基本情報

WRXは、スバルの中でも走行性能を最重視して開発されたスポーツセダンである。ボディサイズは日本の道路事情ではやや大きめだが、その分、高速道路や長距離走行時の安定感は非常に高い。
WRXの中核を成すのが、2.4L水平対向4気筒直噴ターボエンジンとVTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)の組み合わせだ。エンジンの重心が低く、四輪すべてで駆動することで、直線でもカーブでも車体が安定しやすい。加速時やコーナリング中でも姿勢が乱れにくく、路面状況に左右されにくい走りを実現している。
雨天や雪道といった悪条件でも、タイヤがしっかりと路面を捉えるため、運転に不安を感じにくい点も大きな特徴だ。FRやFFのスポーツセダンとは異なり、「速さ」だけでなく「安心して走れる性能」を重視した設計となっている。
さらに、先進安全装備として「EyeSight」を全車に標準装備している点も、WRXの重要な要素だ。加えて、高度運転支援システム「EyeSight X」は一部グレードに設定される。
高い走行性能を備えながら、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能によって日常使用時の安全性も確保されており、スポーツモデルでありながら実用性を犠牲にしていない。
WRX(代表グレード例/WRX S4)
| 項目 | 数値・仕様 |
| 駆動方式 | AWD |
| 乗車定員 | 5名 |
| 全長×全幅×全高 | 4,670 × 1,825 × 1,465mm |
| ホイールベース | 2,675mm |
| 最低地上高 | 135mm |
| エンジン | 2.4L 水平対向4気筒ターボ |
| トランスミッション | CVT(Subaru Performance Transmission) |
| 最高出力 | 202kW(275PS)/5,600rpm |
| 最大トルク | 375N・m(38.2kgf・m)/2,000–4,800rpm |
| 燃費(WLTC) | 10.8km/L |
| 使用燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
| 燃料タンク容量 | 63L |
| 最小回転半径 | 5.6m |
WRXの魅力
走りの安定感と一体感
WRXの最大の魅力は、単純な加速性能の高さではなく、常に安定した状態で速く走れる点にある。水平対向エンジンによる低い重心と、四輪すべてで駆動するAWDの組み合わせによって、車体の動きが大きく乱れにくい。
コーナーに進入した際も、車が急に傾いたり挙動を崩したりすることが少なく、ドライバーの操作に対して自然に反応する。ハンドルを切った分だけ車が素直に向きを変え、加速や減速の動作も一貫して安定している。
アクセルを踏み込んだときの加速は力強いが、扱いにくさは感じにくい。路面が濡れている状況や高速道路での巡航時でも、タイヤがしっかりと路面を捉え続けるため、不安を覚えにくい走りができる。
WRXが評価されてきた理由は、「限界性能の高さ」ではなく、「誰が運転しても安定した速さを引き出しやすい点」にある。速さと安心感を同時に成立させていることこそが、この車の本質的な魅力だ。
日常と両立するスポーツセダン
WRXは、サーキット走行だけを想定した尖ったスポーツカーではない。高い走行性能を持ちながら、後席の居住性やトランク容量も確保されており、日常の移動や家族での使用にも無理なく対応できる。
足回りは引き締まっているが、過度に硬い印象はなく、市街地走行でも不快感を覚えにくい。長距離移動や高速道路での巡航でも安定しており、「走りを楽しめるセダン」としての性格と「普段使いの車」としての実用性が両立されている。
トランスミッションにCVTを採用している点は好みが分かれる部分ではあるが、街中では扱いやすく、渋滞時の運転負荷を大きく軽減してくれる。発進や低速域での操作がスムーズなため、日常使用ではメリットが大きい。
