【数字に宿る「縁起」へのこだわりが、ナンバー選びに影響している】

街中で走るクルマを眺めていると、「4」を使用したナンバーが少ないことに気づく人も多い。とくに「42」や「49」といった組み合わせは避けられる傾向が強く、販売店でも希望番号の申し込み時に相談を受けることがあるという。
この背景にあるのは、日本人が古くから抱いてきた「数への感情」である。日常生活の中でも「4階を省くマンション」や「病室番号に4がない病院」は珍しくない。その理由は、「4」という音が「死」と同じ読みであるため、無意識に不吉と感じる心理が働くからである。
この語呂合わせ的な連想は、古くから人々の生活や習慣に入り込み、やがてクルマのナンバー選択にも影響を及ぼすようになった。同様に「9」も「苦」を連想させるとして避けられることが多い。
つまり、数字そのものよりも「響き」がもたらす印象が判断基準になっているのだ。クルマは安全や幸福を象徴する存在であるため、縁起の悪い数字を避ける行動は自然な流れといえる。
そもそも、日本における数の象徴性は、古代から続く文化的な価値観と密接に結びついている。日本では古くから「数」に意味を見出す風習があり、吉凶や運勢を左右するものとして生活に根づいてきた。
たとえば、正月の「一富士二鷹三茄子」という言い回しや、「七五三」の行事など、節目ごとに数字を重んじる風習が今も残っている。このように、日本に根付いてきた数への意識は、現代のクルマ文化にも受け継がれているのである。
しかし、この「数への象徴性」は日本だけのものではない。たとえば、欧米では「13」が不吉とされ、ホテルや航空機で13番が欠番になる例がある。
また、中国や韓国でも、日本と同様に死を連想させる「4」が忌避される傾向があり、建物の階数や座席番号から省かれることが多い。つまり、数字の縁起を意識する行動は国を超えて見られる文化的現象なのである。

とはいえ、日本の陸運局が「4」や「42」の使用を禁止しているというわけではない。希望ナンバー制度において、特定の数字を避けるかどうかはあくまで個人の好みに委ねられている。実際、特に数字にはこだわらないという人も多い。

また、ナンバーの組み合わせによっては「4」が含まれていても人気の番号になることもある。たとえば、「4141(よいよい)」や「4649(よろしく)」など、語呂合わせによってポジティブな意味に転じるケースもあるためだ。
このように、数字に対する捉え方は時代とともに多様化している。忌み数字の意識が残る一方で、語呂合わせのようなユーモラスな使い方も生まれているのが現代の特徴である。
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忌み数字に科学的な根拠はない。しかし、そこには人々の死生観や文化的背景が確かに反映されている。クルマのナンバーにおける「4」忌避は、数字そのものではなく「意味」に重きを置く日本社会の象徴といえるかもしれない。

