2025年8月の軽自動車新車販売台数ベスト10
全国軽自動車協会連合会が公表した、2025年8月の軽自動車販売台数のトップ10は以下のとおりだ。
| 順位 | メーカー・モデル | 2025年8月販売台数 | 前年同月比 |
| 1位 | ホンダ・N-BOX | 14,936台 | 103.4% |
| 2位 | スズキ・スペーシア | 11,478台 | 102.8% |
| 3位 | ダイハツ・ムーヴ | 10,847台 | 245.0% |
| 4位 | ダイハツ・タント | 6,957台 | 70.1% |
| 5位 | スズキ・ハスラー | 5,633台 | 88.3% |
| 6位 | スズキ・アルト | 4,701台 | 99.1% |
| 7位 | スズキ・ワゴンR | 4,454台 | 79.4% |
| 8位 | 日産・ルークス | 3,872台 | 80.9% |
| 9位 | 三菱・デリカミニ/eK | 3,616台 | 83.5% |
| 10位 | スズキ・ジムニー | 3,586台 | 123.4% |
なぜダイハツ「ムーヴ」は前年同月比245%まで伸びたのか

ダイハツ「ムーヴ」がこれほどの販売実績を記録したのには、いくつかの要因がある。ひとつめの理由は、2025年6月5日に行われたフルモデルチェンジだ。発売直後に積み上がった受注と生産の安定化が、8月の販売台数に本格的に反映されたとみられる。
次にユーザーが求める仕様になっている点も見逃せない。7代目となる新型ムーヴは毎日使うことを想定した設計で、ユーザーの困りごとを解消した。
「毎日頼れる堅実スライドドアワゴン」という明確なコンセプトのもと、シリーズで初めてリアスライドドアを採用。狭い駐車場でもドアの開閉が容易で、子どもの送迎や高齢者の乗降を助ける実用性が高い。
またN-BOXやスペーシアなどのスーパーハイト系ほど車高は高くないが、必要十分な室内の広さを確保した。背が低めなぶん横風に強く、洗車機や立体駐車場も利用しやすいという日常メリットがある。
さらに販売戦略も奏功した。1.0Lクラスで需要の多い自然吸気+CVTをはじめ、ターボ(RS)や4WDまで幅広く用意。価格も135万8,500円から202万4,000円までと、装備とコストのバランスが取りやすい設定になっている。こうした利便性の刷新と価格戦略が、ムーヴの販売を大きく押し上げた要因だと考えられる。
軽自動車市場全体の見立て
軽自動車市場は、全体の販売台数が前年を下回る結果となった。ただし、新型車効果のあるモデルや、装備の最適化を進めた車種は販売を伸ばしている。
ランキング上位には、ホンダ「N-BOX」、スズキ「スペーシア」、ダイハツ「ムーヴ」「タント」といった背の高い実用ワゴンが並んだ。送迎・買い物・レジャーといった日常シーンでの使い勝手が重視されており、小さな車体サイズで広い室内空間を実現することが選ばれる大きな理由となっている。
一方で、スズキ「ジムニー」のような趣味性の高い車も需要を確実に取り込み、前年同月比123.4%と好調を維持した。悪路や雪道に強いといった明確な個性が、アウトドア志向や地方ユーザーに支持されている。
さらに2025年は、電動化モデルの存在感が増していく年でもある。すでに日産「サクラ」や三菱「ekクロスEV」が市場に浸透し始めているが、9月にはホンダが軽EV「N-ONE e:」を投入した。当モデルは日産「サクラ」よりも一充電走行距離が長く設定されており、補助金を活用すればガソリン車と競合できる価格帯まで迫る。
「燃費や利便性で選ぶ実用ワゴン」と「環境性能で選ぶ電動モデル」という二つの軸が交錯するなか、軽自動車市場には思わぬ波乱が起きるかもしれない。