一方で、パドルシフトを使えばドライバーの操作に応じた変速が可能となり、走りを楽しみたい場面にも対応できる。普段は快適に、必要なときにはスポーティに走れる。この切り替えのしやすさこそが、WRXを「日常と走りを両立できるスポーツセダン」として成立させている。
WRXの気になるポイント
サイズ感と燃費
WRXは全幅約1.83mと、一般的なセダンと比べるとややワイドなサイズに分類される。そのため、都市部の立体駐車場や区画の狭い駐車場では、駐車時や出入りの際に車幅を意識する場面が出やすい。
とくに、これまでコンパクトカーや小型セダンに乗っていた場合、車両感覚に慣れるまで時間がかかることがある。ただし、着座位置が低すぎず視界が確保されているため、運転中に極端な扱いにくさを感じることは少ない。
燃費性能については、効率重視の車ではないことを理解しておく必要がある。フルタイムAWDと高出力ターボエンジンを組み合わせた構成上、燃費よりも走行性能と安定性を優先した設計となっている。
日常的な燃料コストは、同クラスのFFセダンやハイブリッド車と比べると高くなりやすい。その一方で、天候や路面状況に左右されにくい安定した走りを得られる点は、WRXならではの価値と言える。
WRX 中古車市場
WRXは中古市場でも安定した人気を維持しており、状態の良い個体ほど価格が落ちにくい傾向がある。とくに走行距離が少なく、修復歴のない車両は需要が高く、相場も比較的堅調だ。
現行型のWRX S4については、年式や走行距離、装備内容によって幅はあるものの、概ね300万円前後から400万円台が中心的な価格帯となっている。新車価格との差が小さい個体も多く、値落ちの緩やかさが特徴と言える。
一方で、過去世代のWRX STIはまったく別枠として扱われている。生産終了の影響もあり、コンディションの良い車両や低走行車では、新車時の価格を上回る例も実際に見られる。単なる中古車というより、希少性を伴う存在として評価されている状況だ。
このため、中古のWRXを検討する際は、「WRX」という名称だけで判断するのは避けたい。現行WRX S4と過去のWRX STIでは性格も市場価値も大きく異なるため、世代やグレードを明確に区別したうえで相場を見ることが重要だ。
WRX 中古車 注意点
中古でWRXを選ぶ際に最も重要なのは、「どのように使われてきた車両か」を見極めることである。WRXは走行性能が高い分、スポーツ走行や高負荷で使われてきた可能性もあり、その影響は車両状態に表れやすい。
まず確認したいのが、定期的なメンテナンスが行われていたかどうかだ。点検記録簿の有無や整備履歴を確認し、オイル交換や消耗品交換が適切なタイミングで実施されていたかを把握しておきたい。管理状態の差は、後々のトラブルリスクに直結する。
とくに注意が必要なのが、タイヤ、ブレーキ、足回りといった消耗部品である。これらは見た目では判断しづらい場合も多く、劣化が進んでいると走行時の安定感や乗り味に大きな影響を与える。購入後すぐに交換が必要になるケースもあるため、現状をしっかり確認しておくことが重要だ。
また、社外パーツが装着されている車両については、その内容を正確に把握したうえで判断する必要がある。吸排気系や足回りの変更は、走行性能に影響するだけでなく、保証や車検対応にも関わってくる。単に「カスタムされているから良い・悪い」と決めつけるのではなく、自分の使い方に合っているかどうかを基準に冷静に見極めたい。
WRXの中古車選びでは、価格や年式だけで判断するのは避けるべきだ。使われ方、整備状況、消耗部品の状態まで含めて確認することで、満足度の高い一台に出会いやすくなるはずだ。
WRX フルモデルチェンジ
東京オートサロン2026のプレスカンファレンスにおいて、スバルは「WRX STI Sport♯」を初公開した。このモデルは、WRXとしては待望されてきた6速マニュアルトランスミッション(MT)仕様であり、多くのスバルファンにとって注目度の高い発表となった。
WRXに6速MTが設定されるのは、現行WRX S4世代では初となる。これに先立ち、ジャパンモビリティショー2025では「パフォーマンスB STIコンセプト」として、FA24ターボエンジンと6速MTを組み合わせたハッチバックモデルが展示されており、量産化の可能性が示唆されていた。その流れを受け、東京オートサロン2026でWRX STI Sport♯として具体的な形が提示された格好だ。
