利便性より安全優先へ、海外で進む厳格な規制とは

日本では、特定小型原付制度の導入によって電動キックボードの普及が急速に進んでいる。移動手段として定着しつつある一方で、交通ルールを守らない危険な走行が後を絶たず、社会的なルール作りについて議論が絶えないのも現状だ。
また、海外に目を向けると、かつてはシェアリングサービスの導入を歓迎していた都市でさえ、レンタル禁止や各国のヘルメット完全義務化など規制が厳格化されており、今は利便性よりも安全を優先する流れが主流となっている。
内閣府が公開する資料によれば、海外では電動モビリティの普及が進む反面、アメリカのサンフランシスコなどでは速度制限や自転車レーンの通行、年齢に応じたヘルメット着用の義務化といった規制強化がすでにおこなわれていることが報告されている。
さらに近年では、フランスのパリ市が2023年9月からシェアリングの電動キックボードのサービスを全面的に禁止するなど、より強力な措置に踏み切る都市も現れている。

これは、歩道への乗り上げや無軌道な駐車、そして交通事故が社会問題化し、住民からの不満が高まったことが大きな要因だと言われている。
さらに、ヨーロッパのいくつかの国々でも、速度超過を防ぐための厳格な車体要件の義務付けや、年齢に関わらずヘルメットの完全義務化へと舵を切る国が増えてきている。
最初は利便性や環境負荷の低さを理由に規制を緩和していた国々も、相次ぐ事故やトラブルを重く受け止め、手軽さよりも市民の安全を最優先する政策へと移行しているようだ。
国際的な規制の流れに逆行する日本の緩和策

このような諸外国における規制強化の状況を踏まえると、現在の日本のルール作りに対して疑問を抱く声が上がるのも自然なことだ。
日本においては、特定小型原付は16歳以上であれば運転免許が不要であり、最高速度が20km/hに制限されているとはいえヘルメットの着用は努力義務にとどまっている。
さらに、最高速度を6km/h以下に制限するモードを備えた”特例特定小型原付”であれば、一部の歩道走行までもが例外的に認められている。

それでもなお、日本は免許不要や一部の歩道走行を認めるなどの緩和策を維持しており、こうした国際的な規制の流れに逆行する姿勢は、事故増大の懸念を拭えない人も少なくないようだ。
実際、SNS上では、歩行者と混在する環境下での走行は接触事故のリスクを高めるため、自転車以上にバランスを崩しやすい電動キックボードにおいて、このような規制緩和が妥当なのかといった議論は尽きない。
もちろん、日本においても交通ルールを破れば厳正な取締りの対象となる。たとえば、歩道通行の条件を満たしていない車両で歩道を走行した場合は「通行区分違反」となり、青切符が切られ6000円の反則金が科せられる。
また、赤信号を無視して交差点に進入した場合は信号無視(赤色等)として同じく6000円の反則金の対象となる。さらに、飲酒後に乗車して酒気帯び運転で摘発された場合は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金という重い刑事罰が適用される。

しかし、罰則が設けられていても、ルールを十分に理解していないユーザーによる危険運転が後を絶たないのが実情だ。
電動キックボードは便利な移動手段ではあるが、定着させる前に他国の事例を直視して今のルールが本当に適切なのかを冷静に再考すべき時ともいえる。
これ以上悲惨な事故が増加する前に、海外の事例や規制強化の背景に学び、日本の交通事情に即した安全な法整備を進めていくことが求められているだろう。
