内燃機関だからできる「カーボンネガティブ」

山本寿英マツダ技術研究所 所長の後ろにあるのが、MAZDA MOBILE CARBON CAPTURE。その背景に見えるのがMAZDA VISION X-COUPEである。2ローターロータリーターボ+PHEVにCO₂回収技術MAZDA MOBILE CARBON CAPTUREが載る。

マツダが目指すのは、カーボンニュートラルの先、「カーボンネガティブ」である。どういうことか? カーボンネガティブとは、エンジンから排出されるCO₂排出量に対して吸収量が上回っている状態をいう。つまり、走れば走るほど地球上からCO₂が減っていってる状態だ。

マツダは微細藻類からカーボンニュートラル燃料を作る研究を続けている。

その実現の鍵となるのが、カーボンニュートラル燃料とCO₂回収技術なのだ。

マツダは微細藻類由来のカーボンニュートラル燃料の研究に取り組んでいる。微細藻類は成長の過程で大気からCO₂を吸収するため、走行中にCO₂を排出しても、実質大気中のCO₂を増やさないカーボンニュートラルな燃料となる。

これに組み合わせるのがCO₂回収技術「MAZDA MOBILE CARBON CAPTURE」である。

山本寿英マツダ技術研究所 所長 取材はJMS2025プレスデー(10/30)に行なった。

――なぜマツダはCO₂回収技術の開発に取り組んでいるのですか?
山本寿英所長(以下山本):
ご承知の通り、マツダはマルチソリューション戦略をとっています。BEVもいいんですが、やはり再生可能エネルギーによる発電が充分ではないところ、日本もそうですが、そういった地域で、BEVが本当にCO₂を下げられるかっていうと、ちょっと難しい。一方で私たちマツダは、内燃機関にこだわってきました。やはり内燃機関でもカーボンニュートラルにできないかというのが研究開発の発端です。内燃機関は空気を吸って、燃やして吐き出す。だったらこう大気をそのまま吸って綺麗にできないか……それがこの開発に繋がっています。研究をスタートして3-4年になります。

MAZDA MOBILE CARBON CAPTUREを車両搭載時の後ろから見たところ。中央が排気管だ。CO₂が回収されたあとの排気は、ほぼ窒素、ということになる。

MAZDA MOBILE CARBON CAPTUREは、エンジンからの排気中のCO₂を吸着させて分離し、タンクに溜めるコンセプトだ。このタンクは着脱できて、タンクがCO₂でいっぱいになったら、空のタンクと入れ替える構想だ。

――エンジンから排出されるCO₂をどの程度回収できるのでしょうか?
山本:
理想を言えば100%回収したい。ですが、クルマに載せられるシステムになるかどうか。また脱着式のタンクがお客様が取り扱える重さになるかどうか。そういう意味ではまず20%を回収しましょう、と思っています。その後、CO₂吸着材料の改良、システムのコンパクト化などで30%、40%と増やしていければと考えています。カーボンニュートラル燃料でCO₂排出量を90%減らして、MAZDA MOBILE CARBON CAPTUREで20%回収できれば「カーボンネガティブ」が実現できます。BEVは、発電方法によってはカーボンニュートラルにできますが、カーボンネガティブにはできません。そこに内燃機関の可能性があると考えています。

――CO₂を吸着させる物質はゼオライトですか?
山本:
現在はゼオライトを使っていますが、他にも有望な材料はあります。技術研究所では材料開発もしています。今年ノーベル化学賞を受賞なさった北川進博士のナノメートルの微小な穴が無数に空いた多孔性構造の研究なども将来期待できるのではないでしょうか。

回収したCO₂の「循環」が重要

マツダが考える「循環」
回収したCO₂は、再生材料となってさまざまな製品に生まれ変わる。

――MAZDA MOBILE CARBON CAPTUREでタンクに回収されたCO₂はどうするのですか?
山本:CO₂は、たとえば樹脂の材料になったり、農作物の肥料に使えたりします。まずは、「循環」が重要だと思っています。炭素(C)は、いろいろなところで使われていますので、それを新たに地下から掘り出すのではなく。今あるもので回していく。お客様もCO₂を集めてそれを対価に変えられる。回収されたCO₂が再生材料になる。これはマツダだけではできない仕組みので、社会システムを作る必要があると思っています。ですから賛同いただけるところと手を組んでやりたいと思っています。

将来的にはもっとコンパクトに、もっと軽量にしていく必要があると山本所長は言う。
これがCO₂タンク。その後ろに見えるのが、気体と水分を分離する気水分離器

JMSのマツダブースに展示されているMAZDA MOBILE CARBON CAPTUREは、見やすくするために実物の1.3倍にしてある。もちろん、VISION X-COUPEは、MAZDA MOBILE CARBON CAPTUREが載る前提でデザインされている。ここで展示されているシステムは、「10年後」を想定しているという。山本所長は「展示用に綺麗に光り輝くようにしてありますが、カタチは機能的にそのまま、ああいうカタチになんです」と話す。

――MAZDA MOBILE CARBON CAPTUREがレトロフィットできるようになったらいいですね。そしたら、いま乗っているクルマでも「走れば走るほどCO₂を減らせる」ようになりますから。
山本:そうですね。そうなんです! いまのエンジンは、カーボンニュートラル燃料をドロップインできるようにしています。CO₂回収ももっとコンパクトにしてたとえば、いまクルマについているサイレンサーくらいのサイズ感になればいいと思っています。

走れば走るほどCO₂を減らせる……マツダの考えるCO₂回収技術は、実は内燃機関の未来にも大きく関わっていく壮大な話なのである。スーパー耐久最終戦の富士ラウンドでは、CO₂回収技術を組み込んだMAZDA3が実戦で走る。こちらにも期待したい。

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