デザインが似ている標識も少なくない

道路標識は、日本全国の道路上に無数に設置されている。そして、警戒標識、規制標識、指示標識、案内標識といった分類があり、それぞれが異なる目的と意味を持っている。

しかし、種類が多いがゆえに、デザインや配色が似ている標識も少なくない。特に、黄色地の警戒標識は、視覚的に一見区別がつきにくいものもある。

「ロータリーあり」の警戒標識
「ロータリーあり」の警戒標識は、黄色のひし形に回転するような矢印が描かれている。
「ロータリーあり」と「環状交差点通行方法」はデザインが似ているが、意味合いは異なる。

たとえば、「ロータリーあり」は、黄色のひし形に回転するような矢印が描かれた警戒標識であり、「この先に環状交差点があること」を事前に知らせる役割を持つ。一方、「環状交差点通行方法」は、白地に青い円と矢印が描かれた規制標識で、ロータリー内の通行ルールを示すものだ。

両者は図柄が似ているが、片方は警戒、もう一方は通行規制という全く異なる意味を持っている。

「つづら折りあり」の警戒標識
蛇のようにうねる矢印が特徴的な「つづら折りあり」の標識。
「右方背向屈曲あり」の警戒標識
「右方背向屈曲あり」の警戒標識は、「つづら折りあり」より矢印がうねっていない。

同様に、「つづら折りあり」と「右方背向屈曲あり」も混同されやすい例と言えるだろう。どちらも黄色地に黒で描かれた警戒標識であり、道路の急カーブや屈曲に関する注意喚起を目的として設置される。

「つづら折りあり」は、黄色いひし形の標識内に、ジグザグ状の線が複数回折れ曲がるように描かれている。一方、「右方背向屈曲あり」は、黄色のひし形標識の中に、右に曲がったあと、今度は左に大きく曲がるような S字型の黒い太線 が描かれている。「右→左」と曲がる道の流れを、矢印ではなく曲線で示しているのが特徴と言えるだろう。

このように、標識は色や形、図柄が似ていても、役割や効力がまったく異なるケースが多い。視覚的な印象だけで判断してしまうと、通行上の誤認や交通違反につながるおそれがあるため、標識の意味を正しく理解することが安全運転の基本である。

似ている標識を見誤っても自己責任となる

交通事故のイメージ画像
標識を誤認識したとしても、ドライバーの過失となるリスクが高い。

前述のように、道路標識には視覚的に似ているデザインのものが多く存在する。しかし、それらを見間違えたり、誤った判断をしたとしても、その責任は原則としてドライバー自身にある。

道路交通法においては、「標識や標示に従って運転する義務」が明確に定められており、標識を見落とした、あるいは勘違いしたという理由で免責されることは基本的にない。

たとえば、上述した「環状交差点の通行方法」と、「ロータリーあり」の違いを正しく理解せずに通行方法を誤れば、重大な交通違反や事故につながる可能性が高いことは、言うまでもない。さらに、徐行義務のある「徐行」標識と、「すべりやすい」のような警戒標識を混同し、減速を怠れば、違反行為として取り締まりの対象となるリスクもあるだろう。

標識の内容をきちんと理解していなければ、さまざまな違反を引き起こす要因となる。標識が設置されているのは、そこに何らかのリスクがあるからだ。つまり、それに気づかず通過することは、自ら危険を招くことにほかならない。

そもそも、運転とは単に操作技術だけでなく、視覚情報を的確に読み取り、瞬時に判断を下す知識と認識力が求められる行為だ。標識が似ているという理由で判断を誤ったとしても、それは言い訳にはならないのだ。

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標識はそのデザインだけで判断せず、設置される場所や状況とあわせて意味を理解することが重要である。たとえば、「落石のおそれあり」は山間部や崖沿いの道、「動物飛び出しのおそれあり」は郊外や林道付近に設置されることが多い。似たような図柄でも、設置場所と照らし合わせることで、意図がより明確になる場合がある。

標識の意味を覚えるだけでなく、場所や文脈ごとに理解を深めることが、安全運転につながる確実な方法だろう。