1967年型アルファロメオ”段付き”ジュリアに装着できる新品タイヤはあるのか!? 選んだタイヤと気になるお値段は……

【旧車アルファロメオ・オーナーの現実 vol.1】
アシに使っているジャガーSタイプの記事が好評とのことなので、趣味車として筆者が8年ほど所有している1967年型アルファロメオ1300GTジュニアについて書いてみたい。ラインオフから56年が経過した旧車ということでコンディションは年式相応。内外装、メカともに痛みはあるが、とりあえず動かす分には支障がないレベルにはある。本来ならばフルレストして一気に新車に近い状態に戻したいところだが、万年金欠病の筆者にそんな余裕があるはずもなく、対処療法で悪くなったところを修理している状況だ。今回は迫り来る車検に備え、購入時から履かせっぱなしで息絶えたタイヤ交換についてリポートする。

筆者が趣味の対象としている1967年型アルファロメオ1300GTジュニア。「段付き」の異名を持つ初期型だ。欧州車専門店『アウトレーブ』で2015年に車両価格250万円で購入。販売委託車両ということで当時としても破格値だった。コンディションは年式相応。

トランクやリアフェンダーには錆が発生している。エンジンは前オーナーの手で1750GTV用に載せ替えられているが、ファイナルギアのギア比が合っておらず100km/h程度で吹けきってしまう。おまけに圧縮もだいぶ抜けてきている。トランスミッションもシンクロがだいぶヘタってきた。現在の状態を含めたインプレはまた次の機会に。

車検を目前に控え、”段付き”ジュリアのタイヤが限界を迎える

クルマにとってタイヤは走る・曲がる・止まるという基本性能を左右する重要なパーツだということはみなさんもご存知のとおり。タイヤは常に車体を支えており、おまけにゴムを主原料として作られていることから熱や紫外線の影響は避けられない。たとえまったく乗らなくても年月の経過とともに劣化はどうしても避けようがないわけだ。
当たり前のことだが、タイヤは消耗品である。溝のあるなしに関わらず、時間の経過とともに内部の油が揮発し、柔軟性が失われて本来の性能を発揮できなくなる。車両の保管環境にもよるがタイヤの寿命は一般的に4~5年とされている。

ある日、自宅駐車場へ向かうと右フロントタイヤが凹んでいた。調べてみるとバルブに亀裂が走りエア漏れしている。

前置きが長くなったが、筆者が趣味の対象としている1967年型アルファロメオ1300GTジュニア(段付きジュリア)のタイヤが、車検まで残すところ1ヶ月を切ったタイミングでとうとう使用限界を迎えた。ある日、自宅駐車場に行ったら右フロントタイヤがペシャンコになっていたのだ。

とりあえず、エアコンプレッサーで空気を入れてみたが、バルブから「シューシュー」と音を出してエアが抜け出ていた。センターキャップを外し、ジャッキアップしてスペアタイヤに入れ替えてみたが、こちらも同じ症状が出ていた。

とりあえず、凹んだタイヤをチェックすると、2012年40週に製造された165/80R15サイズの「ブリヂストン・スニーカー」は、サイドウォール、トレッドともに細かなひび割れがいくつも走っているが、タイヤ本体からのエア漏れはなかった。そうなると疑われるのはムシ(バルブコア)がイカれたか、バルブに亀裂が入ってエア漏れしたかのいずれかだろう。
エアを入れ、バルブに耳をそばだてると「シュー」という音が聞こえてくる。どうやらバルブがダメだったようだ。バルブを新品に交換すれば、とりあえず問題は解決するが、ここまでくたびれたタイヤを今さら使い続ける気は流石にない。

しかたがないので、とりあえずエアを目一杯入れてどれくらいで空気が抜けるのか時間を計測。約1時間ほどでタイヤがペシャンコになることを確認した。
スペアタイヤも使い物にならないので、作業当日はエアを目一杯入れてタイヤ交換に向かった。自宅近くの店なのでとりあえずたどり着ければ良しとする。

10年以上前のタイヤを使い続けているのはいかがなものかとは自分でも思うが、万年貧乏ライターの悲しさ、年間2000~3000km程度しか走らない趣味グルマということで、タイヤ交換をついつい先延ばしにしていたのだ。しかし、ことここに至っては新品タイヤに交換するより手はないだろう。

「ナンカンNS-1」は旧車用サイズも充実していた

半世紀前ならいざしらず、今となっては165/80R15は特殊サイズだ。選択肢は少なく、現在入手可能なのは「コンチネンタル・コンチコンタクト」(実勢価格:1本1万2500~1万5000円)か「ヨコハマGTスペシャルクラシック」(実勢価格:1本1万6000~2万円)、そして「ナンカンNS-1」(実勢価格:1本6500~8000円)くらいしかラインナップがない。
本当は旧車用のヨコハマを履かせたいところだが、懐事情の寂しい筆者にそんな余裕がない(車検前だし)。そこでネットタイヤ通販のオートウェイでNS-1を注文した。交換作業は近所の提携タイヤ店にお願いすることにした。

