JAFの実験で明らかになった「見えない理由」

濃霧が立ち込める道路
霧は、夜間や早朝といった時間に発生しやすく、場合によっては100m先すら視認困難な濃霧が立ち込める場合もある。

秋の行楽シーズンを迎え、早朝の峠道や郊外を走ると霧に出会う機会が増える。とくに、霧は気温差が大きく湿度が高い朝方や夜間に発生しやすく、視界が奪われるとわずかな判断の遅れが事故に直結するため注意が必要となる。

JAFによると、霧とは大気中に微小な水滴が浮遊し、水平視程が1km未満になる現象のことを指す。そして、このうち視程が100m未満の場合を「濃霧」と呼ぶ。

内陸部では秋、高地や北部では夏に多く、山間部や盆地、河川沿いなどはとくに発生頻度が高い傾向があるという。

では、霧の中で運転する際、事故を起こさないためにどのように走行すればよいのだろうか。

市街地の濃霧
霧や濃霧の中では視界が著しく悪化し、事故の原因になる場合がある。
辛うじて見える濃霧内の車両
普段ならはっきりと視認可能な距離でも、霧の中ではテールランプが少し目立って見える程度にしか見えない。

JAFは「ユーザーテスト」において、視程30mと60mという濃霧の条件で、停止車両や歩行者の見え方の検証をおこなった。

その結果、ハイビーム(上向き)は霧の粒子に光が反射して白くかすみ、前方が見えにくくなる傾向が確認された。

一方、ロービーム(下向き)では前方の車両を比較的早く視認できたという。また、リアフォグランプを点灯している車両は、無灯火やテールランプのみの車両よりも早い段階で確認できた。

さらに、ブレーキランプを点灯させた状態で停止している方が、後続車からの視認性が大幅に向上した。

一方、歩行者の場合、昼間は白い服が霧に溶け込み、夜間は黒い服が闇に紛れて見えづらくなった。しかし、反射材付きの安全ベストを着用した場合、黒い服よりも10〜15m手前で確認できたという。

このように、霧の中ではライトの照射方向や被視認性の工夫が安全を大きく左右することが明らかになっている。

JAFは「濃霧時はドライバーだけでなく歩行者も見落とされる危険があるため、反射材の着用を」と呼びかけている。

JAFが示す「霧の中で守るべき行動」

霧が立ち込める、森林の間にある道路
霧による視界不良の中では、先のルートが見通せず、もし倒木などが道路を塞いでいたりしても早期に発見することは難しい。
霧が発生している道路脇からの画像
霧の中での無理な走行は危険なため、安全に駐車できるスペースに避難することが大切である。

こうした実験結果を踏まえ、JAFは霧が出てきた際の走行における具体的な行動指針を示している。

まず、安全に停車できる駐車場やサービスエリアなどが近くにある場合は、無理に走行を続けずに退避することが最優先である。視界が悪い状態で走り続ければ、前方の障害物や停止車両を見落とす危険が高まる。

また、高速道路や一般道の路上での停止は非常に危険であるため、必ず安全な場所に避難しなければならない。そして、停車後はラジオやスマートフォンで交通情報を確認し、霧が晴れるまで待機するのが望ましい。

一方、やむを得ず走行を続ける場合には、ライト操作が鍵となる。JAFは「ハイビームは視界を悪化させるため、必ず下向き(ロービーム)を使用し、必要に応じてフォグランプを点灯すること」と周知している。

さらに、後続車からの追突を防ぐためにリアフォグランプを点け、自車の存在を明確にすることも有効だ。ただし、霧が晴れた後はまぶしさを避けるため速やかに消灯する必要がある。

加えて、走行中は速度を落とし、前走車との車間を十分に確保することが欠かせない。

JAFによると、晴天時よりもはるかに長い距離を保つことが望ましいという。また、高速道路では路肩の白線や視線誘導標(しせんゆうどうひょう)を頼りに進行方向を確認し、窓を少し開けて外の音を聞くのも効果的である。

JAFは「運転技術よりも、無理をしない判断力が安全を左右する」と強調する。視界が極端に制限される中では、技術よりも状況判断のほうが重要であり、発生しやすい時間帯や区間を事前に把握することが事故を防ぐ最大の対策となる。

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え退避・減速・灯火管理を徹底すること。それが、霧の季節を安全に走り抜けるための最も確実な3原則である。

【取材協力:JAF】