クルマが日焼けすると寿命も短くなる
夏は、日焼けの季節である。そして、それは人間に限った話ではない。クルマもまた“日焼け”する対象といえる。クルマが日焼けする主な原因は、太陽光に含まれる紫外線と赤外線だ。
紫外線はボディ表面にダメージを与え、塗装の劣化や退色、ツヤ引けを引き起こす。これは、紫外線が塗装のクリア層や顔料を分解する作用を持つためで、分子レベルでの変化が色あせや表面の荒れにつながる。とくに、濃い色のボディは紫外線を吸収しやすく、劣化が早く進行する傾向にある。

一方、赤外線は車内温度の上昇を招き、ダッシュボードやシート、ステアリングといった内装部品へのダメージをもたらす。高温状態が続くことで、プラスチックやゴム素材が劣化し、ひび割れや変形を起こすことがあるのだ。これらの現象は、見た目の美観を損なうだけでなく、素材本来の耐久性を低下させ、クルマの寿命にも影響を与える。
さらに、紫外線はヘッドライトのレンズにも作用し、黄ばみや曇りの原因となる。これにより夜間の視認性が低下し、安全性にも悪影響を及ぼすことがあるのだ。
また、外装に限らず、内装や灯火類など広範囲に影響を及ぼすのがクルマの日焼けの特徴である。これらの劣化は一度進行すると完全な復元が難しく、資産価値の低下にも直結する。
日焼けによる影響を抑えるには、直射日光を避けた駐車やボディコーティング、UVカットフィルムの施工といった予防策が必要だ。紫外線と高温は、静かにクルマのコンディションを蝕む“見えない敵”と言える。
直射日光を避けて駐車するのがもっとも効果的
では、クルマを日焼けさせないためにはどのような対策が必要なのだろうか。大手カー用品店オートバックスの担当者は、まず「直射日光を避けることがもっとも基本的かつ有効な方法です」と語る。
具体的には、屋内駐車場を利用するほか、日陰を選んで駐車する、あるいはクルマ全体を覆うボディーカバーを使用するといった手段が挙げられる。さらに、ボディの日焼け防止には、UVカット成分が配合されたコーティング剤の施工も効果的だ。
また、前述の担当者は「ダッシュボードや内装の日焼けを防ぐには、UVカット機能付きのウインドウフィルムやサンシェードを設置することも対策です」と話す。このように、外装・内装ともにそれぞれの対策を講じることで、紫外線による日焼けリスクを大幅に軽減することが可能である。
夏の日差しは、クルマにとって静かな脅威となる。長く美しく快適に乗るためには、“紫外線から守る”という視点を日常のケアに取り入れる必要があるだろう。

なお、日焼けしたクルマは、部分塗装(補修)もしくは全塗装することで復活可能だ。前述の担当者も、「日焼けによって塗装が剥がれてしまった場合、対応としては部分塗装(補修)もしくは全塗装となります」とも語っていた。
一部の色あせやクリア層の劣化であれば、スポットでの補修が可能な場合もあるが、広範囲に劣化が及んでいる場合には全体塗り直しという大掛かりな作業が必要だ。とくに、メタリック系やパール系のカラーでは色合わせが難しく、補修範囲が広がる傾向にある。また、塗装剥がれを放置したまま走行を続けると、劣化が進行し、下地まで露出することでサビや腐食の原因となるおそれもある。
そして、前述の担当者は「塗装の剥がれは広がりやすいため、早期に対応することをおすすめします」と警鐘を鳴らす。つまり、日焼けしてからの修復には時間も費用もかかるため、被害が出る前の予防が何より重要ということだ。本格的な夏に突入する前に、日焼け対策を徹底し、愛車の美観と価値を守っておきたいところである。



