自動車メーカーにもOEM供給するサスペンションの老舗

カヤバといえばサスペンションの老舗。コンペティション用もチューニング用も多数ラインナップするアフターマーケットはもちろん、自動車メーカーの純正サスペンションもOEM供給する品質を誇る。そんなカヤバが電子制御サスペンションの新製品『ActRide』をリリースした。

カヤバ『ActRide』(ハイエース用)。

電子制御サスペンション自体は古くからあり、クルマによっては純正採用されているケースも多い。斯く言うカヤバも自動車メーカーで純正採用されている。また、アフターマーケットでも電子制御サスペンションは珍しいアイテムではない。

カヤバのショックアブソーバーの構造変遷。

では、カヤバの『ActRide』の魅力はどこにあるのだろうか?

ソレノイド式でシームレスな減衰力調整

サスペンションのセッティングは簡単に言ってしまえば「硬くして車体を安定させるがショックが大きく乗り心地が悪い」と「柔らかくして乗り心地は良いがおさまりが悪く不安定」の間でクルマに最適な落とし所を探ること。セッティングは固定で、状況によって良くも悪くもなる。一方、電子制御サスペンションは減衰力を可変させて、その時に最適なセッティングに合わせることができるようになる。

『ActRide』では、調整機構をこれまで使われてきたステッピングモーター式からソレノイド式に変更。ステッピングモーター式では段数切り替えだったものが、シームレスな調整が可能になっている。

ステッピングモーター式とソレノイド式の違い。
ショックアブソーバーの頂部(車体側)に装着されるステッピングモーター。
ショックアブソーバーの下端横に突き出したソレノイド部。ソレノイド部から出ている黒い部分はハーネスを接続するソケット。
カヤバ『ActRide』(ハイエース用)のカットモデル。
カットモデルのソレノイド部。

ソレノイド式ショックアブソーバーでは伸び側と縮み側で別々のソレノイドを備えるモデルも多いが、『ActRide』はひとつのバルブで調整を行なっている。そのため、ソレノイド部の張り出しがひとつで済んでいる。

6軸センサーによるリアルタイム制御

コントロール部には3つの加速度と3つの角速度を計測する6軸のIMUセンサーを搭載。このセンサーによりクルマの挙動から最適減衰力を算出。ショックアブソーバーの減衰力を調整する。センサーの伝達速度は1ミリ秒(1/1000秒)、センサーの算出から動作までの応答時間は10ミリ秒(1/100秒)程度だそうだ。また、速度についてはスマートフォンのGPSからデータを取得するが、こちらは1秒ごと。

カヤバ『ActRide』のコントローラーはコンパクトにまとめられている。ハーネスも、電源と各ショックアブソーバーへの合計5本のみ。-40度〜60度までの耐温度性があり、寒暖差の激しい車内でも問題ない。

コントローラーは非常にコンパクトで、車内のどこにでも配置できそうだ。とはいえ、車体の動きを検知するセンサーを搭載しているので、車体の重心位置が望ましい。ただ、理想的な重心位置に取り付けられるとも限らないので、初期設定の段階で重心位置と装着位置を補正する必要があるが、それもスマートフォンアプリで設定できる。

OEMの電子制御サスペンションではクルマ側のセンサーを使用するケースがほとんどだが、クルマとの接続はセキュリティ的にハードルが高く、アフターマーケットでの扱いは難しい。そのため、『ActRide』はクルマのセンサーやコンピュータとは接続しない全く独立したシステムになっているという。

スマートフォンアプリで気軽にセッティング変更

『ActRide』はコントロールユニットとスマートフォンアプリをBluetooth接続し、ショックアブソーバーの減衰力を任意に設定できる。とはいえ、自由度が高すぎてもセッティングの迷路に嵌まり込むかもしれない。そこで、「Ride(乗り心地)」「Handling(操縦性)」「Speed Adpt.(車速連携)」の調整でセッティング可能なほか、「コンフォート」「スポーツ」といった推奨セッティングも用意されている。

スマートフォンアプリの画面。

スマートフォンアプリはセッティング変更のほか、ショックアブソーバーの動作状況(減衰指令値)や車体の「G」をリアルタイムで表示する。

まずはハイエース用をリリース

『ActRide』は優れた乗り心地と走りを両立するだけでなく、スマートフォンアプリにより手軽に状況や好みに合わせてセッティングを変更できる電子制御サスペンション。しかも、その高性能・高機能がボルトオン&カプラーオンで装着できるのだ。加えて、アフターマーケット用ながらカヤバのOEM品質……つまり自動車メーカーレベルの品質に仕上げられているから安心だ。

気になる対応車種だが、まずハイエース用からリリースされる。ハイエースはユーザー数も多く、ビジネスユースにプライベートユースにとその用途は幅広く、『ActRide』を活用するにはうってつけの車種。オーナーのカスタム意欲が高いのも選定のポイントとなった。また、人手不足が叫ばれる昨今、自社所有車に『ActRide』を装着して乗り心地が良くなり運転しやすくなれば、ドライバーも安心して働ける、という法人需要狙いもあるそうだ。

トヨタ・ハイエースバン「スーパーGL」。ロングやワイドなど様々なモデルをラインナップするハイエースだが、『ActRide』は全モデルに対応可能。

価格はショックアブソーバー4本(1台分)とコントローラー、ハーネスなどがセットになり26万9500円。対応するハイエースは2004年8月以降の200系ハイエース全車、全グレード。2WDモデルと4WDモデルはそれぞれ別に用意される。スマートフォンアプリはiOSとAndroidに対応する。

カヤバ『ActRide』(ハイエース用)の価格とセット内容。

もちろん、カヤバでは他車種用も鋭意開発中。スポーティ車はもちろんのこと、ミニバンやSUVなどクルマの需要的にサスペンションのセッティングが難しい車種こそ『ActRide』は力を発揮しそうだ。更なる車種展開に期待したい。