 最小回転半径 | 5.4m |
| 最低地上高 | 200mm |
| 車両重量 | 1660kg |
| パワーユニット | 2.5L水平対向4気筒DOHC直噴 + 2モーター[e-BOXER(ストロングハイブリッド)] |
| エンジン最高出力 | 118kW(160ps)/5600rpm |
| エンジン最大トルク | 209Nm(21.3kgm)/4000-4400rpm |
| 燃料(タンク容量) | レギュラー(63L) |
| モーター型式・種類 | MC2・交流同期電動機 |
| モーター最大出力 | 88kW(119.6ps) |
| モーター最大トルク | 270Nm(27.5kgm) |
| バッテリー | リチウムイオン電池 |
| 電池容量 | 4.3Ah |
| 燃費(WLTC) | 18.9km/L |
| トランスミッション | リニアトロニック(CVT) |
| ステアリング | ラック&ピニオン |
| サスペンション | 前:ストラット式独立懸架 後:ダブルウィッシュボーン式独立懸架 |
| ブレーキ | 前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク |
| タイヤサイズ | 225/55R18(オールシーズンタイヤ) |
エンジンも含め搭載されるストロングハイブリシステムはフォレスターと同様だが、車重が軽いためか(フォレスター:1730kg〜1780kg)WLTCモード燃費のカタログ値はやや良い(フォレスター:18.4km/L〜18.8km/L)。

車両本体価格は405万3500円にメーカーオプションの本革シート(グレー)とアクセサリーコンセント(AC100V/1500W)の15万4000円が加わって424万500円となっている。
このクロストレックS:HEVが満タンで本当に1000km走れるのか、実際に走らせて確かめてみる。
カタログ燃費18.9km/L(WLTC)×燃料タンク63L=1190.7km

出発前、満タンでの車載燃費計の走行可能距離は1260kmと表示されている。しかし、カタログ値でのWLTCモード燃費は18.9kmで、これにカタログ値の燃料タンク容量63Lを掛けると1190.7kmになるので、カタログ値以上の実燃費で走らせないと1260kmには到達しない。車載燃費計がどのように計算しているのか気になるところだ。

大阪往復……ルートは?
試乗コースは大阪往復。通常なら新東名高速道路(以下、新東名)を往復するところだが、あえて往復で別ルートをセレクト。

往路は中央自動車道(以下、中央道)から名神高速道路(以下、名神)、復路は新名神高速道路(以下、新名神)から新東名のルートを採った。起伏の多い中央道まわりで燃費がどうなるのかが気になったし、燃費を測るのに多彩な条件を試してみたかったというのもある。

なお、今回は「SIドライブ」は「I」のみで走行している。「S」を使うことでどれくらい変化するかも気になるところではあるが、シチュエーション的に「S」を必要と感じるシーンは少なかった。高速道路と街乗りでは普通に走っている分には「I」で特に不満は感じなかった。

高速道路に乗るまでの市街地燃費は7.9km/Lだが……

スバル本社のある恵比寿を出発し、中央道に乗った永福料金所までは都内の下道で車載燃費計は7.9km/Lを表示。ただし、この時点では走行距離も短くあまりアテになる数字ではないだろう。中央道に乗ってからは数字がぐんぐん伸びて、諏訪湖サービスエリアで確認した際は188km走行して17.3km/Lまで伸びていた。

東京から中央道下りは基本的に上り坂だ。八王子から小仏トンネル、談合坂、笹子トンネル、八ヶ岳と長い登りが続き燃費には厳しい。それだけに、諏訪湖サービスエリアではカタログ燃費には達しなかった。逆に、この先は下り気味になり、燃費的には好転している。





中央道は二車線の上に、工事箇所も多かったことに加え、名神もクルマが多く、比較的ローペースでのアベレージ走行となったのも好燃費につながったようだ。
大阪到着時は595kmで19.2km/LはWLTCモードを上回る

結果として、大阪到着時の走行距離が595kmで、燃費計では19.2km/Lを達成。到着前に大阪市内での撮影で市街地走行があったほか、阪神高速も走行しているが、その影響はあまりなかったようだ。


WLTCモード燃費は上回ったが、WLTC-H(高速道路)モード燃費には及ばなかった。また、この時点で車載燃費計の走行可能距離は470kmとなっており、無給油での往復は非常に難しい状況だ。中央道まわりは距離的にも長いので、新東名で往復していれば無給油の可能性はあったかもしれない。

大阪での取材と撮影の後は時間的制約もあり、復路は最短ルートとなる新名神と新東名をセレクト。ただし、新東名へは名神の事故渋滞を避けて京滋バイパスを使用している。

新名神の鈴鹿パーキングエリアで確認した際は走行距離が724kmで、燃費計は18.5km/Lとなっていた。この時点での走行可能距離は260kmで、東京までは約370km。燃費計上でも100kmほど航続距離が足りない。燃費が往路より下がっているため、やはり無給油で帰れる可能性はほぼない。


走行距離は1007km!燃費は18.2km/Lを達成

1000kmを前にして残燃料警告が表示された。高速道路上でのガス欠というリスクを避けるため、その時点での最寄りの足柄サービスエリアで給油。走行距離は1007.7kmで、燃費計走行可能距離は30kmを残していた。とはいえ、スタート時に甘めに出ていたことを考えるとかなりギリギリだったのではないかと思われる。

カタログ燃費での航続距離が1190.7kmであるのに対し、実走行距離は1007.7km。残りの走行可能距離を加えたとして1037.7km。理論値に対してそれぞれ約84.6%と約87.1%の達成率となった。
燃費は車載燃費計で18.2km/Lを記録。WLTCモード燃費に対する達成率は約96.3%。今回は高速道路走行が大半を占めたので、WLTC-H(高速道路)モードなら92.3%となる。復路の新東名高速道路は120km区間もあり、燃費は往路より悪化した形だ。
| 燃費モード | カタログ値 | 達成率 |
| JC08モード | 22.7km/L | 80.0% |
| WLTCモード | 18.9km/L | 96.3% |
| WLTC-L(市街地モード) | 15.4km/L | ー |
| WLTC-M(郊外モード) | 20.6km/L | ー |
| WLTC-H(高速道路モード) | 19.7km/L | 92.3% |
結果として、スバル・クロストレックS:HEVは実航続距離1000kmを達成することができた。今回はルート的にもペース的にもそれほど燃費に気を遣った設定ではなかったにも関わらず1000kmを達成できたので、燃費走行に徹すれば理論値(1190.7km)や、燃費計表示値(1260km)、無給油での大阪往復(新東名-新名神の最短ルートで約960km)も実現できたかもしれない。

ハイブリッド車は電池を搭載する関係で燃料タンク容量がエンジン車に対して少なくなっていることが多い。そのため、燃費は良くとも思いのほか航続距離が長くないことがある。ディーゼル車は燃費の良さと燃料タンク容量で航続距離が1000kmを超えることも珍しくない。それだけに、クロストレックS:HEVがハイブリッド車として航続距離1000kmを達成したのは、ひとつの目安として非常に大きいと言えるだろう。

いずれにせよ、スバルのストロングハイブリッドは、燃費としてはようやく他社ハイブリッド車に並ぶところまで来たのではないだろうか。S:HEVを選ぶのであれば、これで燃費を理由にスバル車を諦める必要は無くなったわけだ。