会場で公開された車両は「WRX STI Sport♯(プロトタイプ)」と明記されており、現時点では市販前段階のモデルと位置づけられている。ただし、内外装や装備内容は完成度が高く、市販仕様を強く意識した仕上がりであることがうかがえる。
インテリアにはスエード調素材を用いた加飾が施され、レカロシートを装備。イエローパーフォレーション入りのスエード表皮レカロシートは、過去に設定された「WRX S4 STI Sport “R-Black Limited Ⅱ”」と共通する仕様と見られる。これまで特別仕様車として展開されてきた「Sport♯」シリーズの流れを汲むモデルであることは明確だ。
トランスミッションは6速MTを採用する一方、パフォーマンスB STIコンセプトで装備されていたDCCD(ドライバーコントロールセンターデフ)は搭載されていない。トランスミッション形式についても、現時点では詳細は明らかにされていない。
発売時期については、「2026年春予定」と案内されており、これまでのSport♯シリーズと同様、台数限定での販売が予定されている。販売台数、販売方法については、現時点では未公表とされている。
参考として、東京オートサロン2024で発表された「WRX S4 STI Sport♯」が500台限定だったことから、同程度の規模になる可能性も想定されるが、あくまで未確定情報である。
価格についても正式な発表は行われていない。会場での説明では、従来の「WRX S4 STI Sport♯」に近い価格帯が示唆されたものの、近年の車両価格上昇を踏まえると、623万7,000円だった前モデルより高くなる可能性はある。ただし、800万円クラスのS210ほどの価格帯にはならないと見られており、最終的な設定は今後の正式発表を待つ必要がある。
WRX STI Sport♯は、フルモデルチェンジとは異なる位置づけではあるものの、現行WRX S4世代における大きなトピックであることは間違いない。6速MT仕様の投入は、WRXの今後の展開や、スバルが走りに対してどのような姿勢を取り続けるのかを示す重要な動きとして、引き続き注目したいところだ。
WRX やめとけ?
インターネット上で「WRXはやめとけ」と言われる背景には、いくつか共通した理由がある。主な要因は、燃費性能や維持費、そして全幅約1.83mというサイズ感だ。日常の移動における経済性や取り回しやすさを最優先する人にとっては、性能が過剰に感じられる場面もある。
また、フルタイムAWDと高出力ターボエンジンを備える構成上、購入後の維持コストは一般的なセダンより高くなりやすい。通勤や近距離移動が中心で、走行性能を活かす場面が少ない使い方では、WRXの魅力を十分に享受しにくい点も理解しておく必要がある。
一方で、WRXの本質は、悪天候や高速走行時でも安定した走りを維持できる点にある。路面状況に左右されにくい安心感や、ドライバーの操作に忠実に応える挙動は、他のセダンでは代替しにくい強みだ。
WRXは万人向けの車ではない。しかし、走行安定性や運転時の安心感を重視する人にとっては、非常に完成度の高い選択肢となる。向き・不向きが明確だからこそ、条件が合った場合の満足度は極めて高いモデルと言える。
まとめ
WRXは、単に出力や加速性能を誇るスポーツセダンではない。「安全に、安定して、意のままに走れること」を主眼に開発されてきたモデルであり、その思想は現行型にも一貫して受け継がれている。
フルタイムAWDと水平対向ターボエンジンによる高い走行安定性は、天候や路面状況を問わず、ドライバーに安心感をもたらす。刺激的な演出や派手さよりも、確かな技術に裏打ちされた走りを重視する人にこそ、この車の価値は正しく伝わる。
日常の移動を無理なくこなしながら、走ること自体を楽しめるセダンを求めるのであれば、WRXは今なお有力な選択肢である。流行や一時的なトレンドに左右されることなく、本質的なスポーツセダンとしての立ち位置を堅実に守り続けているモデルだ。
