真冬の大雪が引き金となった日本の最長154kmの渋滞

日本の最長渋滞記録は、1995年12月27日に記録された154kmだ。

この大渋滞は名神高速道路下り線の秦荘PA(現・湖東三山PA/滋賀県)から東名高速の赤塚PA(愛知県)にかけて発生した。年末の帰省ラッシュという季節的要因に加え、東海地方から滋賀県にかけての予想外の豪雪が重なったことが原因だ。

雪によって各所で通行止めとなり、一般道も雪に覆われて迂回路としての機能を失った。この巨大渋滞が解消されるまでには発生後丸一日の24時間を要したとされる。

世界一の渋滞大国フランスが記録した820kmの驚異

フランス・パリの高速道路渋滞。

世界に目を向けると、2019年8月8日にフランスで記録された820kmという数字が浮かび上がる。これは同国内で同時に発生した渋滞の合計距離だが、日本の最長記録の5倍以上という規模は驚異的である。

この記録的渋滞が発生した背景には、フランス独特の休暇文化がある。8月は多くのフランス人が一斉に長期休暇を取る「グラン・デパール(大出発)」と呼ばれる時期だ。この日は特に45度を超える記録的な熱波も重なり、アスファルトが溶けるなかでの過酷な渋滞となった。

単一都市での渋滞王者はブラジル・サンパウロの344km

都市圏内で発生した渋滞としては、ブラジルのサンパウロが世界最大規模を誇る。

ひとつの都市圏内で発生した渋滞としては、ブラジルのサンパウロが世界最大規模を誇る。2014年5月23日に記録された渋滞は344kmと、日本の首都高速道路の全長を上回る距離だ。この日は金曜日の夕方ラッシュ、連休前の帰省需要に加え、市内の公共交通機関で労働者のストライキが発生していた。それにより、通常でも渋滞が多い同市の道路網が完全に麻痺する事態となったのだ。

サンパウロは急速な都市化と自動車保有台数の増加に対し、道路インフラの整備が追いついていないという問題を抱えている。通常の金曜日でも180~200kmの渋滞が発生するため、市民は独自の対策を講じているようだ。また、2013年にも309kmの大渋滞が記録されており、週末の海岸行きの交通と悪天候が重なったことが原因だった。

アジアの渋滞事情〜ジャカルタ180kmの大混雑

インドネシアの首都ジャカルタの交通渋滞。

アジアでも記録的な渋滞が発生している。インドネシアの首都ジャカルタでは、2013年の旧正月(レバラン)期間中に約180kmの大渋滞が記録された。

イスラム教の断食月「ラマダン」明けの大型連休は、多くのイスラム教徒が故郷に帰省する時期だ。ジャカルタの人口約1,000万人のうち、半数以上が地方出身者であり、この時期に一斉に移動を始める。ところが、公共交通機関が十分に整備されていないため、多くの人々が車やバイクで長距離移動を余儀なくされるのだ。

渋滞大国に共通する問題と今後の展望

世界的な渋滞記録を見ると、いくつかの共通点が浮かび上がる。まず、ほとんどの大規模渋滞は休暇シーズンや悪天候といった予測可能な要因と、事故や突発的な気象変化など予測困難な要因が重なった時に発生している。

また、急速な都市化や自動車保有台数の増加に道路インフラの整備が追いついていないという構造的問題も大きい。特にサンパウロやジャカルタなどの新興国の大都市では、この傾向が顕著だ。

今後は自動運転技術やAIを活用した交通管理システムの発展により、渋滞緩和の可能性も見えてきている。特に車間通信や信号制御の最適化などは、交通流の改善に大きく寄与すると期待されている。また、テレワークの普及により通勤需要が分散され、ピーク時の渋滞が緩和される可能性もある。しかし、人口増加や都市集中が続く限り、渋滞問題の完全な解決は難しいだろう。

私たちは当面、この現代社会の宿命とも言える渋滞と付き合っていかなければならないようだ。