購入時から履かせっぱなしだったブリヂストン・スニーカー。2012年40週製造の古いタイヤなので、サイドウォールとトレッドには細かなひび割れが走っている。まだ溝は残っているが、使用限界はとっくに過ぎている。万年金欠のため交換を先送りしていたが、ついに年貢の納め時が来た。

注文したタイヤは発注から中3日で提携店に届いた。作業当日、スペアタイヤに交換して出かけようとしたら、こちらもバルブがお亡くなりになっていた。目的地まではわずか3kmほどだ。そこまでもってくれれば問題はない。
とりあえず、ペシャンコになったタイヤにエアコンプレッサーで目一杯空気を入れて店に向かうことにした。

旧車輸入車の宿命!? 想定外のアクシデントでタイヤ交換が2時間作業に!

無事店に着いたところで、さっそく作業に取り掛かってもらう。今回は前後タイヤ4本に加えてスペアタイヤも取り替えてもらうことにした。合わせて、傷んだバルブももちろんすべて交換してもらう。
だが、ここでアクシデントが発生!
チューブレスタイヤにも関わらず、スペアタイヤとフロントタイヤの1本にチューブが入っていたのだ! 原因を探ってもらうと当時物の純正スチールホイールの内部が錆と腐食で密閉性を確保できなくなっており、前オーナーが苦肉の策としてチューブタイヤとしてホイールに組み付けたようなのだ。

無事タイヤ店に到着し、さっそく交換作業に入ってもらう。だが、当時物のスチールホイールや特殊なエアバルブが問題となって作業は大幅に遅延。結局、作業が完了したのは2時間後のことだった。

想定外のできごとに当然チューブの用意などしていない。とりあえずホイールの漏れ防止シール材を塗布してもらい密閉性を確保できるか様子を見ることにした。
それから待つこと暫し。今度はバルブの在庫がないとの報告が入る。話を聞くと農機具などに使用される特殊なバルブだそうで、こちらは近隣のグループ店舗から分けてもらうことでなんとか作業がえ継続できた。

購入したナンカンNS-1。リーズナブルな価格で旧車に対応したサイズをラインナップしているのが嬉しい。昨今の台湾製や韓国製のタイヤは性能・品質ともに飛躍的に良くなり、内容的には国産タイヤとさして変わりがない。旧車ファンの中にはブランド信仰の強い人もいるが、筆者は実用上問題なければ、どこのタイヤでも構わないと考えている。

すったもんだの末に交換作業が終了したのは開始から2時間後のことだった。前後4本のタイヤはエア漏れもなく無事交換できたものの、スペアタイヤはコーティング作業もむなしくリムからエアが漏れてしまうため、後日チューブを購入し、チューブタイヤとして組んでもらうことにした。クルマではあまり話を聞かないが、バイクではチューブレスタイヤのチューブ仕様はまま聞く話。本来の使い方ではないが、スペアタイヤだし問題はないだろう。

タイヤと工賃……気になるお値段は!?

この店では作業工賃は15インチまでが1980円/1本なので、本来は5本で9900円で済むはずなのだが、数度に渡る組み直し作業に加えホイールのエア漏れ止めコーティング、特殊バルブの追加費用で合わせて2万円となった。
タイヤ代が5本で3万2500円だったのでトータル5万2500円の出費だ。

おニューのタイヤはやはり気持ちが良い。スペアタイヤは漏れ防止シール材の甲斐なく、リムからのエア漏れが止まらない状態だが、その他のタイヤは1週間が経過してもまったく問題がない。スペアタイヤに関しては後日チューブを購入して組み直してもらう予定。タイヤサイズが空冷ビートル(フォルクスワーゲン・タイプI)と同じなので、実はチューブの入手もカンタンなのだ。

まだ、近所をひとまわりしただけなのでタイヤのインプレッションは書けないが、10年落ちのボロタイヤに比べるとハンドリングは軽快になり、乗り心地も格段に良くなった。クルマは古い方が魅力的だと思っているし、運転しても楽しいが、やはりタイヤは新しいほうが安全で、気持ちよく走れる。もう少し早く交換すれば良かったと反省している。

1967年型アルファロメオ1300GTジュニア
■Specifications
全長×全幅×全高(mm):4076×1587×1320
ホイールベース(mm):2350
車両重量:930kg(1040kg)
エンジン:1290cc(1779cc)直列4気筒DOHC8バルブ
最後出力:89hp(118hp)/6000rpm
最大トルク:12.3kgm/4100rpm(19.1kgm/3000rpm)
燃料供給装置:ウェバー40DCOE
トランスミッション:5速MT
駆動方式:FR
ステアリング形式:ウォーム&ローラーまたはリサーキュレーティングボール形式
サスペンション形式(前/後):ウィッシュボーン+コイル・スタビライザー/トレーリングリンク+コイル
ブレーキ形式(前後):ディスク
タイヤサイズ(前後):185/80R15
※( )内は筆者の車両データ

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…