誤進入やカーナビの案内を誤認識することなどで、逆走が発生する

高速道路の逆走発生状況についての資料(資料:国土交通省)
逆走件数は、年間200件ほど発生しているとされる(資料:国土交通省)
高速道路の逆走発生状況についての資料(資料:国土交通省)
逆走はさまざまな要因で発生しているが、その大半は過失である(資料:国土交通省)

「逆走」による交通事故は、依然として深刻な問題であり、たびたびニュースでも大きく取り上げられている。高速道路や一方通行路などでの逆走は、正面衝突という極めて危険な状況を招きやすく、重大事故に直結するケースが多い。

実際、2025年4月には、東北自動車道で逆走が発生し、死者3人、重軽傷者は11人にも及ぶ痛ましい事故が発生した。そして、国土交通省が公開する資料によれば、2011〜2023年の間に発生した逆走事案は、2654件。加えて、そのうち約2割が事故に発展しているという。

高速道路やIC、JCTの出口からの誤進入も、逆走の要因としては多いようだ。

さらに、2011~2022年までのデータでは、逆走開始箇所はIC・JCTが約5割と大半を占めている上に、2023年では約7割と増加傾向にある。これらのデータからも、逆走問題が根深いことがわかるだろう。

では、いったいなぜ逆走が発生するのだろうか。同資料によれば、カーナビの案内の見間違いやSA・PAの入り口から誤進入したことなど、「道を間違えたこと」が発端となる逆走が、全体の5〜6割を占めている。さらに、上述した東北自動車道の交通事故も、ICの分岐路で進入経路を誤ったことが要因と言われている。

通行止めによる引き返しやETC搭載忘れなども、同資料では逆走の原因として該当しているものの、その割合は非常に限られている。つまり、過失による誤進入が逆走の発端になっているというわけだ。

重視される逆走対策 その内容とは

交通事故のイメージ画像
実際、逆走する車両に出くわすと誰でもパニックになることは言うまでもない。
逆走を注意喚起する看板
NEXCO各社や国土交通省によって、逆走対策が進められている。

国土交通省やNEXCO各社は、逆走について多角的な対策を講じている。

たとえば、国土交通省は、2015年に「高速道路での逆走対策に関する有識者委員会」を設置した。これは、交通工学や自動車工学、交通心理学などの専門家の意見を取り入れながら、効果的な逆走対策の検討を進めるためのものだという。

さらに、NEXCO東日本は、高速道路の路面等に矢印を表示して車両の進行方向を示すなどの取り組みをおこなっている。加えて、料金所通過後に誤って対向車線に進入することを防ぐために、料金所プラザ部の締切対策や注意喚起看板の設置も実施している。

また、逆走車を感知したときにだけ発光し、「逆走戻れ」のように警告を表示して、逆走していることに気付かせる表示板の設置も進めているようだ。

そして、NEXCO東日本はこれらの対策に加え、「逆走対策技術カタログ〜物理的・視覚的対策〜」を公表し、逆走を防止するためのさまざまな技術を紹介している。これには、大型矢印路面標示、ラバーポール、高輝度矢印板、矢印路面標示で進行方向を案内する技術や、注意喚起看板、進入禁止看板、矢印路面標示で注意喚起する技術などが含まれている。

国土交通省とNEXCO各社は、これらの対策を通じて、高速道路での逆走を防止し、交通事故のリスクを低減することを目指しているというわけだ。

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逆走は、正面衝突など重大事故に直結するリスクが高く、わずかな認識ミスが命取りとなる。高速道路や一方通行路では、進入方向を明示する標識や道路標示が必ず設置されている。これらを見落としたり、勘違いしたまま進行すると、逆走に至るリスクが高まるため、標識の意味を正確に理解することはもちろん、走行中の確認作業を怠らない姿勢が求められるだろう。

進行方向に違和感を覚えた際には、すぐに安全な場所で停止し、状況を確認する冷静な判断が必要である。日常的に交通ルールを再確認し、逆走を未然に防ぐ意識を高めたい。