実はSUVの原点。2列シートは「基本形」である

今やコンパクトから大型まで流通しているSUV

現在のSUV市場には、3列シートやラグジュアリー装備が充実した仕様など、多様なスタイルのモデルを各社ラインナップしている。その中でも「2列シートSUV」が近年存在感を増している。

しかし、「なぜあえて2列なのか」と疑問に思う人も少なくない。一見すると座席が少なく実用性が劣るようにも映るためだ。実は2列構成こそが、SUV本来の姿に近いのである。

SUVの起源をたどると、もともとはオフロード車に由来している。当初のSUVは悪路走破性や積載性を重視して設計され、乗車定員よりも「道具としての実用性」が重視された。

実際、トヨタ「ランドクルーザー」やスズキ「ジムニー」といった初期モデルは、ほとんどが2列シート構成だった。しかし、2000年代に入り、SUVが都市型のライフスタイルカーとして普及していく。

その中で、3列シートのSUVが登場。トヨタ「ハリアー」やホンダ「CR-V」などがその象徴であり、快適性とデザイン性を重視したモデルが主流となっていった。

トヨタのクロスオーバーSUV「RAV4」
クロスオーバーSUV「MAZDA CX-5」

代表的なモデルとしては、マツダ「CX-5」やトヨタ「RAV4」が挙げられる。いずれも公式諸元表で乗車定員5名と明記され、3列目を持たない構成を採用。

これにより広い荷室と操縦安定性を両立し、日常使いからレジャーまで幅広い用途に対応している。

また、スバル「フォレスター」やホンダ「ヴェゼル」、レクサス「NX」なども同様に2列仕様を採用している。これは単なる省略ではなく、走行性能と車体バランスを重視した設計思想の結果である。

3列シートの写真
やはり大人数には3列シートが最適だろう

また、2列シートSUVが走行性能や積載性を重視するのに対し、3列シートSUVは多人数での移動を重視している。マツダ「CX-8」やランドクルーザー、日産「エクストレイル」などは7人乗り仕様を備え、多人数移動に対応する。

しかし、3列目は構造上どうしても足元や頭上空間が制約され、長距離移動では快適性に欠けることも多い。このため、実際には3列目を常用せず、荷室として使うユーザーも少なくない。

様々な理由から2列シートが選ばれ続けている

また、近年では世帯構成の変化も、2列シートSUVが選ばれる背景となっている。共働きや単身世帯の増加により、日常的に7人乗りを必要とする家庭は減少している。

多くのユーザーにとって、5人乗りで十分な実用性を備えたクルマのほうが扱いやすく、維持コストの面でも合理的だ。このような生活スタイルの変化が、2列シートSUVの需要を支えているといえる。

2列シートSUVは、都市部での取り回しや駐車環境を考慮しても、車体をコンパクトに抑えながら十分な積載性を確保できる。シンプルさを求める層にとって、むしろ理想的な構成といえる。

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結論として、2列シートSUVは中途半端な存在ではない。むしろSUV本来の姿であり、走る楽しさと使い勝手を両立させた合理的な選択である。多人数乗車が不要なユーザーにとっては、シンプルで完成度の高いパッケージとして機能していると言える。