歴代の連続性を踏まえて、現行で更新された“モテ”の方程式

2025年9月15日にホンダから新型「プレリュード」が発売された。久々の復活にSNSやメディアは大きく反応し、懐かしさと新しさの両方で話題を集めた。
だが注目すべきは、見た目や名前だけではない。過去から続く「スタイル」「技術」「身近さ」という3つの要素が、今のモデルにも息づいている点である。
まずは、そのスタイルについてだ。

プレリュードといえば、どの時代でも低く構えたフォルムと流れるようなラインが特徴である。初代から続くロングノーズショートデッキの姿勢は、2代目でより低く洗練され、4代目ではワイドアンドローの迫力を得た。
そして、今回のモデルもその流れを受け継ぎ、低いフロントノーズと抑揚のあるサイドラインで伸びやかな印象を作り出している。
また、ライト形状やブルーのアクセントカラーも印象的で、かつて街で振り返られた“プレリュードらしさ”が現代的に表現されている。
次に、技術の進化だ。

1980年代の3代目は、世界で初めて「舵角応動タイプ4WS(四輪操舵)」を採用した。これは前輪の舵角に応じて後輪の向きを機械的に制御する仕組みで、低速時は前輪と逆方向に、そして高速時は同方向に動かすことで、安定性と小回り性能を両立した画期的な技術だった。
そして、その結果として、プレリュードは「4輪で曲がるクルマ」として世界中の注目を集めた。
さらに1990年代の5代目では、左右の前輪トルクを自動で配分する「ATTS(アクティブ・トルク・トランスファー・システム)」を採用。旋回時に外側のタイヤへより多くの駆動力を送り、自然なコーナリングと鋭い回頭性を実現した。
これにより前輪駆動車でありながら後輪駆動のような旋回感覚を実現し、走行性能の限界を大きく広げたのである。
そして今回の新型では、ハイブリッドシステム「e:HEV」にHonda S+ Shiftを組み合わせ、モーター駆動ながら段付き変速のような加速フィールを実現している。
さらに、「TYPE R」と共通のシャシーを専用チューニングし、デュアルアクシスストラットやアダプティブダンパーで走りの質を高めた。技術が時代ごとのプレリュードを象徴してきた流れは、今も確かに続いている。
そして最後は、その“身近さ”だ。
1980年代のプレリュードは手の届く価格帯で、憧れと現実の間にある存在だった。また、3代目の月販計画は4000台と現実的で、多くの若者が現実的に狙える“モテグルマ”でもあった。
今回の新型モデルは税込617万9800円と、価格としては高価な設定だが、Honda ON限定カラーやレンタカー展開など、購入前に実際に触れるきっかけを増やす仕組みが整えられている。
このような「買う前に体験できる」という現代のアプローチは、かつて街で見かけることで憧れを育てた時代の“出会い”を、別の形で再現していると言えるかもしれない。
こうして見ると、プレリュードの魅力は時代によって形を変えながらも、基本構造は変わっていないように感じられる。スタイルはより上質に、技術はより体験的に、そして身近さは接点設計という形で受け継がれている。
初代から積み重ねてきた“少し先を行く”存在感は、今のプレリュードにも確かに息づいているのだ。つまり、“モテグルマ”というのは実質的に終わっておらず、かつての「手の届く最新感」から「所有する満足感」へと価値の軸が移行しているといえる。
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形は変われど、プレリュードが放つ魅力の本質は今なお続いている。プレリュードはつねに時代の半歩先を示し続ける存在であり、その意味での“モテ”は静かに継続しているといえそうだ。

